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日本でリカレント教育を流行らすにはこれしかない!?三重大学が取り組む、オーダーメード型リカレント教育を考える。

大学によるリカレント教育が今後どのように発展していくかに個人的にすごく興味があります。今回、見つけた三重大学の取り組みは、そんなこれからのリカレント教育を考えるヒントになりそうです。こういうアプローチの方が、日本のリカレント教育は活性化するのかもしれない、そんなことを感じさせてくれる取り組みです。

取り上げたのは、三重大学が「リカレント教育センター」を新設したというニュースです。このセンターでは、社会人に向けて、問題解決能力を育むプロジェクトマネジメント型教育とDXを融合したプログラムを提供するほか、地元企業の要望に応えたオーダーメード型の教育の提供を行うよう。興味深いのは後者で、企業とともにリカレント教育を発展させていくという姿勢を明確に打ち出しています。

以前、noteで社会人が求める学びと、企業が求める学びには通じるところがあるけれど、異なるところもあるのでは?という記事を書きました。その記事で、リカレント教育を今後発展させていくうえで、学びたい個人に寄り添うのとは別に、企業に寄り添った学びというのも大事になるように思う、といったことを書きました。

今回の三重大学の取り組みは、企業一つひとつのニーズを汲み取ったオーダーメード型の学びをつくるというものなので、究極的に企業に寄り添ったリカレント教育のように思います。この視点が受講者にどこまで受けるのかはわかりませんが、受講者の興味関心とは関係なく企業が社員を送り出してくれそうなので、そういう意味では、取り組みとして安定するようには思いました。また、地域に必要な人材を育て、地域を活性化させるというのは、地域の“知の拠点”である地方国立大学の使命なわけで、そういう意味でもこの活動は的を得ているのではないでしょうか。

ただ、ひとつ気になるのは、企業ニーズに応えたオーダーメードのリカレント教育って、これっておそらく「教育」ではなく「研修」だと思うんですよね。企業が求めるのは、誤解をおそれず極論をいってしまえば、使える知識を身につけ、それを実践で役立てるための能力です。知識を深めることではありません。この能力を身につけるためには、学ぶことも必要ですが、重視されるべきはトレーニングです。なのに、大学は知識を深めるための講義を延々としてしまうのではないか、という気がしないでもないのです。

大学は教育については実績もノウハウもあり、専門機関という自負もあるでしょう。そのせいもあって、企業が求めているものも、普段、学生たちに提供している教育の延長線上にあるものだと、反射的かつ無意識に思ってしまいそうな気がします。結果、企業と大学が「リカレント教育」という同じ言葉を使いながらも、そもそも求めているものが違うという、最初のボタンを掛け違いが起きやしないかと思ったりするのです。まぁ、悲観的に考えすぎかもですが……。

ネガティブな論調になってしまいましたが、三重大の取り組みについてはとても魅力的だと感じています。人材の流動化がなかなか進まない日本では、企業と従業員の関係性でいうと、企業がだいぶと優位です。そういったなか、雇用先の理解がない状態で、キャリアアップのためにリカレント教育を利用するのは、かなりの覚悟がいります。であれば、雇用先が理解する、さらにいうと推奨する状況をつくるのがよくて、そのアプローチとして、三重大の取り組みは大いなる可能性を秘めています。ある意味では、とても日本らしいリカレント教育の推進方法なのではないでしょうか。どのように発展していくのが楽しみです。


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