見出し画像

Episode 454 止める術がありません。

もう少し続けてトランス・ミッションの話をしましょうか。
前回の記事でマニュアル・トランスミッション(MT)は「各シフトごとのエンジン回転数と車速が正比例の関係になる」と説明しました。
ではその対極にあるオートマチック・トランスミッション(AT)はどうなのか…と言うと、エンジン回転数と車速が必ずしも正比例の関係になる…とは限らないのです。
その差は、クラッチの仕組みの違いに拠るのです。

MT車は各シフトごとに車速とエンジン回転数が正比例の関係になります。
2速3,000回転で30km/hからシフトアップして3速に繋ぐ時、3速の30km/hは…当然ですが、確実に3,000回転を下回ります。
エンジン回転数が違うところに無理やりギアを入れることは出来ないので、一度エンジンとミッションを物理的に切り離して、シフトチェンジしてからエンジンとミッションを繋ぎ直すワケです。
これがいわゆる「クラッチワーク」というヤツ、自動車なら左足で踏む3つ目のペダル、単車なら左手のレバーがそれにあたります。
踏んでいる間・握っている間、エンジンの動力は変速機から切り離され、空回りすることになります。
この間にシフトチェンジして、クラッチペダルを離して(クラッチミートして)動力ONということです。

これに引き換えAT車は、クラッチの代わりに「トルクコンバータ」と呼ばれる装置が装備されています。
簡単に言えば、扇風機の羽がふたつ向かい合わせに置かれたようなものです。
エンジンからの動力が扇風機の羽を回し、その風力が向かい合わせの扇風機の羽を回す…と考えていただければよいと思います。
そしてその向かい合わせの扇風機の羽がミッションに繋がっているワケです(実際は空気圧ではなくて油圧を使うのですが)。
つまり…AT車はMT車と違って、ダイレクトにエンジン動力がミッションに繋がっているのではなく、間接的に動力を伝えているというワケです。
だから、エンジンの回転数が上がって、その圧を受けた向かい合わせの羽が回るのにタイムラグが発生する、従って有段式のATシフトであっても、エンジンの回転数と各シフトの車速が正比例の関係にはならないワケです。
さらに最近はプーリーを使用した無段階変速装置(CVT)も開発され、さらに輪をかけてエンジン回転数と車速の関係はわかり難いものになってきているワケです…という感じに、AT車とMT車は構造が違っていてですね、AT車はその仕組み上、エンジン回転数と車速の関係はルーズなのです。

改めて、このツイートを。
このツイート中に登場するまめさんの夫さんの「日常」での姿なのですが、「会話だけに集中する」…という表現がどうも引っ掛かります。
おそらくこれは、「聞いている」に限定されるのだろう…と。
聞いている単独では、恐らく夫さんが求めているエンジン回転数に到達しない…もて余した回転域を「紛らす」何かで埋めている。
この部分は前回記事にした「回転数を上げる」という作業になるワケです。

その一方で「並行処理が苦手で話す事だけに集中しないと受け答えできない」と、まめさんは指摘します。
そうです、ここで「話すこと」が登場するワケです。
すると、言語化という苦手領域が突如として現われるワケです。
いや、定型のまめさんからすれば「突如として現われる」と感じるワケはないのです…だって、会話とはそもそも「受け答え」なのですから。
ところがですよ、「ASD的な感覚」は…そうではないのです。
自らの意志で上げてしまった回転数の上に、苦手が乗るとどうなるのか…と言えば、想像通りシフトダウンして車速を維持しようと努力した結果、限界域までエンジン回転数を引き上げて作業をすることになるのです。
さらに過回転域(レッドゾーン)に入ると思考が追い付かなくなってパンクする…「紛らす」ために放り込んだ部分も巻き込まれて削ることができない。

定型というAT車は「車速ありき」なのでしょう。
その車速で走るためにシフトを自動選択し、エンジンの可動域の中でフンワリと出力調整をするワケです。
この場合であれば、ASDが足りないと感じて紛らす何かで埋めてしまった「会話の受け答えのための余力」は、余力として放置していられる…ということなのかな…と。
その一方でASDというMT車は「回転数ありき」なのかもしれません。

先日、Twitterのアンケート機能を使って「やることがないと不安になるのか?」という問いを投げかけてみました。
その結果は、ほぼ予想していた通りのモノでした。

「思考量が足りない」というのは、多くのASDとって不安材料になり得るということ。
だから、足りない思考量を補うための「何か」を常に探すことになるワケです。
但し、満ち足りた思考量の上に「負荷」が掛かると、AT車のように「一定の車速をキープする」ための出力調整が出来ない…なぜならば、エンジン回転数の調整はAT車にはできても、回転数を一定に合わせておきたいASDの頭脳というエンジンでは、3,000回転・80km/hが出せるポイントはたった一点(ピンポイント)しかないワケですから。

常に一定の負荷を求めるASDにとって、相手があることをするのはなかなか厄介なことです。
相手から発せられる言葉や態度に対応するには柔軟なエネルギー出力の変更調整を要求されるハズ…でも、これがASDには難しい…ということではないか…と。
ASDとコミュニケーションの問題には、こんなこともあるのではないか…そんなことを感じるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?