夜が明ける。
ベランダから夜空を眺める。
とても綺麗で冷たい濃紺色だった。
煙草を取り出し、口に咥える。ライターで火を点け、冷気と共に吸い込んだ。
吐き出した白い煙が夜の街へと消えていく。
もう慣れた。
1人で吸う煙草も、1人で過ごすこの街の夜も。
でも、何故か、眠ることが出来なくなった。
まるで何かの罰のように、長い長い夜を睡眠という逃げ技を使って逃れられなくなった。
君のことは好きじゃなかった。それだけは確かだった。ただ、映画の中にいるようなエモい夜を過ごす為に、君を家に呼んで欲望を満たした。
全部終わってしまった今、俺は夜に囚われた。
あぁ、こんな自分もエモいな、なんて馬鹿みたいなことを思った。
そして、分かった。
俺が欲しかったのは、エモさじゃない。
エモいという感情が自分の中だけで消えてしまう前に、それを共有する相手だったんだ。
「……そっか」
もう少しで、夜が明ける。
夜の街へ、作品のネタを集めに行く為の費用に出来ればと思います。