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文系研究の有用性を伝える新手法?敬愛大学のコラムから、研究者による地域貢献をどう伝えるか、を考える。

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。今年、最初に取り上げるのは、敬愛大学の新聞コラムです。地域貢献は大学の大事なミッションの一つだとずっと言われ続けていますが、こういうアプローチもあっていいのではないか、そんなことを思わせてくれる取り組みです。

この新聞コラムの具体的な内容はというと、千葉県安房地方に根ざした「房日新聞」に「南房総活性化のヒント」をテーマにした、敬愛大学の教授陣によるリレーコラムを掲載するというもの。第1回、第2回については、敬愛大学のウェブサイトに紙面が掲載されているので、こちらもご案内しておきます。

コラムの内容は、まさにコラムという感じで、研究者たちが南房総半島の活性化(というよりも思い出)をつづっているものです。この取り組みを見て思ったのですが、研究者の知見を地域貢献に役立てる、というのを一般の人が知る機会って、実はあんまりないんじゃないでしょうか。

学生が関わる地域貢献であれば学生が前に出て、教員はそのエスコート役にまわります。研究者が有識者として地域の委員会等に参加し、政策決定等に関わることもあります。しかし、この場合はいち構成員なので、研究者の知見がどう活かされたかまでは具体的に見えてきません。また、新聞やワイドショーに大学の研究者が登場することがありますが、これもあくまで専門家が専門家としての意見を述べているだけであり、研究者の知見を活かした地域貢献とは言えないように思うのです。

今回の新聞コラムは、第1回、第2回を見ただけだと面白い読み物という感じではありますが、今後、「南房総活性化のヒント」というテーマが色濃く出てくると、研究者の知見が地域貢献にどう活かされるかを、広く、具体的に、伝えていけるかもしれません。今回の取り組みは、具体的な地域を題材に、その地域に根づいた新聞で、つまりそのエリアの当事者たちに向けて語る、しかもそれをプッシュ型のメディアでやる、ということがポイントだと思っています。

地域貢献を単に論じるのであれば、それは学問であって、地域貢献ではありません。必要な人に具体的なアクションにつながるヒントを伝えてこそ、さらにいうとそれによって現実を動かしてこそ、貢献になりえます。これまでは、こういった活動があったとしても、往々にしてクローズな場で行われていました。今回は、これを新聞というある種の公の場でやろうとしています。

理系の研究に比べて文系の研究は、どうしてもどう役立つかが見えにくいところがあります。“文系不要論”みたいなものが、ずっと言われ続けているのも、まさにこれが原因でしょう。今回の、地域貢献の見せ方、伝え方は、もしかしたら文系研究の有用性を伝える方法として、一つのヒントになるかもしれません。コラムは今後も続くようなので、今後どうなっていくかぜひ注目したいです。


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