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Episode 505 置いて探ってしまうのです。

「千と千尋の神隠し」に登場する「カオナシ」は映画の中で、前回のnote記事でお話しした「飛ばし」の他に、私が思うASDの特徴的な行動のひとつである「(正解)置き」もしっかりとしているのです。
ASDを「カオナシ」に見立てた話には、続きがあるのです。

前回のお話は、上のリンクから飛んでもらうとして…。

先ずは「カオナシ」が行った「(正解)置き」とは何か…ということですが、これは番台ガエルを飲み込んだカオナシが千を呼び出し、「あなたの欲しいものはこれだろ?」と手から金を出す動作そのものです。
あなたの気持ち(考え)を飛ばした先の「私(カオナシ)が予想した答え」という、具体的なモノです。
この動作は「相手の機嫌を取ろう」とする時に現れる、ASD的な自己完結がもたらす特徴的な行動だと、私は思っています。

今回もまた、まめ(@mo_zahrada)さんのnote記事から。

私が何か提案した時の「いいと思うよ」「いいんじゃない?」は私からはジャッジに聞こえる時があるんだけど、夫はそういうつもりはさらさらないと思う。

この「いいと思うよ」という台詞には結構、奥深い理由がある。

夫にとっては人の気持ちの詳細って分からないから、私を不機嫌にさせてしまうのが何より不安。
自分自身が不安なのではなく、あくまでも私の気持ちが分からない不安という感じ。

自分の機嫌は自分でとれるし、職場の人間関係くらいは外モードのテンプレでどうにかなる。だけど、異性であり、しかもパートナーの私の機嫌をとるとなると、非常に複雑で難易度が高いようだ。
そうすると『私が提案すること=私の機嫌が良くなること』なわけで、同意しない手はない。
つまり、反対したり、そこで一致しないかも知れない自分の意見を出すのは、リスクでしかない。

その結果、発動するのが『いいと思うよ』なわけ。

これね…とても重要な視点で、相手の機嫌が…特に一緒にいるパートナーであればなお更のこと、良くあって欲しいと思うワケです。
「あなたの機嫌がよいことで私の居場所が確保される」とでも言いましょうかね…その結果、あなたの提案には反対しない、『いいと思うよ』が発動される…というメカニズムを、まめさんのこの記事は上手く説明されていると思います。

では…あなたの具体的な提案がないときに、あなたの機嫌を取るにはどうしたらよいか?
コミュニケーションが苦手で、あなたと私の意見のすり合わせが苦手な私は、あなたに「どうしようか?」と聞くことができず、ひとりであなたが好きそうな「何か」を探すワケです。
まめさんが指摘する通り、『反対したり、そこで一致しないかも知れない自分の意見を出すのは、リスクでしかない。』からね、その部分は提案を受けたときと同じです。
映画の中でカオナシが出した答え…それが「金」だったということです。

ところが…千はカオナシの手からこぼれる「金」をみて、「違う」と言うのです。
まぁ…第三者目線からすれば、千の意見も聞かずにカオナシが一人で考えて出した答えですから、「違う」といわれても仕方ないワケですが、カオナシ本人としては、一生懸命考えて千の機嫌を取るために「置きにいった答え」ですから、外れると思っていないワケですよ。

これは、前回のnote記事で指摘した「自分の辿り着いた答えが正解以外はあり得ないから…だって、私の答えは社会的な常識で担保されているのだから。」という一言で説明できます。
間違えているハズの無い「置きにいった答え」を否定され、カオナシは逆上して…あとは映画での暴走シーン。

こんなやり方で「正解」が出るとすれば、「偶然」以外は考えられないのですよ…大体にして「置きにいった答え」には私の気持ちが反映されていませんから。
「いや、あなたのことを一生懸命考えて」…というのは、ある意味で間違いではないのでしょうけど、それは私の気持ちは横に置いて「あなたは何を考えているのか」を探っているに過ぎないワケですよ。
カオナシが「金」が好きだった描写は…映画の中には出てきませんねぇ…そう言うことです。

あなたからのアクションには「いいと思うよ」と答え、私からのアクションは「あなたは何を考えているのか」を探る「(正解)置き」を使うのです。
そこに「私のきもち」は、1mmも現れていませんよね。

これが「考えているように見えて探っているだけ」だと気が付けるのか?
「私の意見は?」…これを引っ張り出すことが「ASDの自己理解」につながると私は思うのですが…これがなかなか難しいのです。

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