指の毛を気にしてたら、それは恋だと思う

家を出てから指毛が顔を出しているのに気づく。
でも戻っていたら遅刻してしまう。
指に毛が生えている女と遅刻してくる女、どちらが嫌われるだろうか。
ワクワクと比例してこういうミスにげんなりする。
昨夜の自分、もっと気を遣えよ！と腹が立つ。
遅刻するのはまずいので駅のトイレでなんとかしよう。
彼は視力が良いらしいのできっとバレてしまう。

誰かに可愛く思われたいとか、嫌われたくないとか
なんだかこういう気持ちは久しぶりで自分でも嬉しくなる。
ちゃんと恋ができている気がする。

お弁当だって普段は味見なんてしないけれど心配になってチェックしたし、おかずカップなんて持ってなかったから昨日急いで買いに行った。
普段は唐揚げの下にレタスなんて引かないけど、その為だけに買ってきた。脇役でごめんねレタス。

好きだ好きだと言われて、この人は私の何を好きだと言ってるのだろうと首を傾げながら、まぁ他にいないし歳も歳だし嫌いじゃないし、と付き合ってみたところでやはりそんなものダメで。
相手のために時間を割くのがめんどうになり別れを切り出す。
そんなことばかり繰り返していた。

今回は大丈夫な気がする。
会いたいから会うし、共通点が見つかると嬉しい。
言葉を交わし、手を繋いで歩くのが楽しい。
会う前日にはパックをするし、指の毛を気にする。

結局遅刻もしたし指の毛の処理も出来なかった。
けど、彼の態度は変わらなかったから大丈夫かな。
心の広い人でよかった。
私も彼の鼻毛が出ていても笑って許そう。