《牡蠣にまつわるエトセトラ》

【松島牡蠣を試食するコト】
10月を迎え、真牡蠣が解禁になると、松島の牡蠣漁師たちは1年間育てた牡蠣を市場に出し始める。
生食の解禁はオゾン処理等の殺菌滅菌したのを検査に出して、その結果で出回るから数日後になる。

牡蠣養殖は通常2年3年と大きくしてから出荷するのだが、松島の牡蠣は1年で育て出荷し、全部出し切ってしまうのが昔からの養殖業態。
牡蠣にとっての栄養が良い海水だから、殻の大きさは小ぶりだが、1年で実入りの良い美味しい牡蠣になる。

10月の2週目辺りに、牡蠣漁師たちが水揚げした牡蠣を集荷する漁師小屋があり、ボクは和食店を経営する板前で、いつもここで牡蠣を買う。

まだ海藻や雑貝類が付いて、塊になっている牡蠣をバールでバラシて、高圧洗浄機で洗う。
綺麗になった殻付き牡蠣を剥いて、今年の出来はいかがなものか?と試食する。
牡蠣剥きのナイフは通常、普通のナイフを小振りにした物が多いが、松島に伝わる牡蠣剥きナイフはT字型で、木のグリップの真ん中直角に細めで長い両刃が打ち込んで付いている特殊な物だ。
T字なので、押す力が加わりやすく、硬く頑丈な殻にすんなりナイフが入っていく。

横に真水の入ったバケツを用意して、籠の中の殻牡蠣を軍手に取る。
2枚貝の牡蠣は、蝶番の反対側の上下合わさり目を見つけ、そこに牡蠣剥きナイフを差し込み、蓋の面に沿って這わし、貝柱を殻から切り外すと蓋が開き、ぷっくりと膨らんだグレーの乳白色が露わになる。ナイフを的確に入れてあげると、このぷっくりに傷が付かず、艶やかで見事な膨らみは、まるで宝石のように美しく感じる。
今年の出来はいかがなものか?
早速剥いて真水で洗い試食する。通常、真牡蠣は3月いっぱいで生食出荷が終わる。産卵の為、卵が生食の場合、貝中毒の要因になるからだ。
しかし牡蠣が一番美味しくなる季節がこの時期。
したがって出始めの10月は本来の旨さに到達してはいないのだが、そこは松島牡蠣、特に鳴瀬の牡蠣は初っ端から身入りが良くてとても旨い。
そうは言っても流石にバラつきがあるので、この時期の味見は30個ほど剥いて食べて確かめる。まぁ30個は自分の欲求を満たす為でもある多過ぎる試食だが…

【スカウト】
漁師が呆れ顔で見ている横で、ボクはどんどん試食を重ねる。剥いては食べ、たべてはむく。漁師に「今のところ今年も出来が良いが、もう少し確かめる」と、またどんどん剥いて食べていると、いつの間にか横に立っていた相撲取りの様な体躯のおばちゃんが「オレにも剥いてけろ」と乱暴に手を出した。
たぶん地元漁師の女房かと思い、一個剥いて差し出す。
漁師の妻をまっとうしてきた顔つきは、気が強いと言うより芯が強く、大自然を相手にしてる家族を支えてきた分、人や物を見る目が厳しいのを感じ取れる。
その鋭くなった眼光でボクが差し出した牡蠣をじっくり眺めて指で摘み、相撲取り体躯の割には小さなおちょぼ口でちゅるんと牡蠣を吸い取った。おばちゃんはすぐにまた手を出し、無言で次のを剥けと催促する。仕方がなくそれを3度繰り返すと、手を出す間隔が異常に速くなって、牡蠣を剥くのが追い付かなくなる。
ボクはその煽られ方が何故かリズムにハマってテンポよく剥き続けた。
10個以上剥いた時、手を差し出さなくなったおばちゃんはおもむろにこう言った。
「明日からオレの剥き場に来い。雇ってやる」
どうもボクは近くにある牡蠣剥き加工場にスカウトされたらしい。
牡蠣剥きで大切なのは速さと美しさ。牡蠣に傷を付けては商品にならないのだ。
ボクの剥き方はプロとして合格のようだ。
奥で作業しながらこのやり取りを見ていた漁師が飛んできて、「コリャ〜!この人は割烹屋の親方さんだどっ!牡蠣剥きに引っ張れるワケねーべ」
おばちゃんは、ふーんとなんちゃない顔をして踵を返し、ごっつおさんと言いながら長靴を履いた太い足をどしんどしんとさせて帰って行った。

