犬を飼わなくていい理由

犬、好きですか。
私は好きです。

一回も飼った事はありませんが好きです。
猫も好きなんですが、ここでは犬の話です。

犬、かわいい、もふもふ、とか言ってたら
「欲しいの?」って聞かれました。欲しいけど欲しくない。

世話とかするのきっと大変だし、しっかりしつけないと我が家にたむろするかわいいワラビー達が犬に追いかけられてしまう。退屈して、近所の牛に悪さをするかもしれない。旅行の時、どこに預けるか考えなきゃいけない。獣医さんの所まで車で40分もかかる。

でも一番の理由は、他にある。

犬欲が満たされてるから、わざわざ家で飼わなくてもいいと思ってる。

っていうのも、村に行けば犬が大量にいるんですよ。もちろん全部飼い犬。
1時間で10匹くらい見る。そしてもれなくフレンドリー。
犬って飼い主に似るんですかね。緊張感とか警戒心とか子宮に置き忘れてきたの?ってくらいイージーゴーイングで。

私、子供のとき同じく犬好きの母親に
「急に触ろうとすると犬もびっくりするからね。まずゆっくり手を差出してにおいを嗅がせて、向こうを安心させないと。匂いをかぐのは犬にとって挨拶みたいなもんだから」

って犬と接する心得的なものを(飼ってないけど)とくと教えられて育ったわけです。おかげで警戒心が強い番犬や、誰にでも吠えてくる飼い犬ともうまくやってこれました。

犬って、警戒心強いからね。余所者には懐疑的になるよね。
番犬だって、そりゃ吠えるよね。
って今まで信じて生きてきたけど、こっちの犬、警戒心ゼロ。

なんならこっちが手を差出す前に、初対面から大喜びで飛びついてくる。
こっちが気がつく前に向こうから笑顔で挨拶に来る。
人間が好きなのか、嬉しそうに人に近づいて色んな人に撫でられてる犬。
一匹で気ままに歩いてる放し飼いの犬とか、自然にしっぽ振ってる。

中には周りの事に気を取られすぎてこっちの存在どこ吹く風、っていう犬もいるけど、共通して言えるのはなで放題、愛で放題、触り放題って事です。
犬天国と言ってもいい。

なんでそんなに犬がいるかっていうと、飼い主の人がどこにでも連れてくるから。犬というのは家で鎖につながれてるか家の中にいるもの、というのはここでは常識ではない。

犬というのは飼い主の行く先どこにでも付いてくるもの。

コーヒーを飲みに行く時も、買い物に行くときも、キャンプに行くときも、ドライブに行くときも犬同伴。
おかげで、犬を飼っていない自分も犬に困る事無く過ごせてこれたわけです。

逆に、日本に旅行に行ったときは犬成分が足りなくなって困った。
人口密度で言えば、軽く10倍以上いるわけです。でも犬がいない。
歩いても歩いても見当たらない。人間以外の生き物の姿が無い。
強いて言えば鳩くらい。

都会では散歩の時間に散歩コースに行かないと犬がいないのだ。
考えてみれば当たり前である。でも寂しい。

ああ犬…もふもふ…ふかふか…もさもさ…

そんな風に心の中でつぶやいてたら、ふいに飛び込んできた。

もふもふ!

いた。かばんに小さくくっついてた。もふもふの…狸、かな?

続いてかばんに付属してる人間を見る。
かばんをしょった後ろ姿、服装、髪型。どう見ても男子高校生だった。

もういちど、狸と男子高校生を見比べる。
狸が可愛い。つぶらな瞳。もふもふの毛並み。

わかるよ。通学かばんにつけちゃう気持ち、今なら分かるよ。
君も、もふもふを追い求めてきたんだろう?
その彼の隣で話してる二人の女子高校生のかばんにも、くっついてた。
熊だ。熊のマスコットだ。

そういえば、オーストラリアでぬいぐるみつけてる人見た事無かったな、とふと思った。ちょっと車走らせたら、コアラとかいるからかな。
犬も、ワラビーも、馬も、牛も、アルパカも、羊もいる。

かばんにぬいぐるみはいない。

もふもふ成分が足りてる国では、きっと必要ないのだ。

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