見出し画像

雑学マニアの雑記帳(その18)七福神みくじコンプリート

以前、初詣に訪れた神社で「七福神みくじ」なるものを引いてみたことがある。すると、おみくじの中から小さな大黒天のお守りが出てきた。有難く身につけておくことにする。
さて、そこでふとした疑問を思いついた。仮に、七福神すべてのお守りを揃えたいと思い立ったとしよう。そして、七福神全てが揃うまで、このおみくじを何回でも引き続けるものとする。その際、七種コンプリートの目標達成までに引くおみくじの数の期待値はいくつになるだろう、という問題だ。前提として、七福神それぞれの出現確率は等しく七分の一であるとする。実際のおみくじには、もしかするとレアな神様が設定されているのかもしれないが、それは知る由もないし、問題設定が複雑になるので、等確率を前提として考えることにする。
もちろん、運が良ければ7回で全て揃う訳だが、そううまくいくことは滅多にあるまい。逆に、100回引いても7種揃わない確率もゼロではないが、それも極めて低い確率であろう。それでは、実際には何回くらい引けば良いのか、その期待値が知りたくなる。念のため説明を加えておくと、期待値を求めるということは、次のような推定を行う問題と考えて良い。仮に「七福神が揃うまでおみくじを引き続ける」というゲームを100人、1000人といった大人数で行うとしよう。そして、各人が七種コンプリートまでに要したおみくじの数を記録していく。全員完了したところで、それらの平均をとったとすると、果たしてそれが何回になるのか、推定をしてみようということだ。
神社からの帰り道、頭の中でこの問題を解こうとしたものの、中々の難問で簡単には解決の糸口が掴めない。そこで試しに、問題を単純化して「二福神みくじ」問題に置き換えて考えてみることにした。AB二種類の神様のお守りがあるとすると、1回目にはABどちらかの神様が出て来る訳であるから、2回目以降は残りひとつの神様を引けば、めでたく二種コンプリートとなる。仮に1回目にAを引いたとすると、2回目にBを引いてAB揃う確率は2分の1、2回目にもAを引き3回目にBを引いてAB揃う確率は4分の1、以下同様に、2回目以降にAAB、AAAB、AAAAB、…などと引いて、ABの二種類をコンプリートするケースの発生確率はそれぞれ8分の1、16分の1、32分の1、…となる。
従って、この二福神問題は比較的単純な無限級数で計算できることが判った。筆記具を持っていなかったので、頭の中で級数計算をする羽目になったが、一つの級数を無限個の級数に分割する必要があってだいぶ混乱したが、なんとか答を得ることができた。期待値は、「3回」であった。
それでは次に「三福神」の場合はどうなるかをを考えてみようとしたが、これは俄然難しくなる。とても頭の中だけでは容易に解決できないと悟り、帰宅後にじっくりとチャレンジすることとした。苦闘の末、ようやく解に辿り着くことができたが、結果はなかなか「きれいな計算式」であった。つまり、「n福神」みくじをコンプリートするために必要なおみくじの数の期待値は、次の式で表すことができるのだ。

画像1

下の表は、この式に基づいて「n福神」のおみくじで全ての神様をコンプリートするために要するおみくじ数の期待値を示している。例えば、七福神みくじの例では、平均18.2回引くことを覚悟しなければならないことになる。感覚的には7の2倍の14回くらい引けば大抵の場合に揃うのではないかと勝手に想像していたが、実際にはもう少し多く引く必要があるようだ。

画像2

この表を見ると、コレクションアイテムを完全収集するまでに必要な購入個数は、案外に多いことがわかる。確かに、コンプリートを狙っていると、同じものが繰り返し出てくる一方、肝心なものがなかなか出てこないということは誰しも経験しているのではないだろうか。
身の回りのちょっとした事例だが、こうやって数学的な分析によって理論的に裏付けができるというのは面白いものだ。特に、今回のようにすっきりとした解が得られた場合には、その喜びも一入である。数学マニアとしては、面白い問題を見つけることができた。神様に感謝である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?