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『addiction 1』

※BL小説。冒頭、異性間の性表現があります。苦手な方、18歳未満の方は、閲覧をご遠慮下さい。





「ああん、いいっ、もっと、もっとぉ……」
 大声で悦がる女に、興が冷めた。
 俺はまだ達っていなかったが、ふいにどうでもよくなって、ぬかるんだ場所からペニスを引き抜こうとした。すると、
「ちっと待てや」
 鷹見に押しとどめられた。
 女の身体そのものが鬱陶しく感じられてきていたので、苛立ちがこみ上げてくる。
「面倒になった。タカ、お前代われよ」
「それもいいけど、仰向けに寝てみ?」
 鷹見はそう言うなり、女ごと強く俺を押した。ぼすっと枕に頭を叩き付けられて、軽く目眩を起こしていると、上から鷹見が覆い被さってくる。
「彼女ももっと欲しいって言ってんだからさ」
「ああんっ! そこダメぇ……」
 作り物でない焦った声が女から上がる。
「アナルはバージン? んなことないっしょ」
 鷹見が女の背後からその両脚を、解剖のカエルのような形に開く。
「んああああっーーーー!」
 俺と鷹見に挟まれた女が、でかい声で啼いた。
 鷹見が、女のもう一つの穴を穿って侵入してくるのを感じた。女の中に収まった俺を、女の内臓の壁越しに擦るように進んでくる、硬くて長いもう一本のペニスの感触。
「オギちゃんも動いて」
 餌に食らいついた狼みたいな、鷹見の顔が目の前にある。灰色のカラーコンタクトを付けた瞳が、俺をじっと見つめている。
 肩に男の手が掛かった。親友が卑猥なリズムで俺と女の上をスライドし、女の内壁越しに俺を擦っていく。
 ふいに、わけがわからない程激しい欲望を覚えた。
 俺は、俺を見下ろしている親友の下で、女を下から突き上げた。滑りが良すぎて物足りないと感じていた女の中も、直腸を剛直でギチギチに埋められているためだろうか、先程とは比べものにならない程狭く具合が良くなっている。
 俺は夢中になって腰を振った。鷹見は俺の肩を捕らえたまま、強く腰を送り込んできていた。女からは、先程よりも太いけだものじみた声が迸り続けている。
 鷹見に揺さぶられている動きが、驚くほど強い刺激になって、俺は急速に高まる性感をやり過ごすために眉を顰め、垂れてきた汗を舐めた。 
「凄え色っぽいな、オギちゃん」
 鷹見が汗を滴らせながら、ニヤリと笑った。歯を食いしばっているようにも見える鷹見の笑い顔は、ムラのある金茶の長い髪に縁取られて、やはり狼に似ていた。
「死ぬっ、死んじゃうっ」
 女が泣き叫んでいたが、もう気にならなかった。一点に収束していく感覚を、ただひたすら追い求めて、ぬかるみの中を乱れ打つ。
 途中で、俺の肩をつかんだ鷹見の指に力が加わった。痛いと感じる前に、女の頭の横から親友の唇が降ってくる。
 くちゅ、と濡れた音をたてて、絡みついてくる厚みのある舌。ざらりとしているのに滑らかで、とろけるように芳醇なくちづけが、俺の中の何かを破壊していく。
 女の中に放つとき、俺は呻き声を抑えられなかった。
「凄えイイ……」
 俺の右耳に4つはまったピアスを舐めている鷹見の、呟く声を聞いた。二度、三度と女の腹の中に粘液を叩き付けながら、ぶるりと武者震いのようなものが俺の総身を震わせた。

「あれはどう?」
 雑居ビルの二階にある喫茶店の窓ガラス越しに、ごみごみした新宿の街が広がっている。このアングルから見下ろした人物は、誰もがミニチュアのように見えた。
 鷹見が差しているのは、先程から動かずに人待ち顔でいる若い男だ。ファーでトリミングされたフードの付いた、白いミリタリーコートを着ている。顔まではよく見えないが、顔などどうでも良かった。
「いいよ」
 俺がそう答えると、鷹見は一瞬だけ虚をつかれたような表情を浮かべたが、
「んじゃ、決まり」
 そう言って、ギターケースを肩に担いで立ち上がった。

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