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母を想って、電波

2DKの古いアパート たった6畳の秘密基地の壁越しに あなたの囁きが聴こえる 「天使の囀りが鳴っているの!」 それはね、となりの畑のカエルの鳴き声だよ 「悪魔の叫び声が響いてるの!」 それはね、病気の人を救う車のサイレンだよ 「宇宙に思考を覗かれてるの!」 それはね、地面を打ちつける雨の音だよ その色はキケンだから着ないでって あなたが悲しそうに泣くから わたしの大好きなロリィタ服 どうしたらいいか わからなくて あなたはイエス・キリストじゃない あなたはせかいの救

    • 空想児童遊園

      やすみ時間が退屈で わたしだけの公園に遊びにいく 桜とアメジストと大水青が混じって 科学的アイスみたいな空 サテン・レースの雲がかかる 子どものころの夢を覚えてる? 目をつむれば会えたお友だちはもういない 銀色のさかなが 空気のなかを泳いでいる 飴みたいなビー玉をからから転がす 幽霊がのったブランコをゆらゆら揺らす 透きとおる砂に秘密の暗号をさらさら描く 昔ここにいた あなたの肌みたい まちがえた朝顔がひとつ 震えながら咲いて 孵化した蛍がその花を抱きしめた 太陽にはか

      • 最悪だった新宿と、変わらない日々

        最近、とあることがきっかけで自殺未遂をした。 縄に首をかけて意識消失したはずが、なぜかまだ生きていた。おそらく、生存本能で無意識に足掻いて踏み台を戻してしまった。 朦朧とした意識で気がつけば新幹線に乗っていた。平日の真昼間。切符は静岡行き。この精神状態で、静岡に着けば向かう先はたったひとつ。 そう、樹海。 なんとなく嫌な感じがして、東京行きに進路を変えた。急いでインターネットの友人たちに助けを求めると、何人かが会ってくれることになった。 新宿駅。幽霊みたいに青白い空。

        • 虚しさをかかえて

          虚しい。さみしい。 中学生あたり、自分はふつうの家族愛を知らないと自覚した日から、その感情はずっとあった。 絵を描いたり動画を撮ったり、何かを表現している時間だけはそれを忘れることができた。 十六歳になって、表現以外に虚しさを埋めてくれるもうひとつの要素が現れた。 恋人。 はじめて他人と強く愛し合った(と、当時は感じていた)経験。それは恒常的な虚しさを吹き飛ばすほど衝撃的で、忘れられないものだった。 その人とも酷い別れ方をしたけど、 とにかくそこから私は愛の虜になっ

        母を想って、電波

        マガジン

        • 詩集
          2本
        • 考えごとや日記
          3本
        • 夢日記_自動筆記_感覚
          1本

        記事

          時空間とカラースプレー (自動筆記/速度5)

          桃が食べたい。桃の皮にすりすりしたいしたい。感覚的世界の諸芸術についての話をしよう。それは水だったり森だったりあるいは色彩的な何かだったりする。大抵は輪郭がなくて時空間に溶ける滲みのようなものだ。そう。私たちはそれを求めている。いつか人はなくなる。人が人である、ひとつのまとまりであるのは最初だけでそれは時間の経過とともにバラバラになっていく。時間が単性の直線軸であるのに対して精神は複数性のものになって座標状にバラバラに配置されていく。本来なら時間も点在であるべきだ。直線が嫌い

          時空間とカラースプレー (自動筆記/速度5)

          普通か特別になりたかった

          普通になりたかった。 街でお淑やかな女子大生が友人と談笑している様子を見ると、胸が苦しくなる。 あるいは、アバンギャルドな格好をして夢中に大作をつくる同期を見たときも。 自分とは真逆の普通。自分とは真逆の特別。 私は普通になるための戦い、自分を特別だと証明する戦い、どちらにも負けてしまった。 幼い頃から周りに馴染めなかった。 人見知りで挨拶もろくにできない子だった。 幼稚園に行くのがつらかった。でも、みんな通っているから通った。ひとりで絵本を読んだり、絵を描いて過ごした。

          普通か特別になりたかった