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知るべきは、仕事ではなく、生き方。札幌大学のインターンから考える、難しくも意義深い、これからのキャリア支援。

インターンシップというと、短期的に企業で働いて、仕事や社会人とは何たるかを体験学習する取り組みとして認識されているように思います。ですが、今回、見つけた札幌大学のインターンシップは、これとはちょっと違うようでした。こういうスタンスのインターンシップって、今後すごく大事になっていきそうですし、大事になっていって欲しいなあと思うのです。

この札幌大学と美幌町の連携ではじまったインターンシップは、その名も「暮らしを感じるインターンシップ」といいます。仕事、ではなく、暮らし、なんですね。学生たちは、連携先である美幌町の企業で就業体験をするだけでなく、観光資源の視察やアクテビティの体験、地元企業の社員との意見交換などを実施。リリースには、学生が美幌町の「大人」に人生相談をするようなシーンもあったと書かれていました。

コロナによって地方移住が注目されるようになったことではじめたという、このインターンシップで伝えたいのは、働き方ではなく、生き方や暮らし方です。こういう視点って、すごく今っぽいし、今後さらに大事になっていくように感じます。

ひと昔前であれば、就職すれば定年まで働くのがスタンダードで、良い就職と良い人生はイコールではないものの、かなりの部分が重なり合っていました。でも今は価値観が多様化し、良い人生の定義が人により大きく異なっています。こういったなかで大事になってくるのは、大企業に就職することより、(自分にとって)良い生き方をすることではないでしょうか。

でもこれって大学の立場からすると、すごくサポートが難しいんですよね。支援する準備ができていたとしても、何を“良い生き方”とするかは学生が見つけなくてはいけないし、それがわからないことには支援のしようがありません。また、価値観が多様化するなか、これが良い生き方だと大学側が強く提示するのはリスクが高いし、何か違うような気がします。

こういった状況を考えると、今回の札幌大学のような暮らし方=生き方を体験するインターンシップというのは、大学のキャリア支援のスタートとしてすごくいいように思いました。この取り組みは、学生が生き方を考えるきっかけになるのはもちろん、そもそも働き方のベースには生き方があるんだよと教えるうえでも役立ちます。さらに、大学PRの視点で考えるなら、我々(大学)は学生のキャリアをこの深さで捉えている、と社会や保護者に訴えることにもなります。

さらに考えていて思ったのですが、生き方が大事になってくるのはキャリア支援だけじゃないですよね。学生たちが学ぶモチベーションの源泉は、その分野が好きだからというのと、将来のためというのとのおそらく2択。めざしたい将来(=どう生きたいか)がわからなければ、けっこうな数の学生は、勉強に意味を見出せなくなります。逆にどう生きたいかについて高い解像度で理解できていくと、今の世の流れからすると、将来のため≠将来の仕事のため、となる可能性が十分にあるし、それを自覚することで、学び方や求める学びにすごく幅がでてくるように思います。学生のキャリア観の変化が、大学教育や大学のあり方に影響を与える。これって長期的に見るとどの大学にも起こり得ると思いますし、キャリア観が大きく変わってきているので、その変化もまた大きいのではないでしょうか。

今後ますます、(自分にとっての)良い生き方を見つけることが、学生にとって大事なことになり、見つけてもらうことが、大学にとって重要なことになっていきそう。でも、こうすれば必ず見つかるという方程式みたいなものはないので、生き方を考えるきっかけを丁寧にたくさん用意し、生き方を考える大切さを繰り返し説くしかありません。今回の札幌大学のインターンシップは、こういった生き方を考えたり感じたりするきっかけとして、とてもわかりやすく、また効果的ではないかと感じました。

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