【夏牡蠣】
真牡蠣の節が終わり、夏になると岩牡蠣の季節だ。
種類が異なり産卵期も違うので、夏に生食できる大きな牡蠣。
最近は養殖岩牡蠣も盛んになってきたが、やはり岩牡蠣は天然が良い。
ファルトボートでいつものプライベートビーチに乗り付け、透明度のすこぶる高い美しい海を泳いだり、崖の隙間からの陽射しを受け止めてビールを飲んだり。
たまには漁師船が入れない暗礁地帯のウニ獲りなど漁師さんの手伝いもする。
シュノーケリングしていると砂底に3畳ほどの岩を見つけ、何か違和感を感じてよく観察すると、岩肌と思っていた表面が全て岩牡蠣で埋め尽くされている、岩化けの岩牡蠣であった。
水深4メートルと浅いが、岩牡蠣と岩が一体化していて、軍手をしていても素手では絶対に剥がせない。
そうなるとどうしても剥がしてみたくなり、バールを持って仕切り直しだ。
素潜りでは潜水時間に限りがあるし、動いていれば酸素消費量も多くなる。相手が岩なので数回に分けて戦う事にした。
〈ラウンド1〉
バールを牡蠣の隙間に差し込む。ただ闇雲に差し込むのではなく、殻がぶ厚い場所にできた隙間の奥まで差し込む。それなりに吟味するのでひと呼吸分使う。
〈ラウンド2〉
テコの原理で剥がす。これはもうチカラ任せに持ち上げる。しかしそこは水の中、足が海底や岩に着いていないと背筋を思う様に使えない。そして潜る体制は常に頭が下を向いているので、バールを掴んだ手の腕力だけが頼りとなる。
普段鍛えた筋力は息が続く限界になるとバカヂカラを出してくれる。大きな牡蠣殻がゴスッと音を出してズレ動いた。
〈ラウンド3〉
巨大な岩牡蠣を抱っこする様に抱えて水面に向かう。水上に出るとかなりの重量がズシンと伝わってくる。ようやく持ち上げたそれは全長30cm以上ある巨大な岩牡蠣。
〈ラウンド4〉
真牡蠣と違い、蓋の合わさり目が複雑で判別し難い岩牡蠣は、料理人でも慣れていないと、開けるのにかなり手こずる。真牡蠣の形状が平たいとするならば、岩牡蠣はまさに岩で、どちらが上かもわからないほど。まして蓋の合わさり目を特定するにはそれなりの経験値が必要だが、そこはワタクシくらいになりますと〜、こなした数が違う。あっさり開けると貝殻に負けないほどふっくらした身が溢れ出てきた。
ここで戦いの幕は降りる。
美味しいものを食べるって大変なコト。

その剥き身の大きさは子供の掌ほど。
もちろん一口では無理なので、4-5回に分けて齧る。と、海のミルクとはよく言ったもので、その濃厚でミルキーな旨味が口内いっぱいに広がる。
もはや海のミルクではなくて、岩牡蠣は海の生クリームだ。

【潜水器】
仲の良い友人とプライベートビーチに漕ぎ出す。今回の目的は「自作潜水器」の実験である。
たまたまネットショッピングで水中メガネを探していたら、オールフェイスのマスクで、吸った息と吐き出す息が弁によって別口のを見つける。今まで使っていたのは、もちろんシュノーケルで呼吸をするのだが、吸うのも吐くのも同じ管。見つけたのは入口と出口が別々のモノ。
閃いたアイデアは潜水服を着けてボンベを背負わず漁をする潜水器漁のマネ。
この漁は船上のエアーコンプレッサーで強制的に酸素を潜水服に送る仕組みだが、「たかだか3-4メートルくらいは息吸えるっしょ!」的な行き当たりばったりの実験だった。

DIYホームセンターでホースを徐々に太いのを差し込んで繋げる、長いジョウゴ式にし、水圧で潰れず息をたっぷりと吸える形状にしてみた。それをシュノーケルに繋いでジョウゴの広口部分はカヤックに乗ってる友人に預ける。
コレだったら3-4メートルの水深を息継ぎなしでいつまでも縦横無尽に泳ぎ回れる!筈だった。

