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プラトン『饗宴』について

 本書は、プラトンの30以上ある著作を初期、中期、後期の3つに分けるとすると、中期に当たる作品群の1つらしい。個人的には、この初期、中期、後期に分けるということが、ビートルズのアルバムを選んで聴くのに近い感覚で、プラトンもビートルズと同じで色々と考えや表現を変化させていったんだろうなと思うとちょっと面白い。

 構成としては、他の対話篇と同じくソクラテス以外の人物も登場してくるのだが、前に読んだ『ゴルギアス』なんかとは進み方が少し違う。『ゴルギアス』は、ソクラテスと登場人物とが意見をキャッチボールのように対話しながら進んでいくのだが、それに対し本書は登場人物が愛について順番に演説のように話していくという構成だったので、ソクラテス以外の人が演説してるページの方がむしろ多い。しかも、ソクラテスは最後の方に出てくる。これはこれで面白い構成だったと思う。

 内容については、愛がテーマと言いつつ、ギリシャ神話の神々の話が出てきたり、少年愛とかが話題に出てきたりで、自分としては「ん?」と思うことが結構あった。最後のソクラテスの話(というかソクラテスがディオティマという女性から聞いた話という体で話されるのだが)の、知らないことを知ろうと欲するという「智慧の愛求=哲学」こそが愛だという話は、ソクラテスらしい結論というか、なんとなく納得している自分がいた。

 結局、プラトンが表現したかったことの1つとして、ソクラテスはそんじょそこらのソフィストとはわけが違う、真の哲学者なのだということがあるんやろなというのは理解できた(あと、酒にめちゃ強い上に夜通し飲み明かしても平気な体力を持つ鉄人だということも)。やから、その意味では、プラトンのソクラテスに対する愛が詰まった著作であるとも言えそうだ。

 愛についてなんて普段考えることもないが、これを機に、自分が愛を注いでいるものってなんやろかと、少しだが考えるきっかけになったと思う。

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