見出し画像

【イベントレポート】北海道宇宙サミット2022 〜Session2 ものづくり大国 日本の再興!勝機は宇宙に〜

登壇者

Our Stars株式会社 代表取締役社長 /インターステラテクノロジズ株式会社 ファウンダー 堀江 貴文氏
株式会社釧路製作所 代表取締役社長 羽刕 洋氏
株式会社IHI/IHIエアロスペース 顧問 牧野 隆氏
インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役社長 稲川 貴大氏(モデレータ)

インターステラテクノロジズ代表取締役社長の稲川氏

稲川氏:
「ものづくり大国日本の再興!勝機は宇宙に」というテーマで、特にものづくり、製造業に焦点を当てながら宇宙の文脈で話したいと思います。

インターステラテクノロジズ(IST)はこれまで「MOMO」というロケットを打ち上げてきました。昨年は宇宙空間への到達を1ヶ月の間に2機成功し、高頻度に打ち上げるという実績も作れたところです。

今、開発に注力しているのは人工衛星を打ち上げる「ZERO」という機体です。長さが10m、直径50センチぐらいのMOMOに対して、ZEROは長さが25mぐらいで、重さにすると大体20倍〜30倍弱と、一桁違うサイズ感になります。

SpaceXの時価総額はフォルクスワーゲンと一緒

ニュースペースや宇宙ベンチャーと言われるアメリカ企業には大きい時価総額がついています。一番大きいSpaceXという企業は、自動車会社のフォルクスワーゲンと時価総額ベースでは大体一緒です。

超大手の自動車会社クラスの企業がここ10年、15年ぐらいで出てきているのがアメリカの宇宙産業です。SpaceX以外にも、ユニコーン企業が10社近く生まれています。それに比べて日本はまだまだ小さいです。

バブル期と言われた1990年代には世界の時価総額上位に日本企業がたくさんありました。現在上位の企業は本当に限られています。日本企業への期待値が90年代から現在にかけて下がっているのは事実だと思います。

しかし、成長産業だと株価や時価総額が非常に伸びますので、今、成長産業である宇宙産業は日本の産業全体という文脈で考えても投資すべき分野だと思っています。


最初に堀江さんから簡単に自己紹介をお願いします。

Our Stars代表取締役社長 、インターステラテクノロジズ ファウンダーの堀江氏

堀江氏:
ロケットも作っていますが、パン屋さんをやったりしています。北海道のテレビ局とのコラボ企画で「蝦夷マルシェ」という居酒屋を作ったり、そこの社長が「彗星に碧」というおしゃれなカフェ兼コワーキングスペースを作ったり、コスモール大樹という道の駅で「堀江家」という家系ラーメンの店も始めました。そのお店でスープを作っているわけではなく、工場にレシピを渡して供給してもらっているので、ワンオペでできるようになっています。

地方はめちゃくちゃ人材不足で、特に若者が不足しているので、パン屋さんも石川県金沢市にある工場で冷凍生地を作って、各店舗に送って、店舗では成形して、調整して焼くだけという仕組みにして地方の人材不足に対応しています。

ロケットはまちづくりも実は結構重要だと思っていて、食べ物屋さん、ご飯屋さん、そういった施設が増えることが町の発展にすごく大事だと伝えたいです。あと大樹町には、工業団地を作って電力供給や道路などを政府の仕組みを使って整備してもらえると嬉しいです。

稲川氏:
ISTも従業員が100人規模になり、今後ももっと増やそうと思っています。これからもっと人が増えると、工場の拡張も含めて課題が出てくると予想しています。続いて牧野さんより自己紹介をお願いします。

IHI、IHIエアロスペース顧問の牧野氏

牧野氏:
私は小学生のときにアポロ11号の月着陸を見て以来、「有人の宇宙船を作る」と決め、学生時代も含めて45年ぐらい宇宙開発をやっています。固体ロケットを中心に、リエントリーで地球へ帰ってくるもの、はやぶさカプセルのチーフエンジニアなどをやっていました。大樹町でも1998年にユーザーズというカプセルの落下試験を行って以来、大樹にはよく来ています。

