見出し画像

Episode 591 優しいウソなど無いのです。

「あなたは平気でウソを吐く」と、パートナーに言われたことがあります。当の私はそんなつもりはなかったのですが…。

「優しい嘘」って、あるじゃないですか。
そうですねぇ…浜田広介氏の「泣いた赤鬼」みたいなヤツ。

この物語で、こころやさしい青鬼は、赤鬼のために嘘をつくのです。
この物語をどのように見るのか…は、意見の分かれるところでしょう。
青鬼のやったことは、赤鬼のためを思い…であることは間違いないのですけれど、それを赤鬼がどのように思ったかは、読む人によって異なるように思います。

私は前回の記事で、私が本当にピンチになった時に助けを求められないのは、ASD的なコミュニケーションへの不安があるからではないか…と指摘しました。

そこでふと思ったのは、ASD的なウソって、自分を大きく見せようとしたり相手を陥れようとするものというものよりも、私やあなたの不利益にならないようにするものが多くないか…ということ。
要するに「かくしごと」の類です。

前回の記事で私は、ケガや病気などによる「物理的な痛み」に対して押し黙ることが、『「強がる」を決め込むには、無理してでも「通常運転」を継続するしかない』ということにつながるのだと書きました。
ではこれが「物理的な痛み」ではなかった場合はどうでしょう。

「何事もなかった」を装いたいときに、事実を隠すことを選択する理由はカンタンで、コミュニケーションへの不安があるからだという場合が殆どだと思います。
小さな子どもが「その場しのぎ」の言い逃れで吐く「小さなウソ」は、誰もが一回くらいはやったことがあるでしょう。
これは「マズい」を正直に話して「どうすればよいか」を確認するコミュニケーションへの不安から、「無かったことにしたい」気持ちが勝つことによるものだと思います。
コミュニケーションが苦手な私は、年齢的に大人になってからも、この部分が「子ども」のまま成長していないのではないか…。

前から言っているように、自分の気持ちをコントロールできないことが自閉の本質である…というのが私の考えです。

それは「あなたと私の意見のすり合わせが難しい」ということで幾度となくお話ししてきたことです。
だから「私の意見を隠して社会的常識を盾に身を守る」ということも。

ただこれは、あなたと私のお互いに前を向いて共に生きる建設的な意見交換が必要とされる場面だけで行われることではなく、私自身が不利な立場に追い込まれた時にも発生するワケですよ。
ただ…私が不利な立場に立った時に「私を守る盾」は、かなり心細いのです。
だって、自分自身が不利になった時には社会的常識なんて通用しないですもの…私が「やらかした」のならば、なお更です。

そこで私やあなたのピンチをしのぐために独りで勝手に「かくしごと」で逃げる手を考えてしまうワケです。
ただね、これがほんとに小さな子どもが「その場しのぎ」の言い逃れで吐く「小さなウソ」ぐらいにショボいのです。

泣いた赤鬼の物語のラストでは、青鬼が残した置手紙を読んだ赤鬼が涙を流すシーンが描かれます。
果たして赤鬼はどう思ったのか?
青鬼は、赤鬼の気持ちを考えて村で暴れて…ということをするのですが、赤鬼の気持ちを聞かずに勝手に行動を起こします。

優しいウソなんて、存在するのでしょうかねぇ。
勝手に判断してウソをつく位なら、赤鬼に相談する方が良かったのではないか?

「あなたは平気でウソを吐く」
この手のハナシを聞くたびに、赤鬼と青鬼の気持ちを思ってしまうのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?