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大学と地域をつなぐ、斬新かつ魅力的なアプローチ。高崎経済大学の「高崎ふるさと大使」のポテンシャルを考える。

大学の社会に向けた情報発信や連携活動を定期的にチェックしているのですが、今回、これまで見たことのない面白い活動を見つけました。大学による社会連携の当事者といえば、学生や研究者だと当たり前のように考えていたのですが、どうもそれだけではないようです。けっこう新鮮な驚きを覚えたので、今回はこれについて取り上げたいと思います。

ニュースの内容は、高崎経済大学の同窓会の支部長たちが、大学や高崎市をPRする「高崎ふるさと大使」に委託された、というもの。支部は全国に30あり、卒業生はおよそ3万9千人いるとのこと。これら数字を見ていると、なかなかの規模感です。

このニュースを見て、まず衝撃だったのは、冒頭にも書いたとおりですが、学生や研究者といった学内の人間ではなくても、大学と地域の架け橋になりえるという事実です。そして、記事を読んだ印象でいうと、効果も少なからずあるように感じました。取り立てて何かしらの企画性のある取り組みをしなかったとしても、同窓会の集まりで高崎市の名物をメニューに出したり、集まりごとに高崎市の話題を少し出すだけでも、一定の広報効果はあるように思うのです。極論をいってしまえば、外に向けて発信しなくても、3万9千人いる卒業生にちゃんと高崎市の魅力が伝わるだけで、十分な効果があるのではないかと。おまけに、卒業生は年々増加していくわけですし、卒業生と市が協力関係にあることを在学生が知ると、在学生もこれまでより市に親近感を抱くような気がします。

このように考えていくと、すごくいいじゃない!と思えてきます。実際そんな気がするのですが、別の視点から見ると少し怖いところもあります。というのも、卒業生は(狭義には)学外の人間であり、そんな学外の人間と地域とのつながりに、大々的に大学名が使われる状況になります。学生や教職員による社会連携であれば、大学側が実態を把握しやすいし、何かしらがあったとしても比較的早く対応できるでしょう。でも、卒業生が主体の動きだと、そうもいきません。たとえば、市議会議員と卒業生がつながり、市の魅力発信と選挙活動が混在してしまうとか、市の魅力を伝えるなかで近隣の市町村を貶めるような発言・動きが出てくるとか、などなどです。30も支部があると把握に時間がかかるし、そもそも大学が同窓会を管理しているわけではないので、把握したところで是正できるかどうかも微妙です。

まあでも書いてはみたものの、そんなことはそうそうないでしょう、みなさん良識のある大人ですし。ただリスクがあるかもしれないという考えを持つことで、同窓会と大学の関係がより密になるのであれば、それはそれでいいことだと思います。

地域と卒業生がつながり、そこに意識的に大学も関わっていく。これによって、新たに地域・卒業生・大学という三者間での関係性が築いていければ、社会連携の新たな動きになるのではないでしょうか。こちらのほうが、それぞれで関係性を築くよりもつながりが強固になりそうです。加えて大学は、地域とも、卒業生とも、つながりを深めたい気持ちがあるわけで、三者間でつながれるなら、手間も減らせるように感じます。

なんかいろいろと書いていたら、三者での関係性構築がベストアンサーな気がしてきました。卒業生からこういう動きが生まれるのは稀だと思うので、大学が地域に話を持ちかけて、意識的に取り組んでみてもいいのかなという気がします。とくに、大学が乱立していない地方の大学は、やってみる価値ありだと思います。

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