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プラスどころかマイナスになる?立命館の支援制度が伝える、インナーコミュニケーションに足りていない大事な視点

社会の先行きが読めなくなり、また変化が早く激しくなってきたことで、自分たちのやるべきこと、やりたいことを見つめ直すことの大切さ、みたいなものが以前に増して重要視されるようになってきた印象があります。大学もインナーブランディングやインナーコミュニケーションの促進に本腰を入れて取り組むところが増えています。私もこういったプロジェクトにいくつか関わらせてもらっているのですが、今回、見つけた立命館大学の取り組みは、インナーを活性化させるうえですごく意味があるように感じました。

取り組みの名前は「グラスルーツ実践支援制度」。教職員が自発的にはじめた草の根運動を、大学として支援するというものです。すでに150件のプロジェクトが採択されているというから驚きです。なおこの制度に採択されたら、個人の場合は30万円以内、グループの場合は関わる教職員の人数✕30万円以内の支援金が提供されるとのこと。ものすごく大きい額というわけではないですが、決して少ない額ではありません。それに何より、大学が自分たちの考えたアイデアを、物理的に、具体的に、応援してくれるというのがいいですよね。

インナーコミュニケーションを促すことで、これまでつながっていなかった部署と部署、人と人がつながり、新たなアイデアが生まれることがあります。これは大きな成果なのですが、これだけでは何も変わりません。ここからアイデアを育てて、具体的な取り組みにして、大学に根付かせなければいけません。でも、これが本当に難しいんです。新しいアイデアというのは、承認する方法がそもそも存在していなかったり、大学が業務として認めてくれないということもあります。大学が火付け役をしたのに、大学自らが消化してしまうわけです。結果、インナーコミュニケーションの成果は世に出ないし、やる気のあった人は、やる気があればあるほど”裏切られた”という感情を持ってしまいます。

こういう状況にならないために、アイデアが生まれたとき、大学がすぐさま応えられたらいいのでしょうが、現実問題そんなことはなかなかできません。であれば、今回の立命館のように、何かアイデアが生まれたとき、それを育てられる制度を事前に用意しておくというのが現実的だし、とても大事なように思います。むしろ、インナーコミュニケーションの活性化をプロジェクトとして取り組むなら、これはニコイチなのではないでしょうか。たとえるなら、インナーコミュニケーションの活性化はりんごの木を揺らす取り組みで、果実(アイデア)をキャッチするためのネット(制度)がないと、せっかく落ちてきた果実はすべて地ベタに落ちてしまいます。これだと、わざわざ費用と時間をかけてアイデアを捨てているだけです。

また、りんごの木から果実が落ちてくるのは揺すったときだけではありません。学内のいろんな人が、ふとした瞬間に面白いアイデアを思いついたり、重大な課題に気づいたりします。でもこれら果実は、人知れずに実り、そして地べたに落ちているのではないかと推察します。そういった果実をキャッチするためにも制度の整備は大切です。さらにいうと、こういう制度があること自体、大学が教職員に期待しているのだという強烈なメッセージになります。言葉より、よっぽど伝わるのではないでしょうか。

今後も少子化が続いていくわけで、大学にとって現状維持は後退でしかありません。自発的にものごとを考え、行動できる教職員が増えていかなければ、大学に明日はありません。こういうテーマが挙がると、すぐ人材育成に議論が集中しがちですが、活躍できる環境が先んじてなければプラスがゼロになるどころか、マイナスになるおそれがあります。立命館のグラスルーツ実践支援制度は、この環境づくりをどうすればいいのかを考える上でとても参考になる事例だと感じました。


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