ファルトボート2人艇で手頃な岩場に潜ってみる。
1回目:ちょいと顔を沈めて息をする。シュノーケルと同じ深さは快適にクリア。

2回目:シュノーケルの倍の深さに潜っても息が吸える。コレは成功の確率がグンと上がったぞ。

3度目:一気に水深2メートル。ん?んっ?息が、息が吸えない?全力で息を吸ってみるが、全然空気が入ってこない。
堪えきれずに浮上(つっても2メートルだけだけど)。相棒に吸えない事を報告。相棒はキョトンとしている。
「ホース入口、塞いでないよな?」
「塞いでませんよ」
「たかが2メートルで息吸えないんだけど」
「見てました」
「吸引できない理由はなんだろうか?」
「水圧でしょうけど2メートルでしょ?0.2気圧。ホースも潰れてませんよ」
「だよねー。塞いでないよな?」
「塞いでませんよ」
「ホントにホントに塞いでないよなっ?」
「塞いでませんってば!」
「じゃあなんだよその薄ら笑いは!」
「笑っちゃいませんて」

4度目:塞いでいない証拠にホースから絶え間なく声をかけるコト。
なんと1.5メートルから息が吸えない。ホースを伝わって相棒のエールが聞こえる。塞がってはいない。ホースも潰れていない。
って事は水圧。すごいな水圧。気圧と大違いぢゃ。

そのままカヤックを浜に押し上げ、水圧をどのように克服するかキラキラの熱い砂の上で、ビールを飲みながら会議を行う。
もうゆるゆるのこの時点で次回案も失敗に決まってる。
正式な潜水器漁は知っていたので、エアーコンプレッサーをカヤックに積み込み、強制的にエアーを送り出せば成功間違い無しなのだが、エアーコンプレッサーなんて重いモノ積めるわけがない。
自転車の空気入れは意外と場所取るし、足踏み蛇腹もやりにくい。
ボクらが出したベストアンサーは「簡易焚火用フイゴ」
アコーディオンのよに開いて閉じると空気が押し出される。
コレだったらカヤック上で座ったまま空気を送り続けられる。
しかし、もう成功したのも同然なので、この後実験はしていない。
男たちは机上の空論で満足し切ってしまったのである。
勝ったつもりってぇのは酒のつまみになり、ハナシはさらに大きくなっていつしか武勇伝に置き換わる仕組みだ。

【水中早剥き】
潜水器のコトもすっかり忘れた翌年の夏。同じ相棒と同じビーチへカヤックを漕ぎ出す。
シュノーケリングして海の生物の生態を楽しんでいると、すっかり忘れていた例の岩牡蠣岩の上に浮かんでいた。
漁師に何時何を頼まれても良いように七つ道具は常に身に付けてある。その中の牡蠣剥きを出し、素潜りする。
牡蠣は水上ではキッチリ貝を閉じていて、2枚貝の中では最も剥きにくい位置にいる。しかし水中にいる時は呼吸とプランクトンを摂取する為、常に口を数ミリ開けているのだ。
牡蠣剥きナイフを手にして潜る。
案の定、口が少しだけ開いている。
貝柱がある辺りにナイフをスッと入れ、貝柱を切断するまでの時間は1秒足らずの早技だから、牡蠣も蓋を閉じる余裕などない。続け様に2個。最後の息で3個の蓋を力まかせに外して中身だけを網に入れた。
3息で1個だったのが、一息で3個。今日の収穫はコレで十分だ。

1個は生で堪能して、残ったのを殻焼きにして食べる。通常牡蠣は火が入ると縮こまるが、この特大の岩牡蠣は全く縮みもせず、逆に芳醇なジュースを吹き出し、焚火に溢れ出させて、香ばしいふくよかな美味しい蒸気を発し、身は生の時よりもふっくらとさせていた。

大きすぎるので半分にナイフで切って、相棒と分ける。あちちと口に含むと生よりさらに濃厚で、ふんわりしながらも確かな食感を持ち、また違った生クリーム並みの濃厚さを口の中に広げるが、決して暴力的ではなく、大きな海のウネリの様に立て続けにそれぞれの部位で旨味を被せてくる。
相棒はいつまでも口を動かしている。きっと貝柱を堪能しているんだろう。牡蠣に貝柱は1個にひとつ。
ボクはもう一度海に潜った。

