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日帰り温浴施設が被災地で果たす大きな役割を知ってもらいたい

元旦に能登半島を襲った大地震。家を失った被災者の皆さんの支援に大きな役割を果たした施設の1つに、日帰り温浴施設があります。そうした施設の中には休憩スペースや食事スペースがあるところもあり、ボランティアで被災者支援にあたりました。それらの施設の被災者支援に対しては災害救助法が適用されて自治体から補填されることになりますが、初動において無料でお風呂を提供できる温浴施設の存在は貴重です。ところが、こうした日帰り温浴施設には、多くの政策課題があります。

日帰り温浴施設に入ると入湯税を払わされる?

皆さんの中には、日帰り観光で温浴施設を利用したり、近所の温浴施設を利用している方がおられると思います。そうした皆さんの中には、知らない間に入湯税を払っている方がおられるかもしれません。

入湯税の歴史は古く、その導入は1957年に遡ります。観光客が数多く宿泊する温泉地などにおいては、上下水やごみ処理などのコストがかかります。その行政コストを住民だけで賄うのは難しく、それを補う地方自治体の財源として入湯税は導入されました。元々は目的税で、観光振興や公衆衛生のために使われてきましたが、今は一般財源化している面があります。

こうした導入経緯から、入湯税は宿泊客にのみに課されていました。例えば、1泊1万円の温泉旅館に宿泊した場合、標準税率である150円の入湯税が課されることになります。他方、街中の銭湯等は国民生活に不可欠であるから、料金1,000円以下の温浴施設には入湯税を課さないというガイドラインを1978年に旧自治省(総務省の前身)が発出しています。当時の物価水準では宿泊を伴わない温浴施設で1,000円以上の料金になることはありませんでしたので、入湯税を課されることもありませんでした。

ところが、ここ数年の燃料費や人件費の高騰で温浴施設の中には入浴料が1,000円を超えるところが出てきました。背景には、生活衛生法が適用される銭湯に該当しない日帰り温浴施設は、上下水道料金の特例が受けられないこともあります。日帰り温浴施設の運営事業者は、各自治体に対して入浴料が1,000円を超えた場合についても入湯税を課さないよう求めてきましたが、多くの市町村でそのガイドラインを根拠に門前払いを受けてきました。

廃止済みの通知で入湯税が課されていた?

冒頭で能登半島の事例を紹介しましたが、各地の温浴施設は自治体と災害協定を結んでいます。今や銭湯と同様、公共性の高い施設となっています。彼らの要望を聞いた私は2023年、自由民主党に「日帰り温浴施設振興議員連盟(私は幹事長)」を設立し、こうした課題を解決しようと動き出しました。

問題解決の糸口はすぐに見つかりました。議員連盟から総務省に確認したところ、「1,000円以下の入浴施設には入湯税を課さない」という旧自治省の通知は、地方分権一括法が施行された2000年には廃止されていたというのです。多くの自治体が、すでに存在しない通知に基づいて入湯税を課していたことが明らかになったのです。私は議連を通じて、総務省に1978年に出された通知はすでに廃止されていることを地方自治体に周知するよう求めました。こうして出されたのが以下の資料です。

総務省が作成した連絡資料

1,000円前後の入浴料に150円の入湯税が課せられれば、利用者にとって大きな負担になります。現在、温浴施設を運営する事業が各地の自治体に働き掛けを行っています。

災害時の提供されるべき「TKB」

石破茂総理は、自民党総裁選で防災省の設置を最重要公約として掲げました。演説の中で、災害が起きた場合は速やかに被災者に「TKB(トイレ・キッチン・ベットとバス)」が提供される体制を実現しなければならないと繰り返し主張してきました。多くの被災者にお風呂と癒しを提供できる温浴施設の役割は今後ますます大きなものになるでしょう。今後も日帰り温浴施設推進議員連盟をフル稼働させて、石破茂政権と共に被災者に寄り添っていきたいと思います。


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