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【イベントレポ 】2022/2/22 北海道スペースポートトークイベント「宇宙×地方創生が加速する!" オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる"」 ①

「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョン実現に向け、ロケットおよび宇宙旅行等を目的とした宇宙船の射場・実験場を整備し、航空宇宙の研究開発からビジネスのサポート、ならびに宇宙産業を軸とした地方創生を進める北海道スペースポート(以下HOSPO)。2025年度までに完成予定の2つのロケット射場整備の資金を集めており、その資金確保にふるさと納税(企業版・個人版)や寄附の仕組みを活用しています。
この度、HOSPOプロジェクトへの2021年度の企業版ふるさと納税の寄附は延べ68社、合計6億2,350万円となり、2021年度目標金額の5億円を達成いたしました!そこで、企業版ふるさと納税の初年度目標達成をうけて、2022年2月22日(火)にHOSPOが目指す未来やビジョンについて語るトークイベント「宇宙×地方創生が加速する!" オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる"」を開催。
第一部は行政機関の皆様をお招きし、 北海道が宇宙ビジネスの舞台になる未来を語り、第二部は宇宙産業 をはじめ道内経済・産業の活性化に取り組まれている経済団体や、 HOSPOへの寄附をいただいた民間企業の皆様をお招きして、 宇宙版シリコンバレーへの思いや期待、 寄附に至った経緯等についてお話しいただきました。

【第一部】宇宙 地方創生 北海道が世界の宇宙ビジネスの聖地になる未来を語る

登壇者:

イベント冒頭、大樹町出身で宇宙のまちづくりを歴代町長から継続して推進している大樹町長 酒森 正人氏の挨拶から始まり、HOSPOプロジェクトへの企業版ふるさと納税にご支援いただいた皆様への感謝とトークイベントの意気込みを語られました。

大樹町長 酒森 正人氏

宇宙×地方創生が加速する!北海道スペースポートに、企業版ふるさと納税68社、6億2,350万円の寄附が集まる

続いてモデレーターを担当する小田切がHOSPOの取り組みを紹介。射場としての重要性や北海道の宇宙ビジネスの可能性をスライドを使って説明しました。

SPACE COTAN株式会社 代表取締役社長兼CEO 小田切 義憲


大樹町長 酒森 正人氏:

大樹町では35年以上に渡って航空宇宙の取り組みを進めてまいりました。JAXAをはじめ、各大学等の打上げ実験で海に落とした実験物の回収には、地元の漁師が協力しております。そういう意味で、地元の実験に対する理解は醸成されていると思っております。また、スペースポートの整備には広大な土地が必要ですが、大樹町には沿岸に沿って20キロ、奥行5キロの平坦で広大な土地があり、それはまさにスペースポートを実現するための拡張性、汎用性を伴った敷地です。私自身、国内外のさまざまな射場を視察しましたが、大樹町ほど条件が恵まれている場所は私が見た限りではありません。アジアトップレベルの射場の実現が可能な適地だと思っております。すでに北海道スペースポートではインターステラテクノロジズが観測ロケット「MOMO」を打上げて宇宙空間に到達しております。ロケット打上げには多くの関係機関との調整が必要になりますが、そのノウハウをもうすでに数回の打上げを通じて私どもは調整を終えているということもアドバンテージを持っていると考えております。

国土交通省 北海道開発局長 橋本 幸氏:

国土交通省 北海道開発局長 橋本 幸氏

本日は宇宙からの情報を利用するユーザーの立場からお話をさせていただきたいと思います。北海道開発局は国土交通行政のうち北海道における国の基幹的な河川、道路、港、農業基盤などの整備や管理を主な役割としています。宇宙との関係がどこにあるのかと思われると思いますが、この建設分野の現場も急速にデジタル化が進んでおります。深刻な人手不足と建設業独特の生産性の低さが指摘されておりまして、技術で補わなければ解決しない分野となっています。その重要な基盤となるのが宇宙からの位置情報でして、自動運転技術も含めまして宇宙からのデータなしでは成立しないような分野が多々ございます。スマート農業という言葉は十勝では当たり前のように使われている言葉ですが、この基盤となるのも位置情報であります。今年北海道で深刻な被害を及ぼしました赤潮ですが、当初は地元の漁業者の方から十勝川の富栄養化が原因なのではないかとご指摘をいただきました。我々は経年でずっとその水質を調べておりますので、データから富栄養化が原因ではないことが分かっていたのですが、どういうふうに打ち出そうかなと思っていたときに、北海道新聞さんの一面でJAXA「しきさい」による宇宙のビックデータを元に分析した赤潮の動きからロシア由来である可能性が発表されました。このような形で宇宙からのデータにより原因究明が進んだというところでございます。

