【三人組小ネタ】体力は必要?②

 続いては、室内競技。
「跳び箱を用意したが……」
「危険すぎるだろ」
 先生は普通に六段飛んだが、拾井は三段の上に座っただけだった。
 ……座れただけよしとしよう。
 この後バドミントンとバスケとバレーをやってみたが、空振りするわボールを顔にぶつけるわで終了。
 終いには体育館の二階部分で練習していた卓球部に声を掛けられ、俺たちも一緒に練習に参加することに。
「上手い! 君たちも先生も上手いね!」
 女の先輩に俺たちは誉められる。
 一方で拾井は、手取り足取り教えられていた。
 少しでもラケットにボールが当たると、先輩たちがすごく誉めてくれるので、頑張って練習している。
 さっきまでとは大違いだ。
「誉められて伸びるタイプだったか……」
 先生、今更……
「それにしても先生が意外とタフで驚いたぞ」
 三対一でラリーをしながら、佳一はネットの向こう側にいる先生に言った。
「あー……まぁ……俺は“普通”じゃないから」
 気まずそうに先生は言った。
 そういうとこにまでその力は影響が出るのか。
「普通じゃないにしても……先生、色々誤魔化してない? 年齢とか」
「誤魔化しているわけないだろ! 年齢は!」
 ……年齢は?
「俺なんかが年を誤魔化して、何のメリットがあるって言うんだ」
 先生……なんか焦ってない?
「どうだ! 俺だってやればできるんだよ!」
 人並みとは言わないが、ある程度ましにプレイできるようになった拾井が、得意気な顔をしていた。「そうか……それじゃあその実力、見せてもらおうか」
 先生が負かす気満々でラケットとボールを構える。 「え!? そういうのは求めてないけど!? 先生、俺のことどんだけコケにしたいの」
 お前が先生も運動できないなんて、決めつけるようなことを言ったせいだと思うよ。

 というわけで、卓球部員たちに惜しまれつつも、俺らは体育館を後にした。
「運動だってそんなに悪くないだろ。お前にだってできることはあった。食わず嫌いはやめて、もっと前向きに挑戦していくんだな」
「ふぁーい」
 納得しているようなしていないような。
 気の抜けた返事。
「拾井君! 卓球だってできていたじゃないか、もっと自信を持とう!」
「そーそ。久々にやったら面白かったし、またやろうぜ」
「……うん」
 俺たちの言葉に、拾井は小さく頷いた。
「よーし、最後に学校を外周して終わるかぁ」
「それは嫌だ!!」
 とんでもない先生の提案に、拾井だけでなく俺も一緒に叫んでいた。
 さてはこの化学教師、文化系の皮を被った体育会系だな!?
【完】

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