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Episode 550 カスタムに未来を感じます。

カーナビゲーションシステムは1990年代初めごろから普及し始め、今では多くのクルマに搭載されています。
快適に目的地を目指すために非常に便利なもので、安価なポータブルタイプなどでは10,000円を切るものもあるのですよ。
私のパートナーが普段使いする軽自動車にも「そのくらいの値段」のナビを付けました。
高価なものを買う余裕はないけど、あれば便利だしね。
もし精度が悪くてあまり使えなくても、そこくらいの値段なら諦めも付く…と思って使い始めてビックリです。
街乗りで使うには十分なナビ機能、タウンガイドに紹介されたラーメン屋さんに行ってみたい…みたいな道案内を正確にしてくれる、それは便利なものでした。

先日、私はそのカーナビの話をTwitterでツイートしたのですよ。

ハナシの発端は、ASDの空間認知は弱いのか強いのか…ということだったのですが、その話は横に置いて…。

多くの人のカーナビは、きっと「進行方向を上に向けて案内する」様に設定している思うのです。
ウチのパートナーのカーナビも進行方向を上にする設定です。
その一方で、地図は「北が上」で書かれるのが基本です。
紙の地図で進行方向なんて指定できるワケがないのですから、地図の基本である「北が上」で書かざるを得ない…当然ですよね。
そういえば、私がまだクルマの免許を取って暫くは、クルマの中にぶ厚い「ロードマップ」を常備しているのが普通でした。
ロードマップはロングドライブの必需品だったあの頃を思い出してみると、助手席のパートナーがマップをグルグル回しながら地図を見ている…そんなことがあったなぁ。
クルマが進む方向を上にするためにマップを回して地図を読もうとしていたのでしょう。
カーナビの「進行方向を上に向ける機能」は、この「マップぐるぐる回し」を自動的に、しかも正確にやってくれる機能…というワケです。
多くの人が「進行方向を上に向けて案内する」様に設定している…ということは、多くの人がパートナーと同じように「マップぐるぐる回し」をしていた…ということでしょうね。

恐らく、「進行方向を上にして地図を見て、左右で判断…と言うのが一般的なナビ」の読み方ならば、これが定型の方の「標準的な地図の読み取り能力」なのだと私は思います。
俯瞰型の地図は読めるけど、「東西南北」はあまり気にしていなくて「左右」で判断している…という感じでしょうか。
つまりカーナビは、この「標準的な地図の読み取り能力」に配慮した表示方法を提案した…ということ。

以前に私は障害者の合理的配慮とは、「その人のパフォーマンスを向上させるための『チューニング』と『カイゼン』だ」と説明しました。
でも、それは「障害者に限らず全ての人に対して」だと、このカーナビの件で気が付いたのです。

IT技術が世界を変える…なんて言われて暫くたちます。
今までこれが何を指しているのか、今ひとつ「ピン!」と来なかったのですが、ひとつ気が付いたことがあるのです。
それは「専用品」の拡充…今まで「汎用品」だったものを個人でカスタマイズできる範囲の拡大ということです。

添付したnote記事で、マイノリティの専用品は「個人が独占的に使用するもの」に限ってその効果が反映される…と私は指摘しました。
汎用品をマイノリティの使いやすいものに変更すると、マジョリティの不利が発生する、社会の大多数を占めるマジョリティ小さな不便は、人数分の掛け算が発生し、大きな不便に発展する可能性があるのです…これは上手くない。

例えば、電子書籍による教科書が可能なら。
重たい教科書を抱えて学校へ行かなくても、タブレットひとつでOK…だけではないですよね。
フォントや背景色、文字ポイントの選択とか、音声出力が可能とか。
自分の好みで仕様が変えられれば、小さな苦手の克服に役立つのかもしれません。

技術的に大きな課題と問題がある、夢のような「これから先」のハナシかもしれません…でも。
障害者に限らず、世の中を便利にする方向として、汎用データを如何にカスタマイズして分かりやすく個人に示すのか…という視点は重要かもしれないと、私は思うのです。

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