【読書日記】『悪い月が昇る』
5月23日に待望の第4回最恐小説大賞受賞作、海藤文字さんの『悪い月が昇る』が発売されました。
最恐小説大賞は投稿小説サイト「エブリスタ」と竹書房さんのコンテストです。今年ははエイベックスピクチャーズさんも加わったコラボコンテストとして開催されています。
かくいう私、星月渉もこのコンテストの第1回目の受賞者なのですが、手前味噌になってしまうかもしれませんが、なかなか個性的な作品が集まりやすい場所になっているんじゃあないかと、毎年受賞作と受賞者を楽しみにしています。
そんな第4回最恐小説大賞受賞作『悪い月が昇る』を読了したので、早速その感想を。
物語は家族でドライブをしているシーンからはじまります。主人公の正木和也は妻の茜と5歳になる息子の蒼太と車で氷室高原にある別荘地をめざして運転しています。なにやら蒼太には心に深い傷を負う出来事があったようでその回復も見込んで別荘で過ごすことにしたのです。
楽しいはずの家族のドライブのはずなのに、どこだか不穏なのは過去の出来事のせいです。その不穏さとドライブの情景がどことなく映画「シャイニング」の冒頭を連想させて読者の私をますます不穏な気持ちにさせます。
別荘に着き、家族で穏やかに過ごしつつも、それまでの経緯やこの家族に起きた悲痛な出来事がなんだったのかが徐々に明らかになっていきます。そして、和也が熱中症で倒れた時にある少女と出会い、不思議なことがおきるのですが……。
ページをめくり物語を読み進めれば読み進めるほどに、ささやかに感じていた違和感が段々と募っていき、あることを疑いたくなってくるんです。
そのあることとはなんなのか?
それは是非読んで確かめていただきたいと思います。
ある瞬間で私は「ぎゃっ!!」と叫びたくなりました。そこから一気に……。これ以上はネタバレになりそうなので書けません。私がどこで「ぎゃっ!!」となったかはぜひ読みながら探していただきたいです。
それにしても、この物語の主人公の正木和也という人物は本当に妻の茜と息子の蒼太と話をしていて、2人のことをよく見ていて、心を配っているんですよね。
だからこその会話や描写により、必然性のある物語になっていて、それがなんとも切なくて、読後ボーっとしてしまいました。そこがこの作品がホラーの括りではおさまりきらないところではないかなと思います。
私個人としては究極の選択を迫られる物語でもありました。
おすすめです。
また海藤さんは映画レビューのブロガーでもありまして、こちらの映画レビュー読み応え抜群です。私は最近では映画を観に行ってから海藤さんの映画レビューをチェックする習慣ができたくらいです。書籍と同じく超絶おすすめですのでよろしかったらぜひ!
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