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Episode 542 配慮は支援ではないのです。

今回はちょっと「左利きの話」から外れてしまいますが…。
私は食品メーカーに勤めるサラリーマンです。
食品メーカーと言えば、商品を作って、それを売って…というのが商売のあらましなのは間違いないのですが、それだけでは会社は成り立たないのです。

会社内にあるイロイロな部署の話は、リンクから過去記事にジャンプして頂くとして…。

「食品メーカーに勤める私」の、今の具体的な仕事は冷凍・冷蔵倉庫での荷役作業…フォークリフトのオペレーター(リフトマン)です。
この作業を行うに当たり、私は「合理的配慮」を受けているのです…ということは、過去にも記事にしました。

具体的には、「ノイズキャンセル機能が付いたヘッドフォンの使用」というモノなのですが、それ以前にリフトマンという今の私の仕事に就くこと自体は「配慮」だったのではないか…と、思うのです。

リフトマンの仕事は基本的に一人作業なのです。
トラックへの積み込み/積み下ろし、冷凍庫への入庫/出庫は、伝票や作業指図書による紙ベースでの作業指示を基本とするからです。
なぜ口頭での指示を避けるのか…は、証拠の照会ができるようにする為で、紙への記入による申し送りは確実な入出庫は仕事の要なのです。
今後はいわゆる「DX」が進み、電子化による作業の簡略化は進むでしょうが、一人作業で紙面(またはそれに類似するもの)による作業指示…即ち「会話の必要がない」ということは、今後も変わらないだろうと思います。

もちろん、業務連絡以外の「最低限のコミュニケーション」は必要ですよ。
トラックの運ちゃん達も、町から街へと荷物を積んでは下ろしてを繰り返す一人作業者が殆どですからね、立ち寄った積み込み/積み下ろしの「ちょっとした間」で、雑談の相手が欲しかったりするのですよ。
だからといって、これが営業マンのように「商売のパイプ」作りに発展するハナシでもなく、ASD的な外モードで「そうだねー」って流しておけば良いくらいのことで、つまり、私の従事するこの仕事は、わりと低いコミュニケーション能力でも仕事がしやすい環境だということです。

この部署に配属された経緯は、あちらの部署でもこちらの部署でも「コミュニケーションの不具合」による対人ストレスで私が自滅したからで、私が出来そうな部署を会社が探してくれたのだろう…と、思っています。
私からお願いした結果としてのリフトマンではないのですが、会社は対人関係で苦労している点を考慮して「この仕事」を与えたのだろうと思います。
今の部署に異動して直に丸3年になります。
それまでの長い間、何度も苦しんでつらい思いをしたのに、今は何とか安定して仕事を続けていられるのは、会社の「配慮」に依るものだろう…と、私は思うのです。

前回の記事でも書きましたが、「配慮」とは、機材や位置取りを調整することでマイノリティの生活の不便を緩和することで、マジョリティから「支援」を引き出すためのディール(「取引」「対応」)の意味合いは、ない…と私は思っています。
一方で、どうしても出来ないことを手助けしてもらうことが「支援」だと私は思うのです。

リフトマンという私の仕事について言うならば、私と人事担当者との面接の中で、「ひとり仕事に向いている」という人事担当者の意見を基に仕事の紹介があった…これが「配慮」。
ただし、仕事の内容はあくまでも一般就労であって、私とその他のリフトマンを含む作業者の仕事の差はありません。
その上で、苦手な雑音を軽減するためのノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンの使用…これが「合理的配慮」。
リフトマンという仕事をストレスなく行う為に、機材を使った苦手の軽減をする…ということです。

合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。

何れの場合も「どんな仕事をどんな方法を使って行うのか」を合意した上で作業にあたっていることがポイントです。
良いですか、配慮の前提は「合意」です。
配慮を受ける側も、配慮する側も、配慮の合意によって以前よりも仕事がスムーズに進むようになることが求められるのです。

「配慮」は「支援」ではないですよ。

私は、配慮から支援の意味合いを明確に排除するべきだと考えています。
ここを曖昧にすると、大きな見識の食い違いを招くことになる…と思っているのです。

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