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雑学マニアの雑記帳(その23)Youは何しにニッポンへ

コロナ禍が広まる前まで、訪日外国人は急激に増加を続け、その旺盛な消費意欲を称して「爆買い」などという言葉が流行ったこともあった。さて、ここで疑問となるのが、訪日外国人がお金をいくら使ったのかをどのように調べているのかだ。街で「それらしい」人に声をかけてアンケート調査でもしているのだろうか。
早速、観光庁のホームページを見てみると、その方法が詳しく記載されていた。想像は当たらずとも遠からずであった。アンケート調査には違いないが、その対象は全国の主な空港・海港で、出国予定の外国人からサンプリングし、聞き取りを行っているのだそうだ。
2017年現在、四半期毎に約1万人を対象として調査を行っているので、年間約4万人が調査の対象となる。2017年の訪日外国人数は述べ2800万人余りであるので、およそ700人にひとりが調査対象となる計算だ。統計的には、ある程度十分な精度が確保できるサンプル数らしい。大変な労力を使っての調査だが、訪日外国人による消費は経済的な効果も無視できないほど大きなものになってきているので、実施する価値はあるのだろう。
観光庁のホームページには、その調査票のサンプルや調査結果についても公開されている。調査票は、日本語に加えて13の言語(英語、韓国語、中国語(繁体字/簡体字)、タイ語、インドネシア語、ベトナム語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語、スペイン語)に対応したものが用意されている。これだけ用意されていれば、主だった国からの旅行者をカバーすることが出来そうだ。この調査票を元に、対象言語を話せる調査員が、旅行の費用や目的、日数、買い物や飲食の内訳など約3ページに渡る質問項目への解答を求めるという仕組みだ。
旅行者にはやや負担が大きいかもしれないが、出発まで時間に余裕があれば応じてもらえるケースもあるのだろう。お礼の粗品くらいは渡しているのか気になる所だが、そのあたりの事情は記載されていなかった。
ホームページには、四半期毎の調査結果が公開されている。調査で得られたデータは多岐に渡るが、その中でひとつ興味深い調査項目がある。旅行者が最も満足した食事は何かという質問(答えは一つのみ選択)への解答だ。韓国、台湾、香港、中国、米国それぞれについて、寿司、ラーメン、肉料理、魚料理(寿司以外)が最も満足したと答えた人数の割合が集計されている。(選択肢はこの他にも多数あり、全てのデータが公開されているが、ここでは、これらの項目に絞って2017年の各四半期データの平均を集計してみた。)

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寿司の人気は絶対的かと想像していたが、台湾や中国ではそれほどでもないようだ。逆にラーメンはいずれも高い人気を示しているのが面白い。肉料理も人気が高いが、米国の支持がやや低いのはヘルシー志向の影響なのだろうか。といった具合に、ひとつの表からあれこれ想像することができる。これはなかなか楽しいものである。
もうひとつ、別の表がある。ビジネス目的等を除いた「観光目的の訪日外国人」に限って、一泊あたりの買い物代金の平均を集計したものだ。爆買いは下火になったとは言うものの、2017年もやはり中国からの観光客による消費意欲は突出しているようだ。逆に米国からの観光客は買い物に費やす金額がかなり抑制的であることは意外であった。
それでは、国別に買い物の中身がどう違うのかについても見てみよう(3番目の表参照)。近隣の地域からの観光客に比べて米国からの観光客は買い物の好みが大きく異なっていることがわかる。電気製品や化粧品・医薬品などはわざわざ日本まで来て買うものではないのかもしれない。それよりも日本らしいおみやげに目が行くようである。
調査では、このほかにも交通手段やどのような施設を訪れたかなど、多様な項目について聞き取りを行っており、詳細なデータもExcelファイルとして公開されているため、様々な角度から分析することも可能である。日本での行動パターンの違いを見るだけでも「お国柄」を垣間見ることができる。暇を見てじっくりビッグデータと格闘してみることにしたい。


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