国内衛星打上げへ イプシロンSを国際競争力のある価格に

IHIエアロスペースはイプシロンロケットの運用を行っています。「イプシロンS」を国際競争力のある価格のロケットにして、2号機以降IHIエアロスペースが打上げサービスをやろうと開発を進めています。我が国の衛星の半分くらいしか国内で打ち上げられていない現状を変えたいと思っています。

稲川氏:
牧野さんは固体ロケットを設計し、IHIエアロスペースの社長、顧問としても携わってきた第一人者としてのご発言だったと思います。続いて釧路製作所の羽刕社長、お願いします。

釧路製作所 代表取締役社長の羽刕氏

羽刕氏:
弊社は釧路市にあり、帯広市や大樹町からは東に120キロのところにあります。三菱系の湧別炭鉱が釧路市阿寒町にあり、昭和31年にその子会社として設立されました。三菱系企業の資本を得て独立し、現在は鋼製橋梁や鋼製タンクなどの大型構造設備を作っています。

2019年からパートナーとしてISTにも出資しております。サイレンサーと呼ばれる地上設備や防音壁、「宇宙品質にシフト MOMO3号機」が宇宙に到達する前に行われた縦吹き実験装置を納めています。

これからIST社や地元の高専とZEROのロケットランチャーを共同開発します。昨年、経済産業省から事業再構築補助金を受けて精密機械設備を導入し、ロケット部品の供給を始める準備をしています。

稲川氏:
日本の製造業の強みと課題を話題としたいと思います。

ロケット産業へ参入 地域発展へファーストペンギンに

羽刕氏:
釧路は漁業と水産加工、石炭、紙パルプの3つが大きな産業でしたが、現在はどれも厳しい状況にあります。少子高齢化で、特に地方は生産労働者が減り、厳しい状況です。

一方で、釧路地方には3つの基幹産業に関わってきた中小企業が多くあります。これまでの自分たちのやり方を変え、次のステップに踏み出せない中小企業がいると思うので、我々はロケット産業に参入、実行、そして実現することで、地域のファーストペンギンとなり、地域が発展するお手伝いができたらと考えています。

稲川氏:
重要なのはチャレンジ。新しいところに飛び込むことが重要というお話ですね。牧野さんからも製造業の強みと課題をお話いただければと思います。

牧野氏:
日本のように産業基盤が広範なエリアにあるのはすごく大事なことです。安全保障上の問題もあり、ロケットや衛星は勝手に輸出できないし、簡単に輸入もできない。

そうした中で我々オールドスペースは色々なものに国内の技術を使っています。羽刕さんの会社にうちのランチャーを少し直したいと相談に行ける、そういう企業が近くにあるという意味で、日本は宇宙産業をやりやすいと思います。

問題は儲かる仕事しかやらない会社が増えてきたことで、サプライチェーンが少し脆弱になっていることです。今はニュースペースを含めて宇宙産業の規模を大きくする必要があるときです。最後のチャンスという感じもします。ニュースペースとオールドスペースが一緒に事業規模を大きくすることが課題です。

稲川氏:
サプライチェーンが元々あるのは本当に日本の強みです。同時に最後のチャンスという言葉も出たのが印象的です。

堀江氏:
日本のGDPは内需が主体ですが、これからはインバウンドの観光業が一つの柱になると思います。亡くなった安倍首相がすごく推進していました。10年くらい前、観光業をこれから日本の主力にすると言って、みんなポカンとしていたと思いますが、コロナ禍直前の2019年には3,000万人を超える観光客が来ています。

日本の宇宙産業発展へ
高度な製造メーカー、サプライチェーン維持が大事

僕はもう一つの柱を宇宙産業にしたいと思っています。でも日本のサプライチェーンは、本当に瀕死の状態です。ロケットは衛星の代わりに爆弾を載せたらミサイルになるので、軍事転用できます。ロケットにしか使われない、例えば高精度のジャイロなどの部品を国内で調達できることが非常に大事です。高度な製造メーカーさんやサプライチェーンを維持していくのは非常に大事です。

