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沼津の鰻

特に養殖しているわけでもないのに、なぜか鰻が有名な沼津の話。
実食編。

去年の年末のこと。

コロナ禍の中、遠出が憚られる世の中ではあったが、たまたま平日に休みがもらえたので1泊程度なら罰は当たるまいと、一人旅行に行くことにした。

足尾、草津、熱海など中距離の観光地を考えた結果、海鮮がとにかくおいしいと先輩が言っていたことを思い出したのと、夏に山地に行ったので海に行きたいという理由から沼津あたりが良いのではないかという結論に達した。


そこで沼津に行くにあたって、下調べとして研究室に週一で沼津から来ている社会人ドクターのKさんに話を聞いてみることにした。

沼津に行ったら行くべきところとかってありますか?

Kさんの答えはこうだった。

「沼津に行ったら、是非うなぎを食べていってください。」


??? うなぎ?

浜松ではなくて?

Kさん曰く、沼津のうなぎは日本一と呼ばれており、数多くの名だたる有名店が密集しているうなぎ激戦区なのだという。

その中から二店舗、「うなよし」と「うなしげ」という沼津の中でも老舗中の老舗を紹介してもらった。

そして、いつもお世話になっているので、是非これで食べてきてくださいと英世4人を握らせてくれた。

もちろん、いただけませんと断ったが、いえいえ、せっかく行くのですから僕らの街を楽しんでほしいんですと押し切られてしまった。なんていい人なんだ。。。


さて、沼津駅の東横インに一泊し、早速ウナギを食べに行くことにした。

線路を超えて、仲見世商店街を抜ける。
同じような地方都市にはたびたび足を運んでいるが、他と比べてかなり街に活気がある気がした。若い人も多くて、明るくて元気がある。いい街だとおもう。

さらに新仲見世通りを抜けて、あげつち商店街に踏み込む。

すると、右上から左下に読むうなよしの看板が見えた。

路地裏にひっそりと佇む店口を開けると、かば焼きの香ばしいにおいが広がった。そして白熱灯で薄暗く照らされた店内は土壁に経年変色した木の調度品とといったいかにも昭和の定食屋といった風体の店だった。地元の料理屋にも似た昔ながらの店住まいが心地よかった。

テーブル席に通される。
欲を言えば座敷に胡坐掻いてうなぎを貪りたかったが、上品に戴くうなぎもまた粋というものだろう。

もちろん、うな丼を頼む。

たしか3700円。貰った英世を有効活用させてもらう。

先にお吸い物が出てくる。謎の白い脂肪質のものが沈んでいた。後から知ったのだが、これは「肝吸い」といってうなぎの腸の吸い物らしい。これがうまかった。うなぎの風味がするがさっぱりしていて、うまく言えないけどうまい。

そしてメインのうな丼が出てくる。

ああ、うまい。そもそもうなぎを食べる機会なんてそうそうないので、他と比べてどうこう言える資格はないのだが、やはりこれは美味しいうなぎなのだと思った。

「うなよし」の特徴は脂がのったボリューミーな味わいだという。大の大人が、一杯でおなかいっぱいになるほどのボリュームで大変満足だった。流石、日本一のうなぎだった。



お茶を飲んで店を出た。

うまかった。

年の瀬の風は冷たかったが、とても晴れやかな気分だった。

何かをやり遂げたかのような充実感があった。

何もしていないのに。

これがうなぎの魅力、いや、魔力だろうか。




悪くない気分だ。

毎日は無理でも年に一度くらいはうなぎを食べに行って、

満足できるくらいの人間になりたいなぁって、

そう思った。




今回は終わり。(1400文字)

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