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車窓風景:りんご

アルピコ交通上高地線渕東駅付近 長野県松本市波田 2018年11月

うまそうなりんご

初めてリンゴがなっているのを実際に見たのは1982年冬、青森の五能線の車窓から。
雪が積もったリンゴ畑の中を走る客車列車の車窓から、真っ赤なリンゴがたった一個だけ、木から落ちずなっている姿が雪景色が背景となり印象的だった。
その後、山形で田舎道を歩いている時にたわわになるリンゴを見て、本当においしそうで取って食べてみたいと思った。
もちろん取って食べなかったが(笑)
スーパーや八百屋でリンゴを見ても、そんなに食指は動かないし、きれいだとも思わないが、なっているリンゴは美しくおいしそうに見え、取って食べたくなる衝動に駆られる。
そこで手を出したらもはやリンゴ泥棒。

信州は青森と並ぶリンゴの産地。
むかし、信州伊那谷からトラックで三浦の地までリンゴを売りに来ていた人がいた。
そのトラックはテーマ音楽のように、都はるみの曲を流しながらやってきた。
リンゴの唄とかではないのがみそ。
売りに来た人の好きな歌手が都はるみだったのだろう。
この曲をきくと近所の人がリンゴを買いにトラックに集まった。

さて、写真を撮った渕東駅付近。
周囲はのどかな田舎風景が広がる何もないような、梓川の河岸段丘の地だ。
渕東駅の次は終点の新島々駅。この段丘から一段下の段丘にあるので、電車はここから緩やかな坂を下る。
渕東駅のある段丘からさらに一段上がった段丘に集落があり、その中に坂上田村麻呂を祭った国の重要文化財田村堂がある。
駅から歩いても10分ほどだろう。
田村堂はこの地の山の奥にあった、室町期創建の大きな寺であった若澤寺の堂宇の一つだったが、廃仏毀釈で廃寺となり、残った田村堂だけがこの地に移されたという。
渕東駅、何もないようだけど隠れた場所に名所がある。
田村堂には渕東駅が最寄だが、一駅松本寄りの波田駅で下車して、集落の中をゆっくり歩きながら向かうのもいい。
この地域は前述の若澤寺と西光寺(廃寺)の門前町でもあったので、道は石畳、周囲にも風情のある家並みが続いているので退屈はしない。

林の向こうに田村堂がある
渕東駅 アルピコ交通の萌えキャラ渕東なぎさの淵東はこの駅から

この地を過ぎるころ、梓川は川幅を狭め山の中に入っていく。
上高地の紅葉が終わるころ、梓川の渓谷は美しい紅葉に覆われる。
安曇三ダムができるまでは、東北奥入瀬の渓谷と並び称させる美しい紅葉の渓谷であったらしい。
秋の一日、新島々からバスに乗って上高地乗鞍高原方面へ向かうと車窓に往時の紅葉の美しさを彷彿させる紅葉を今でも見ることができる。
その頃は、写真のようなリンゴの実のなる木々を見ることができるだろう。