見出し画像

Episode 540 当事者専用は不便です。

左利きの話も第4話になりました。
ここまでの話でも何度も言い、今回もまた言うのですが、世の中は良いか悪いかとは関係なく、多数派に有利なように構成されているのですよ。
これは、ここ数回の左利きを題材にした「マジョリティとマイノリティの関係性」でお話ししてきた、世の中の便利は多数派の便利であることで説明できます。
裏を返せば、世の中は少数派には不利にできているワケで、マイノリティはその不利の中で生きる知恵を絞るのだ…ということも私は指摘したのです。
私はそれを「左利きはステップを踏む」という表現を使ってお話ししました。

ある時…左利きの私は、「世の中は右利きに有利にできている」という事実を知るに至ります。
そして思うのです。
「世の中は不公平だ、なんで公平にならないのだ!」…と。
それこそ世の中が左右対称のシンメトリーであれば、左利きの不利は解消され、右利きも左利きも分け隔てなく平等で公平な世の中になるのに!

そんなシンメトリーな左右平等の世の中にするためには、左利き用のものをたくさん用意すれば良いのでしょうか?
私の答えは「No」で、それでは解決しない…です。
前回の記事で指摘した通り、左利きの専用品は「ひとりの左利きが独占的に使う占有物であるときに効果を発揮するもの」だからです。

当然のことながら、左利きの専用品は左利きに有利にできているワケで、右利きにとっては使いにくい(使えない)ものでしかありません。
シンメトリーを実現するため、全体の9割を占めるマジョリティである右利きには使いにくいものが市中の半分を占めていたとしたら、世の中はさぞかし不便でしょうね…。

何を「おかしなこと」を言っているのだ…と思うかもしれませんが、マイノリティに対する「支援」を要求するときに、うっかり「マイノリティの都合だけ」を言い放つことが散見されるように私は思うのです…それは上手くない。

改めて自動改札を例にお話しすると…。
自動改札は右側に「読み取り機」が付いていることが殆どで、左利きが通過するときは右に体を捻る動作(ステップ)を入れる必要がある…これは指摘した通りです。
これに対して「マイノリティの都合だけ」の場合、自動改札の左側に「読み取り機」を付けたタイプを人口構成比分用意する…でしょうかね。
10台の自動改札があれば、左端の1台を左側読み取りに変更する、それよりも数が少ない場合も、マイノリティに考慮して最低1台は左側読み取りで…。
では、その改札を通る/避けるために、流れを変えることを容認するのですね?
わざわざ左読み取りを通る/避けるために、最短ルートを諦めて、遠回りすることを求めるのですね?
これでマイノリティに配慮した…と言えるのかは、甚だ疑問ですよねぇ。

仮に左利きに配慮された自動改札が考案されるとしたら、ICカードをポケットから出さずに読み取れる改札機が開発された…とかでしょうか。
ポケットからICカードを取り出す行為がなくなれば、右も左も関係ないですからね。
私はこのようなものを「ユニバーサル・デザイン」というのだと思うのですよ。

何度も言うのですが、世の中はマジョリティに有利にできているのですよ。
マイノリティがその中に「不便さ」を見つけ、改善を要求したとしても、マイノリティのみにしか効果が表れないような施策を求めれば、必ずマジョリティに「ガマン」を強いることになります。
それは自動改札のように物理的で具体的な事象である場合もあれば、金銭的な場合も心理的な場合もあると思うのです。
支援を手厚く…とお願いしたとして、その財源や人材はどこから調達するの?

私はマイノリティに「ガマンしろ」と言っているのではありません。
マジョリティに有利な世界でマジョリティの不利益にならないようにマイノリティの不便さを解消するする必要があるよね…と言っているのです。

マイノリティが不公平や不便を感じるのは当然でしょう。
その権利を主張することも。
ただ、やみくもに主張することで発生する軋轢は、こういう「ガマン」を強いる煩さに起因しているように感じるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?