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Episode 696 使える能力は使うのです。

同時並行で進めるつもりであった「他者視点がない(弱い)ASDの私」をスタート地点にした、ASDの私の感覚についてのハナシが止まったままでした。
それほど「スイートコーンのハナシ」はASD×定型(典型) の関係性が拗れるポイントとなり得るハナシなのだろう…と、思います。
ただ、今回はご無沙汰になっていた「ASDの私の感覚」…自己の掘り下げの方のネタで行こうか…と思います。

前回から間が開いてしまったので、一旦ここに前話へワープできるオブジェクトを置いておきます。

前回のハナシは、ASDの私が他者視点を意識することを学ぶことで、多少なりともあなたの視点を意識した行動(発言)をするすることはできる…ただし、それはあくまでも「意識した人工的なモノ」で、ナチュラルに発動するモノではないから、抜け漏れが起こるし、疲れるのだろう…と、お話ししたのです。

ASDの私は、他者視点の存在を「ガン無視」する小さな子の、自分の興味に全集中する状態をキープしたまま成長した…簡単に言えば、そう言うことです。
子どもたちが定型(典型) と呼ばれるルートで成長する場合、私を見ている人の存在に気が付き、その人の視点を当人なりに考慮して目の前の作業にあたるようになる…いつまで続けて良いかとか、一緒にやる方が良いのかとか、あなたの喜ぶ方に出来上がりの方向を修正する…とかね。

ここで私は、あなたの私に対しての働きかけを「邪魔なモノ」として嫌った記憶があるのですよね。

私の「見られるのはイヤ」は、「左利きのハサミ」という苦い経験と結びつくのです。
ご存知の通り、ハサミの噛み合わせというのは、一般的には右手で扱うことを想定しているのですよね。
それを左手で扱うには、それなりにコツがいるのですよ。
少なくとも、右手で扱うよりは難しい…コレは事実です。

幼いころの私は、発達性協調運動障害に至るまでの問題はなくても、年齢相応に不器用であったと思います。
例えば左手で、左利き用の噛み合わせが右手用と逆になっているハサミを渡されていたら、右利きの子のハサミの上達と同じ程度にハサミを使うことができるようになっていたでしょう。
ただ…我が家では、左利きは許されなかったのですよ、箸も筆も右手で使うのが嗜みだと信じていた両親が、左手用のハサミを買って与える…ワケがありません。
この不快感を封じるために、私は人前で手を使うことを避けるようになります。

そもそもASDである私は、私の興味に集中力を全振りする体質であっただろう…それは前回に指摘した通りです。
その上で、あなたの視点が私の集中のマイナスにしか作用しないのなら、私の集中からあなたの視点を消し去りたい…そういう発想になっても仕方なかっただろうとか思うのですよ。

ASDの「ひとり過集中」は、他者視点に気にしない(気が付かない)…という基本特性はあるとして、遅ればせながら他者視点が存在すると気がついた後からも、「私を邪魔するモノ」として意図的に他者視点を排除する行動はあったかもしれない…と、感じるのです。

原作・原案 ヨンチャン/竹村優作によるマンガ 「リエゾン」、そのTVドラマ版の第一話に、自ら納得するまで描いた絵を見せない男の子が登場します。
お母さんが「上手に描けたら見せてね」と言った、だから上手に描けるまで見せない…という流れのシーンでした。
シーンの意図としては、お母さんの「上手に描けたら」という言葉を守るASD的な直向きを演出することだったのでしょうし、多くの方はそのように見ただろうと思います。
ただ…そこに「私を邪魔するモノ」への排除を感じたのは、私だけだったのか…とか思うのですよ。

はるまき(@41harukaze)さんの、このツイートからも同じ匂いを感じます。
ある意味で「私を邪魔するモノ」から身を守る為に、過集中という周囲を消し去る「マジック」を積極的に使った可能性は、ないか?

定型(典型) 者が社会の中心である現代社会で、他者視点を理解して自らをコントロールすることは重要なことなのだと思います。
その一方で、その他者視点がない(弱い)が故に「典型的な発達」からこぼれた私は、それでも使える能力を使い、社会に挑むワケです。
仮にASDの基本特性として、世間一般の人よりも集中しやすい特徴があるとしたら、コレをどうにか使えないか…とか考えるだろうと思うのですよ。

ASD的な特性は、全てにおいて先天的か…と問うと、そうではないように思うのですよ。
むしろ苦手のカバーの為に積極的に特性を強化する方向に進むケースもあるのではないか。
その結果として、良い成果も悪い成果も発生するのですが、それもまた「定型(典型) メインの現代社会では」ということになる。
進化の方向と、評価の基準は必ずしも一致しないワケでして、そこをどのように評価するのかは、ASD進化とは別のハナシなのかなぁ…などと私は思うのです。

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