あなたならこの記事にどういうタイトルをつけますか

 「タイトル」は作品の顔だ、と思う。本にも音楽にも絵画にも、果てはこんなネット記事にもタイトルがつく――例外はあるけれど――。タイトルというのはその作品を象徴するもので、タイトルの印象がそのまま作品の印象になることも多い。

 僕は創作活動が好きで、曲とか歌詞とか絵とか文章とかをいろいろと生み出してきた。そしてその分だけタイトルをつけてきたわけだけれど、「タイトルって重要だな」と感じる場面があったので、今回はそのことを歌詞に焦点を当てて、文章にまとめてみようと思う。

 僕は歌詞を書くことを趣味の1つにしている。両手じゃ収まらない数の歌詞を書いてきて、その分だけタイトルをつけてきた。まあ曲が付いていないものが多いし、「タイトル(仮)」みたいなものがほとんどだけれど。タイトルというものは作品を区別しやすくするってだけのものではなくて。

 例えば、有名な詩に「おれはかまきり」という詩がある。教科書に載っているし、とても印象的な作品だから、知っている人も多いと思う。すごく簡単に解釈をすれば、ある夏の日のカマキリが「俺、めっちゃイケてるぜ」って張り切っているっていう詩なんだけれど、もしこの詩をタイトルなしに読み始めたら、なんの詩かわからないと思う。なぜかというと、この詩の中に「かまきり」という言葉は一切出てこないからだ。作者名は「かまきりりゅうじ」となっているけれど、そこはいったん無視してね。

 タイトルが「おれはかまきり」となっているから、そこで初めてこの詩の語り手が「かまきり」だってわかるわけだ。もしタイトルがなければ、「夏の日に草刈りをする男」とかに解釈してしまうかもしれない。解釈の幅が広いことはいいことだとは思うけれども、それではこの作品のよさが薄れてしまう――かまきりだからこそ、この作品は輝く、、と思う――。そんな感じで、タイトルは作品にとって重要なもので、もはや作品の一部だと思う

 ここで歌詞に話を戻すけれど、まずこの記事を書こうと思ったきっかけのことについて少し書いておこうと思う。高校生のとき、僕は軽音楽部に所属していた。そこで友達とオリジナル曲を共作する機会があって。友達は曲を作って、僕はそれに対して歌詞をつけたんだけれど、最後にタイトルをつける段階になって僕はとても頭を悩ませた。いくつも候補を考えてみたんだけれど、いまいち曲や歌詞の雰囲気にバチっと合うものがなくて。その時からタイトルの重要性には(うすうすながら)気づいていたから、ちゃんとそれに合うものをつけてあげたかったのだ。でも結局つけたのは歌詞にはあまり関係のないタイトルだった。なんかの締め切りが近づいていて、時間が無くなり妥協するという形でタイトルをつけてその時は終わってしまったんだけど、僕はいまだにそのタイトルに納得していない

 で、そのタイトルを考えているときに友達にもアイデアをもらおうとしたんだけど、あまりに僕が決められないから最終的に「何でもいいじゃん」と言われて。別にその友達を悪く言いたいわけではなく。悪いのはむしろ優柔不断な僕の方なんだけれど、その時の僕はタイトルを大事にしたかったから「何でもいい」なんて言われて少しモヤモヤしたのだ。このことがあって、僕は「タイトルを大切にしたい」と思っていることを自覚したんだと思う。

 タイトルを考えることは、「子どもにつける名前を考える」のと同じぐらい重要だと思う。子どもを持つ年齢ではないから、それらが本当に同じかはまだわからないけど。自分の作った作品は、自分の子どもだといっても差し支えないと思う。だからタイトルをつけることは、名前をつけるぐらいに重要なことだ。ちゃんと考えて、悩んでつけたい。たまに直感でつけることもあるかもしれないけれど。その作品にあうタイトルをつければ、作品に対する愛も深まると思う。

 作品も生かすも殺すもタイトルにかかっている。それぐらいに僕は思っている。最初につけるときも、最後につけるときも、気を抜かずにつけてあげよう、という覚え書きでした。

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