【世界大会】
東日本大震災の翌年、あの忌々しい日から1年と少し過ぎた日に、突然カナダからメールがきた。
なんでもウィスラーで開催される「牡蠣の早剥き世界大会」に日本代表として選ばれたから出て欲しいとの依頼だった。
了承したらクレジット番号を送れと全て日本語で書いてあり、新手の詐欺かとも思ったが、詳しい友人に見てもらったところホンモノのようだ。
飛行機のチケットが送られてきて、益々信憑性を帯びて安心し、現地で通訳をしてくれる日本人スタッフと電話連絡して打ち合わせをし、帰りの便を1日遅らせてフィッシングガイドを頼む事にした。憧れのカナダでキングサーモンを釣りたいって夢が叶うチャンスだ。
結果は小さなトラウトしか釣れず、ガイドには来月くればビッグトラウトが釣れたのにと言われたが、カナダの国立公園内で渓流釣りができた事。その渓流でレイチューンミノーを踊らせた事がボクの中でとても重要な事だった。
バンクーバー国際空港にはお迎えが来ていて、英語を一切話せないボクは、おかげでなんのストレスもなくウィスラーのホテルへ到着。部屋に荷物を下ろして早速ホテルの厨房へ挨拶へ行くと、フランス、カナダ、アメリカ等から集まった腕っこきの牡蠣早剥き師が集まって練習をしていた。みんな賞金稼ぎだからプロ意識が高い。
剥く動作を見ているとして日本の剥き方とは逆で、蝶番の方からナイフを入れて蓋をブッ飛ばす。豪快で早い。
よくよく牡蠣を見ると、日本の牡蠣とは形状が違い、蓋の部分が膨らんでいる。
彼らの早剥き練習を見て勝算がゼロになった。時間では勝てる気が全くしない。
ならば初の日本人代表として堂々と凜として臨もう。

大会当日。3名づつのトーナメント制。英語でルールを捲し立てられる。さっぱりだ。
3種類の牡蠣が10個づつ目の前に並べられる。勝ち抜けた者が次の試合に行く。1回戦目3名ともゴツイ身体で分厚いグローブをし、それでも血だらけになって牡蠣を剥く。思っていたより壮絶な戦いだ。

【賞賛】
いよいよボクの出番。コールされて表舞台へと上がる。叔母の着物で作り直した作務衣を纏い、懐から赤い襷を出して咥え、パパッと少しオーバーアクションで結び、白い前掛けを締める。と、その時点でスタンディングオベーション。
役目の半分は終わった。

試合が始まり、相手の2人は突んのめりながらすごいスピードで牡蠣を剥いている。
オイラは、ピンと背筋を伸ばし、まるで太極拳の動きの様な緩やかでいて確実な捌き方で丁寧に剥いてゆく。もちろん遅い。
彼らの倍以上の時間をかけて剥き終わった時、妙齢のご婦人が壇上に上がってきて、ハグされた。
ボディランゲージで他の選手とボクの違いを真似て表し、通訳を通して「堂々としてサムライだ日本男児だ!見応えがあった」と称賛してくれたら、負けたのにみんなが集まってきて揉みくちゃにされた。小柄でゲイの大会開催主のキス責めにもあって、どさくさついでにくちびるも奪われた。
ひとりひとりハグしてると背の高い外国のおねいさん達のボインがボクの顔を覆ってとてもウレシ苦しく、来てよかったなと肌で感じた大会だった。

【ワインセラー】
大会後、参加者と開催者関係が集まり、地下のワインセラーへと案内される。ワインセラーは巨大な部屋で、冬季オリンピック開催地らしく、ボブスレーのソリが宙吊りされてオブジェとなっていた。

先ずはシャンパンを開ける。シャンパンを抜くのではなくて、サーベルを注ぎ口に向かって勢いよく滑らせ瓶の首を落とし、それを注いで皆で乾杯する。
みんな体格も良く酒も強いので、高級シャンパンを水のようにガブガブ飲む。
さぁサムライよ、この刀で開けてくれ!とシャンパンと飾っていた日本刀の模造品を渡された。
跳ね飛ばした瓶の首は、それに合わせた小さな箱に納まり「幸運の御守り」として渡された。
へぇ、こんなのを御守りにするんだと眺めていたら、お世話をしていたチャイナドレスを纏ったボインのおねいさんに「あなたに感動したから記念に是非ともコレを頂きたい」的なおねだりをされたので、即お渡しした。
この話は未だ誰にもしてないのは、お礼にチューをされたからだ。
カナダはよくチューをされる国。