経済産業省 北海道経済産業局長 池山 成俊氏:

経済産業省 北海道経済産業局長 池山 成俊氏

北海道経済産業局としても宇宙ビジネスが大変重要な新しい産業だと思っており、取り組みを強化しています。昨年、航空宇宙担当参事官を新たに配置し、我々の取組をプレス発表させていただきました。具体的に行っているのが調査事業で、現在の北海道における宇宙産業の実態や今後のニーズ、HOSPOを中核とした関連産業の可能性、さらには衛星データを利用したビジネスがどうなっていくのかといったところを調査しているところです。こういった観点から北海道の宇宙ビジネスは大きなポテンシャルがあり、3つの理由があると思っています。打上に理想的な地勢的地理的な特徴を生かした射場があることと整備拡充に必要な広大な土地という地の利があること、宇宙ビジネスのユーザーとして農業漁業での取組が行われており、今後エネルギーなどの幅広い利用の可能性としてユーザーがいること、宇宙ビジネスを支えるプレイヤーとしてインターステラテクノロジズなど宇宙系スタートアップ企業や部品を供給する企業、射場整備する企業、大学、高専など人材を供給できるようなプレーヤーがいること、さらに地元の方々や自治体の理解、経済界のサポートがあることも今後の強味になると考えています。

札幌市 経済観光局産業振興部 部長 坂井 智則氏:

札幌市 経済観光局産業振興部 部長 坂井 智則氏

札幌市は2019年9月に「さっぽろ産業振興財団」と「D2 Garage」が一緒に札幌、北海道から世界を変えるスタートアップを作っていこうということで「STARTUP CITY SAPPORO」プロジェクトを立ち上げました。その中でも「J-Startup HOKKAIDO」では宇宙ビジネスのインターステラテクノロジズさんなどのスタートアップ企業を採択し応援をさせていただいています。その取り組みの延長として2020年7月に「札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会」が内閣府よりスタートアップエコシステム拠点都市に認定されました。10個の目標がある中の1つに、「宇宙スタートアップが活躍できるメニューの整備」と唱えています。一次産業や建設業の課題を先ほど話していただきましたが、課題があるということは解決できる余地があるということです。社会課題の解決はスタートアップの大きな役割だと思っていまして、特に北海道は宇宙ビジネスを進めていくということを地域全体で解決できるということが最高のポテンシャルなのかなと思ってございます。



J-Startup HOKKAIDO
札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会

小田切:
スピーカーの皆様ありがとうございました。共通のワードもいろいろと出てきましたが、1つには地理的なアドバンテージ、その次には人の体制がしっかりしていて、北海道を挙げたサポート体制が整いつつあるところがポテンシャルとして考えられていると思っております。では続きまして二つ目の話題に移ります。

HOSPOが地方・日本に与える影響は?

酒森 正人氏:
ロケットの打上げを核とした航空宇宙の取り組みを通じて産業集積が進むことが期待されると思います。航空宇宙の取り組みは教育や観光の力もあると考えております。昨年、室蘭工業大学が大樹町にサテライトオフィスを開いてくれました。その活動の一環として、室蘭工業大学から出前授業という形で小中高校で体験学習を実施をしてくれました。新年度からは、夏休みに大樹高校の1年生が室蘭工業大学にお邪魔して、さらに体験を深めるということも協議をしながら進めているところです。また、道東にある釧路高専もインターステラテクノロジズと連携していろいろな取り組みをスタートしており、もうすでに教育の部分では新たな目が芽生えつつあります。国内で民間のロケットを打上げられる射場が整備されれば、国内の衛星企業はコストの低減や研究開発した成果を海外に持ち出すことなく、国内で完結できるメリットがあります。HOSPOの役割はこれから大きなものがあると思っております。

