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いまさら聞けない!不動産の「登記」ってなに?≪不動産登記の基礎の基礎≫


ほしぞら通信 2023年8月号

 不動産の売買や相続のときに必ず出てくる「登記」という言葉。ここで言う「登記」は「不動産登記」というもので、不動産以外では「法人登記」が有名かと思います。これ以外にも「成年後見登記」や「船舶登記」などほかにもいろいろありますが、今回は「不動産登記」についてお話します。

 法務省のホームページではこのように説明されています。

「不動産登記は,わたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか,所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し,これを一般公開することにより,権利関係などの状況が誰にでもわかるようにし,取引の安全と円滑をはかる役割をはたしています。」(法務省ウェブサイト「不動産登記のABC」より)

 「所有者を記載」することで誰の持ち物かを記録し、それを「一般公開」して「誰にでもわかるように」する(公示)ことで「取引の安全と円滑をはかる役割」をになっているのです。つまり、みんなに対して「この不動産は私のものですよ~」と知らせるためのものです。

 不動産の売買では一般的に所有権移転登記の費用を買主が負担しますが、自分のものだと主張するためのものだから新しい所有者になる買主がその費用を負担するのは当然のことなのです。
 こんなことはなかなかありませんが、例えばある人が自分の不動産をAさんとBさんのふたりに売る契約を同時に結んでしまったとします(二重売買)。この場合、所有権を主張できるのは「先に登記したほう」なのです。とりあえず登記したもの勝ちなのです。
 なので、不動産を購入した場合に「お金を支払ってまで登記しないといけないのか」という疑問を持つ方もいるかもしれませんが、以上のことから登記しないことのリスクがおわかりかと思います。

 その一方で、日本では「不動産の登記には公信力がない」とされています。
 例えば、なにかの事情で実際の所有者はAさんだけど、登記されているのはBさんという不動産があったとします。
 所有者がBさんだという登記情報を信じてこの不動産をCさんが購入した場合、購入者Cさんは保護されないのです。
 つまり、登記簿の情報よりも実際の権利関係が優先されるのです。これが「公信力がない」という意味です。ちょっと衝撃の事実です。

 そうは言ってもCさんが可哀そうすぎるので、AさんとBさんが登記簿上の所有者と実際の所有者が異なっていることをお互いに知っていた場合は、さすがにCさんが保護されます。
 ちなみに、日本以外では不動産の登記が公信力を持つとされるところもあるそうです。

 ところで、実際の所有者と登記上の所有者が違うことがある、ということは「実際の所有権」の移転と、「登記上の所有権」の移転は別扱いということです。
 それが、「契約」と「登記申請」にあたります。実際の所有権の移転が「契約」、登記上の所有権移転が「登記申請」です。
 これらは不動産売買において必ずワンセットで行われます。契約が結ばれて、そこでの約束事(代金の支払い、物件の引渡しなど)が果たされると(実際の)所有権が移転し、そのことを原因として登記上の所有権移転の申請が行われます。
 私たち宅建業者は、この一連の流れを専門家である司法書士(ときには弁護士)とタッグを組んで、慎重に行っているのです。

 最後に、これまたよく聞かれる固定資産税と登記の関係について。
 これは固定資産税は市区町村、登記は法務省(つまり国)の管轄になるので、全く別ものです。
 登記されていなくても実際にそこに固定資産があれば固定資産税は課されます。よくあるのが、建物が登記されていない(未登記)が、固定資産税が課税されているというパターンです。なので、課税明細と登記の内容が一致しないこともよくあります。
 特に田舎の不動産では、長く住んでいることが多いので、建物の増改築があってもその都度登記をしていないことが多いです。
 しかし、買う側からすると所有権を主張する根拠になる訳ですから、売主さん側の負担できちんと登記したうえでの所有権移転が必要になります。

 という訳で、ちょっと難しい話になりましが、なんとなくご理解いただけたでしょうか。法律の話は、おもしろいのですが奥が深く、はまってしまうと抜け出せません。

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