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パニック障害

それは静謐な湖を乱すもの
ざらざらと黒い砂が吹き付けて
前触れもなく
つつましい営みをひっくり返すもの
生活の裏に這い寄る深淵
逃げ場を失った羊に牙が剥かれ
それは、たとえば嵐のように抗いようがないもの

身を寄せる相手も
跪く偶像もなく
ただ、それの気の済むまで
じっと息を潜めることでしか
逃れるすべはない
今日生き延びても
また明日来るかもしれない
たから
それなりの備えをして
ボタンと靴紐はしっかり締めて。

あなたや他の人々には
それは見えない
それゆえ
私を襲うものなど存在しない
誰もその姿を見た者はいないのだから
曖昧な生返事が精一杯
宇宙人や妖精の話を聞くみたいに。

時折、高いビルから落ちる夢をみる
全身から汗を吹き出し
ぶるぶると震えている
そのとき私はこう思う。
「あれよりはマシ」
なぜなら恐怖に理由があるから
落ちたら死ぬというシンプルさが。

理由がないものは強大だ
素敵な人に恋をするのだって
身の丈に合わないブランド物の服を見初めるときだって
その衝動に抗うのは困難だ
それは恐怖においても同じことで
理由のない恐れは解決の術を持たない

あれは呼び鈴を押さずにやってくる
一度狙われれば終わりはない
厄介なことに
誰の元にでも訪れる可能性がある
私たちはUFOキャッチャーの景品のように
選ばれるのを待つほかないのだ

大事なお金は自分のために使ってあげてください。私はいりません。