大樹サテライトオフィス | 国立大学法人 室蘭工業大学

橋本 幸氏:
明治2年の開拓使から始まった北海道の開拓開発に携わっている立場から、最も深刻に受け止めていることは北海道地方部の急激な人口減少です。認識しておきたいのは北海道の地方部、つまり人が抜けていくところで生み出されている価値ということになるのかと思います。北海道は観光や生産を全て地方部に頼っていると言っていいのかもしれません。食や観光を創出する地方部のインフラを整備することで、人々が住み続けられる環境を作り、北海道の価値を守っていくことが重要です。それを支える基盤の一つが、公共交通で高齢化が進行する中山間地における人流、物流の確保のため道の駅を拠点とした自動運転サービスの社会実装を目指しています。2017年12月に大樹町で公共交通自動実証実験を行いました。自動運転は磁気マーカーを埋めるという方法もありますが、北海道の冬季は雪が積もっていて磁気マーカーが使えないのでGPSによる位置情報の精度が極めて重要です。チャレンジングなものではありましたが、こうした取り組みを一過性のものではなく続けていくことで地方創生に寄与していきたいと思っています。

自動運転サービス実証実験について | 北海道大樹町公式ホームページ

池山 成俊氏:
HOSPOは非常に大きなゲームチェンジャーになるのではないかなと思っております。大樹町に大きな引力を持たせるような取り組みが行われているということで、ここを中核に人や物、企業、技術、情報など産業が集積することを期待しています。そうなれば、それが核となってさらに引力も強くなっていくと思うので、今後の北海道、そして日本にとっても非常に大きなカギを握る取り組みになると思います。企業の誘致、育成に加え教育や観光などいろいろな波及効果もあるだろうということで、それをビジネスに変えていく取り組みを続けることによって大きな経済効果を日本全体に与えられるのではと考えております。

坂井 智則氏:
大樹町だけではなく、北海道全体で宇宙版シリコンバレーをというありがたい言葉を大樹町長からいただきました。大樹町、HOSPOが中心になって宇宙ビジネスを進めていくことで北海道全体に産業収益がありますし、国内外から優秀な人材も集まってくると思います。人が集まるとそこに観光や食産業も出てくるので、宇宙ビジネスを進めることが他産業にも良い影響が与えられると思っています。宇宙ビジネスは避けては通れないと思っているので大樹町、北海道から世界を変えていくようなビジネスを生み出していければと思います。

小田切:
皆様ありがとうございました。国内消費、あるいは北海道内消費を増やしていくことで人が集まるということですので、宇宙に直接関係する方たち以外の観光で来られる方、教育で来られる方というところにも可能性はあるという話をいただきました。続きましてそんな宇宙版シリコンバレーを加速していこうと考えている私たちですが、よりしっかりと加速させていくためにはどんなことが必要かというところのご意見を頂戴できればと思います。


宇宙版シリコンバレーを加速させるためには、何が必要か?

坂井 智則氏:
どのスタートアップ企業にも言えることですが、優秀な人材をどう集めてくるかということが重要だと思います。機械系エンジニアの不足や研究資金不足をよく耳にするのですが、解決策はやはり宇宙版シリコンバレーの取り組みを多くの方に認知していただくことが一番大きなことだと思っています。カンファレンスなどを通じて認知度を高めていくことでエンジニアや投資家の方からも興味を持っていただけると思っています。

池山 成俊氏:
本場のシリコンバレーがイノベーションの中心になったのはなぜかを考えますと、エコシステムが整理されているということではないかと考えます。従って、この北海道でも宇宙版のエコシステムを作っていくことが非常に重要です。集積した人、物、金、技術、情報を有機的に結びつけるような取り組みが必要で、そのためには様々なプレイヤーを支援し育成していくことが重要だと思いますし、ユーザーとプレイヤーをマッチングするような取り組みも行う必要があります。さらには受け皿となる生活インフラの整備も含めて考えていくことが必要と考えています。

