【逆噴射プラクティス】幻狂紳士ー摸狂者たちの祭典編―
おおい、君ちゃん。君だよ君。そこでぼへーっと画面見つめてる君。儂に会えるなんて幸運だねえ? え? 何? 儂が誰かだって? かーっ遅れてんね。いいさ、じゃあ初めから説明……するの面倒くさいから、幻狂紳士で調べて、出てきたの見なよ。あ、六期は飛ばしていいよ。つまんないから。
見てきた? じゃ、わかったね? 儂は正義の英雄ってわけ。理性とか正気とかそういうメンドーなの抜きでズバ! ってね。
で、今もこうして愛刀キレル君四号を握って、正義執行中さ。
ほら、あそこ。女の子を追いかけてる野郎がいるだろう? あのデカブツをズンバらりだよ。え、そりゃわかるよ。悪者が誰かなんて。
だって儂、幻狂紳士だもん。
じゃ、行くよ。
決め台詞は知ってるね?
「狂ってるのは?」
「狂ってるのは、儂か? お主か?」
声が聞こえた。
突如、画像が乱れる。浮遊感。思考鏡のカメラは首無しの粗末な背広を着た胴体を写し、生体信号を見失って暗転した。
思考鏡を外してシエルは首を傾げた。
「なんだ? これ」
「孫転地区で首切り死体が出たじゃないっすか、その頭がつけてたらしいっす」
袋入りのポテトを貪りながら、エイトが答えた。
「模狂者どものトラブルなんて別に珍しくないだろ」
ひっきりなしの独白は摸狂者の特徴だ。思考鏡の持主も摸狂者同士で喧嘩して首と命を落としたのだろう
「そうなんすけどね。最後のとこっす」
指についた油を舐めながら、エイトが端末を操作する。どつきたい衝動を堪え、シエルは再び機械眼鏡を覗き込んだ。
「速度10%っす」
引伸ばされた時間の中にシエルは奇妙なものを見た。
緩慢な世界の中、一つの影が画面に降り立った。
影は通常と変わらぬ速度で動いていた。
影は量産品と思しき包丁を振上げ、撮影者の首に振下ろした。
「うわ!」
首を刈られる感触にシエルは思わず思考鏡を放り出す。
「これって……」
「ですよね」
エイトが頷く。
二人の口から同時に言葉が漏れた。
「幻狂紳士?」
【つづく】
◆◆◆
居ても立ってもいられなくてパート2
SUBURIだよ。800字ピッタリ。
なんかどこかで聞いたことがある気がする台詞が登場しているような気がしなくもないけど、桃太郎を使ったって言いってガイドラインに書いてあったし大丈夫なんじゃないかなあ
わりと好きな導入だけど、これだとシエルとエイトがどういう人間で事件にどういう風なスタンスで関与していくかがわからないのが弱い気がする。
前半に尺取りすぎですね。
いよいよ、明後日開幕ですね。
今日くらいは皆さん、早く寝ますよね?
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