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動画がつくりやすくなった今こそおすすめ!”学び”をテーマにした、動画コンテンツ群をつくる意義

大学が高校生に届ける情報というと、自大学の教学内容や入試情報といった、いわゆる受験情報がまず頭に浮かびます。でも、大学によっては、まったく異なる観点で、高校生向けのコンテンツをつくっているところもあるんですよね。今回はそんな大学発のちょっとユニークな動画コンテンツを取り上げようと思います。

潔く、シンプルに、数学の問題を解説するYouTubeチャンネル

まず紹介したいのは、金沢工業大学の取り組みです。数学の問題を解説するYouTubeチャンネル「KIT STEAMナビゲーションといって、微分積分や三角関数などの問題を2~4分程度の動画にまとめて配信しています。動画の概要欄に掲載されたリンクをクリックすると解説ページに飛ぶことができ、解説ページからさらに関連ページに飛ぶこともできます。

各動画の概要欄から飛べる解説ページ

私は数学どころか算数すらあやしいので、動画を見てわかりやすいとか、わかりにくいといった判断はできないのですが、淡々とストイックに解説しているのが印象的でした。

特徴的だったのは、大学のPRをまったくしていないことです。でもそれが正解だと思います。この動画を見ようとする人の多くは、数学の問題の解き方がわからなくて困っている人たちです。そんな人たちに向けて、問題解説のあとに、「こういった問題をより発展的に扱いたいなら、金沢工業大学の●●学科がおすすめ!」みたいなことを伝えても、いやいや、ここでつまずいているのに…となるでしょう。

そもそも数学がわからなくて困っているときに助けてくれたのが金沢工業大だった、というので十分なPRになるわけで、そこから先は何を伝えても蛇足になるように思います。動画コンテンツをつくるなら、何かしらの大学の魅力を盛り込みたくなりますが、この取り組みに関しては、これぐらい潔いのがちょうどいいんだろうなと感じました。

テーマを絞り、高校生に学問の魅力を動画で伝える

続いて取り上げるのは、東京経済大学のオンライン講義「東経大ライブです。先ほどの、金沢工業大と方向性は違うものの、こちらも学びに関する動画コンテンツになります。

オンライン講義自体はそんなにめずらしいものではないのですが、高校生を対象にしていて、なおかつ講義数が充実していることが大きな特徴です。本企画は昨年度から引き続いて実施されており、昨年度は前後期あわせて合計21講義、今回のプレスリリースは今年度の前期講義分になるのでしょうか、10講義の開催が案内されていました。

「東経大ライブ」特設サイトのトップページ

本企画の胸アツなポイントは、東京経済大は社会科学を専門にした大学のため、ある程度しぼられた学問領域のなかで、年度をまたいで多くの高校生向け講義動画がアーカイブ化されていることにあります。今後この企画が発展してアーカイブ動画が増え、さらに各講義が社会科学のどの学問分野に該当するのかの記載や検索機能がつくと、高校生が社会科学を知るうえで貴重な動画資料になるように感じました。

”学び”をテーマにすることの意義と価値

金沢工業大は高校の学び、東京経済大は大学の学び、内容は大きく違うものの、それぞれ“学び”をフォーカスした動画コンテンツだといえます。大学が自大学の学生生活や教育プログラムなどを伝える場合、その内容がどれだけ作り込まれていても、やっぱりPR動画にしかなりません。しかし、学びをテーマにした場合、志望校選び以外の動機で見てくれる人も出てくるし、動画に公共性が付与されるので与える印象も変わっていきます。

1本、2本つくるだけでは広く高校生の役に立つものには、なかなかならないのですが、テーマを明確にして腰を据えて取り組んでいけば、けっこうどんなテーマでも(学びに関するものなら)意義深い取り組みになるように思います。動画コンテンツがつくりやすくなり、また視聴もしやすくなっており、今後もこの傾向は続くことが予想されます。いろんな大学が、何かしらの学びをテーマにした動画コンテンツを長期的につくり続けるようになると、社会の大学に向ける目も変わるだろうし、高校生の大学選びの基準も変わっていくはずです。ぜひ、金沢工業大や東京経済大のようなスタンスの取り組みが、増えっていってほしいものです。


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