橋本 幸氏:
やはり物流基盤の強化が1つの大きな役割だと思っています。現在、帯広から広尾に向けて帯広広尾道路を伸ばしています。その先には十勝港がありますので、大きなものを運んだり海上輸送といったものも当然活用されるんだと思います。十勝港の整備も私たちの仕事ですし、そうした物流基盤の強化というのは宇宙版シリコンバレーを形作るためにさせていただける役割なのかなと思っています。先ほどは宇宙データを活用するユーザーサイドとして話しましたが、物流に関してはサプライサイドになりますのでシリコンバレーを加速させていくために何が必要で、そしてどのような手段で運ぶのが効率的なのかという需要を勉強して、必要な役割を果たしてまいりたいと思っております。

酒森 正人氏:
HOSPOがいわゆる宇宙版シリコンバレーの起点にはなりますが、それがすぐシリコンバレーにつながることではないと思っております。航空宇宙関連産業が大樹町、そして北海道に集積していくためには私たちの活動を北海道全体の動きにしていく。そしてオール北海道で私どもの取り組みをご支援いただき、さらに企業誘致を進めることで北海道に宇宙版のシリコンバレーを作ることができます。大樹町が中心となって、しっかりと役割をこなしていきたいと思っています。

小田切:
ありがとうございました。では最後になりますが、HOSPOがこれから加速をしていくなかでぜひ積極的にご支援を賜りたいというふうに思っておりますので、そういった意気込みを一言いただければと思います。

坂井 智則氏:
札幌市は北海道の中心として国内外に情報を発信し、北海道から宇宙ビジネスに関するスタートアップを育成することと企業の誘致を積極的に行います。札幌市では千歳など札幌圏に来た企業に対して設備投資費用の補助金を出しています。北海道全体を盛り上げなければ札幌の未来はないと思っていますので、そういった視点で関わっていければと思っています。

池山 成俊氏:
我々はエコシステムの形成のために取り組みを進めたいと思っています。まず、プレイヤーに対する支援ということで経産省の各種補助金制度があります。ロケットや人工衛星の開発製造に関わる方々に対して戦略的な技術開発を支援するサポイン事業や実証事業、さらにはものづくり補助金といった形で設備導入を支援する制度を通じてプレイヤーの支援をしていきたいと思っております。また、衛星データ利用の新しいビジネスのユーザー支援や、様々な関連ビジネスの展開可能性についての情報発信などの取組を通じ、北海道の宇宙ビジネスの基盤をつくり、宇宙産業という新しい産業は若い方々にとって非常に魅力的な産業になると思っているので、関係者の方々と協力をし、オール北海道で進めていきたいです。

橋本 幸氏:
北海道開発というものを長期的視点に立って計画的に行うため、政府として北海道総合開発計画というものを閣議決定して現在まで進めておりまして、現在、新しい計画を検討中であります。この中で宇宙版シリコンバレーに向けた取り組みも意識しながら進めてまいりたいと考えております。

北海道総合開発計画について

酒森 正人氏:
HOSPOの整備は、大樹町が国の拠点整備交付金を活用させていただきながら地方創生を目的とした事業という形で実施をさせていただくものであります。北海道、日本の航空宇宙の新たな取り組みの大きな役割を担っているという思いで実施をしておりますので、私どもの取り組みをいかに多くの方々にご理解、ご支援をいただくことがこれからの事業にとって大きなポイントになると思います。宇宙版シリコンバレーの実現に向けて取り組んでいきたいという強い思いを持っておりますので、今後ともご支援を賜れたら幸いです。

第一部の中では、行政の皆さまから熱いメッセージを頂戴させていただきました。事業を進めていくなかで大きな励みとなるトークイベントをありがとうございました。

続いて第二部では、登壇者が変わり「オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる」をテーマにトークが繰り広げられました。
(第二部リンク)
https://note.com/preview/n51eb42010c38?prev_access_key=1081f1074511093ed0fe421282cf7054

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