【ice room】
散々シャンパンとワインを飲んで騒いだ地下室から這い出て、ホテルレストランで食事が始まる。
ヘラ鹿のステーキや、手の込んだソースと美しく盛り付けられた前菜を、フランスとアメリカの食文化が強く入っているカナダの料理をなるほどなと味わっていると、ワインセラーとは別のボインのおねいさんからアイスルームへ行こうと誘われる。
シャンパンとワインでかなり酔ったボクは妄想癖が暴走し始める。

氷の部屋でいったい何をするの?
なんかマイナス28とか聞こえたような気がする。も、もしかして氷の部屋でハダカとかになるんじゃないよね?ただでさえ日本人スモール!寒いと尚のことベリースモールだぜ…せっかく賞賛されたんだからこのまま帰してくれ〜と言ってるのに伝わらない。通訳どこいったよ!
レストランの奥にあったのはガラス張りのice room。中は氷の世界。
ハダカにさせられるのかと思いきや、イヌイットが着るような防寒服を羽織らせられて中に入ると、四角四面氷の壁でウオッカのボトルが氷に埋め込まれている。
ボインのおねいさんは寒いのに防寒服のチャックを開けて、胸の谷間を露わにしている。ボインだから寒くないのかもしれない。彼女は分厚い氷のテーブルに逆さになったショットグラスを反転させてボクに差し出し、氷の壁からウオッカを取り出して注いでくれる。極寒では強い酒は凍らず、トロミがつく。ショットグラスにとろとろと注がれたウオッカをみんなで一気飲みしてる。酒の弱いボクは恐る恐る口に含んだ。
ん?ウオッカってこんなに美味しくて、喉越し良かったっけ?
ボインおねいさんはお代わりどうぞと流し目を使う。一気飲みしてみた。むちゃくちゃ美味しい。
調子に乗って杯を進めるが全然酔わない。オレって酒豪かも!
そろそろディナーに戻ろうとボインねーさんに手を引かれ、アイスルームのドアを開けてレストランの暖かい空気を吸うと、一気に焼けるような感覚がボクの喉を襲った。
それはすぐに胃袋に到着して身体を燃やす。
思わず天を仰いだら、ボインおねいさんがボクを見てクスッと笑い、ウインクした瞬間、ボクは火だるまになった。

【応援部隊】
実はこのカナダ行き、娘達も付いてきた。
行き帰りの飛行機も別、ホテルも別、観光もボクとは全て別行動。娘2人でカナダを満喫していたが、牡蠣剥き大会は応援に来てくれた。後日バンクーバー新聞にはトップ記事として、撫子ジャパンの試合より大きく掲載され、数枚の掲載写真には親子でドアップのもあり、大したことないやってないしボロ負けしたのに、なんかやったった感が滲み出てきた。
娘達は打ち上げのディナーにもちゃっかり加えてもらい「もう遅いからお父さんの部屋に泊まっていきなさい」と甘えさせてもらっていたが、実際には酔い潰れた父親の後片付け役だったと思われる。

【facebook・profile】
招待してくれたウィスラーのホテル副社長は日本人で、とても良くしてくれた。もちろん日本人ってことだけで頼もしいのだが、色々な方を紹介してくれて、国籍問わず一気に仲良しになれた気がした。
それからもsnsで繋がって、たまにメッセージのやりとりをしていた。
数年後出張で来日した時に、わざわざ仙台まで足を運んで店に来てくれた。ボクもまたカナダに旅行に行く時があれば是非会いたいひとり。
彼に何故ボクに日本代表の白羽の矢が当たったのかと尋ねたら、snsのプロフィールに
『得意技:牡蠣の早剥き、早食い』
と表記してあったので、おもわずコンタクトをとってしまったのだと言う。
世の中、実に面白い。

牡蠣の早剥き世界大会結果
日本代表 Tsunehiko Hotaka
世界13位
エントリーは各国の猛者13名🤣

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