稲川氏:
今後日本が目指す方向での課題、解決策を教えてください。

羽刕氏:
例えば地域の機械工業界、鉄鋼業界で企業の設備や人材の能力を共有したい。共有することで、1社ではできない仕事ができるかもしれない。色々な仕事を道東地域で受けられるようにしたいと考えています。

将来我々の事業に参入してくる子どもたちをどう確保するかという点では、弊社のVR溶接体験設備を活用して、学校でものづくりや溶接の楽しさを教えています。

稲川氏:
ものづくりは人づくりとよく言われますが、こうした取り組みは本当にすごいと思って聞いていました。牧野さんには今後の目標も含めてお話しいただきたいです。

牧野氏:
経済性と地球環境保護を両立させるサステナブルな社会を目指し、泥炭地の森林管理としてヘイズ(煙害)と森林火災被害に対し、木を育ててCO2を固定しようと検討しています。

写真は、10年ほど前に、住友林業さんのインドネシア圃場を視察に行った際に、記念ににマンゴーを植えている写真です。今度、マンゴーの果実を収穫に行きたいと思っています。

明星電気の『POTEKA』という超高密度気象観測サービスを熱帯雨林用に変え、地下水や水位をコントロールしながら森林を育てています。CO2排出削減をネガティブエミッション(固定化)しています。CO2を減らすことに宇宙や衛星データを利用するのは究極の課題です。

IHIエアロスペースは有翼実験機も作っています。白老にある室蘭工業大学の滑空場で試験していました。まずは無人のスペースプレーンを作っていて、大樹町では12月ごろに試験を行いたいと思っています。

稲川氏:
宇宙活用が地球環境問題の解決になることは広く言われていましたが、実際に住友林業さん、IHIという日本を代表する企業で動き出しているのもエキサイティングだと思いました。

翼付きのロケット、スペースプレーンの実験場所として大樹が重要だという点で、北海道スペースポートの盛り上がりを感じたところです。

最後に堀江さんからロケットファンドについてお願いします。

堀江氏:
様々な資金調達等を行ってZEROを打ち上げるべく頑張っていますが、なかなか銀行がお金を貸してくれません。

高杉良さんが書いた小説『日本興業銀行』を読みましたが、すごい時代だと思いました。日本の戦後復興を成し遂げるためにアラビア石油とかから原油をタンカーで運んできて、「日本にサプライチェーンを作るんだ」と意気込む人たちに、日本興業銀行はものすごい額を融資する。一方、ロケットには現状、全然お金が付いていません。

不動産クラウドファンディングを始めました。不動産に対して小口で個人が投資できる仕組みで、我々の物件の大家さんになってもらうクラファンです。シーラという会社が「利回りくん」という名前で行っているサービスです。今回は年利5.5%で、始めて2日間で3億円を集めました。

稲川氏:
最後に羽刕さん、牧野さんに北海道宇宙サミットで残したいメッセージをお願いします。

羽刕氏:
色々な能力を持った中小企業があると思うので、ぜひ挑戦する心を持って新たな事業を見出してほしいです。昨今は国の中小企業支援制度がたくさんあります。銀行もぜひ早い段階から寄り添い、北海道や日本にある中小企業が宇宙事業を始め、色々なビジネスでこれからも活躍できるようになってほしいです。

牧野氏:
平らで広い場所があるのは日本で北海道だけです。スペースポートや新しい宇宙をベースとして日本の宇宙産業や観光の一番とんがった場所になってほしいと思います。

北海道宇宙サミット2022全編
https://www.youtube.com/watch?v=tlT_RPJ6AUQ&t=133s

HOSPO整備へふるさと納税募集中

大樹町、SPACE COTAN株式会社は、HOSPO施設の拡充のため企業版ふるさと納税や、個人版ふるさと納税を募集しております。
「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョンに共感いただける皆様のご協力をお待ちしております!

〈ふるさと納税詳細〉https://www.town.taiki.hokkaido.jp/soshiki/kikaku/uchu/hokkaidospaceport.html
〈ガバメントクラウドファンディング〉
https://camp-fire.jp/projects/view/637366?list=search_result_projects_popular

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?