見出し画像

大学のスタンスが見えてくる?実践女子学園のサイトからひもとく、周年記念サイトに込められたメッセージ

50周年、100周年、125周年など、大学が大きな節目を迎えるときに、よく周年記念サイトが立ち上げられます。この周年記念サイト、のぞくとその大学が何を大切にしているかが伝わってくるので、大学を知るうえで実はすごく有効なツールだと思うんですね。今回、実践女子学園の創立125周年記念サイトを見て、あらためてそんなことを感じました。

「125th Anniversary for Future」を伝える周年記念サイト

実践女子学園は、2024年5月に創立125周年を迎えるようで、これにあわせて昨年10月に公開されました。特徴的なのは、トップページの冒頭に「125th Anniversary for Future」と大きく表示されることからもわかるように、かなり未来志向なんです。具体的には、世界や各ステークホルダーとのつながりの拡充をめざした4つの特別事業(イベント)の実施と、125周年を機にはじめる5つの教育改革が、本サイトで伝えるべき情報の中心を締めています。

「125th Anniversary for Future」の文字が象徴的な「実践女子学園 創立125周年記念サイト

とくに5つの教育改革については、各担当者のインタビュー記事もサイト内に盛り込まれており、何をやるのかが具体に落とされている印象を受けました。周年を機に、大学や学園をリスタートさせる!というメッセージはよく目にするのですが、大きな方向性だけ示されていて、中身はこれからというのが多いように思います(施設の新設は比較的動きが早い印象はありますが…)。

今回の実践女子学園の取り組みは、創立150周年を機に考え始めるのではなく、これを機に実践がはじまり、なおかつ記念サイトで丁寧にそれを伝えています。「125th Anniversary for Future」というキャッチコピーは、ごく一般的ではあるものの、サイトを一通り見てあらためて目にすると、中身がともなっていることがわかり、実践女子学園の姿勢を端的にあらわしていると感じました。

未来、現在、過去、どれを優先するかで見えてくること

大学の周年記念サイトを大雑把にカテゴライズするなら、「未来」に焦点を当てているもの、「現在」を盛り上げようとするもの、「過去」を振り返るもののいずれかに分けられるように思います。もちろんこの3要素は多かれ少なかれ、どのサイトにも含まれているので、どれを大事にしているのか、みたいな視点での区分になります。ちなみに今回、取り上げた実践女子学園のものであれば、まさに「未来」に軸足を置いたサイトとなります。

「現在」に軸足を置いているものだと、大東文化大学の創立100周年記念サイトなんかがわかりやすい。このサイトだと、100周年を迎える「現在」を、さまざまな行事や企画で盛り上げようとしているのが、強く伝わってきます。

在学生を巻き込んだ多彩な企画が印象的な「大東文化大学創立100周年記念サイト

「過去」を丁寧に取り上げているものだと、北海道大学の創基150周年記念特設サイトはその好例かもしれません。トップでエモーショナルに歴史を振り返っているほか、年史の編纂についても別途エリアをつくって情報発信をしています。

歴史を感じさせるムービーがまず迎えてくれる「北海道大学創基150周年記念特設サイト

周年記念サイトは大学を知る、大事な手がかり

「未来」「現在」「過去」の何に重きを置くかというのは、大学が周年をどう捉えるか、だけでなく、この周年は誰のためのものか?みたいな問いとも直結していきます。

「未来」視点であれば、これから進学してくる高校生であったり、多くの場合、社会と大学とのこれからの関係性についても言及するので、広い意味での社会も対象になります。「現在」であれば、教職員や在学生といった、いま、大学と関わっている人たちや、現在進行系で大学を支えてくれている地域やステークホルダーが主な対象です。「過去」であれば、これまでの大学の歩みに誇りをもち、その歴史の一部を担ってきた人たち、つまり愛校心ある卒業生がメインターゲットになるのではないでしょうか。

このように文章化してしまうと、どのターゲットも大事だし、「未来」「現在」「過去」すべてを伝えたいと思ってしまいがちです。もちろん、それをしようとしている周年記念サイトもたくさんあります。でも、ちゃんと整理して優先順位をつけないと、ひどくぼやけたサイトになってしまうんですね。なんとなく想像してもらうとわかると思うのですが、あれこれも伝えたいし、あの人にもこの人にも伝えたいと思ってしまうと、結局、伝える側が何を伝えたいのかがわからなくなってしまうからです。また、関係者一人ひとりはわかっているつもりでも、関係者のなかでうまく共有できておらず、メッセージがブレブレになるというのもアルアルです。こうなると、せっかく周年という大事な節目を伝えるのに、メッセージ性は失われ、とりあえず周年ぽいことをやり、周年ぽいコンテンツをサイトに並べる、ということになってしまいます。

周年は、大学の存在意義を再確認し、定めた目標に向けて大学をブーストさせる大事な機会です。これを芯に据えたとき、誰に何を伝え、どう思ってもらう(もしくはしてもらう)ことが、この目的に叶うのかを整理したうえで、設計していく必要があります。そう考えると一朝一夕でできることではないことが、よくわかります。

各大学の周年記念サイトが、そのような長い準備の果てにつくられているという前提で見てみると、見え方が変わるし、発見も増えるのではないでしょうか。もちろん、これら背景が感じ取れるものと、そうでもないものがあります。そうでもないものについても、周年記念サイトはかくあるべしという仮の前提があると、そこからズレているのなら、それはなぜか?みたいな視点で思考を巡らせることができます。周年記念サイトは、大学の大きな節目を象徴したサイトです。このサイトを解釈することは、その大学のスタンスや思考が知る手がかりなるように思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?