#LIVE 余裕

どうしよ。行くって言っちゃった。

彼は
後ほど!今日スタッフだからさ!
後片付けしてくる!

と元気良く
Live会場の方に
戻って行った。

ただぼーっと立っていたら
新婚夫婦やら
他の色んな先輩たちが

さぁ!行くよー!って
手を引っ張って
二次会会場に連れて行ってくれた。

カウンター7席に
6人くらい座れるボックス席が3つの
バンドサークルの先輩が営む
Barへとやってきた。

本当は
打ち上げは大好き。

若い先輩も
年配の先輩も
新しく入った後輩も
みんな大好きなのだけれど

けど今はちょっと
行きたくない。

またフリーの人を
隣に座らせるのが好きじゃない。

その度に
明るくて話しやすい私が
その人の相手をする。

きっと今日も誰かが
私を心配して
2人きりにする
努力をしてくれてしまう。

その状況に
答えられない自分が申し訳ない。

だから今日は
女性陣の固まっている方に
率先して行った。

そしたら
彼女さんも来ていて
空いているのが
彼女さんの隣しかなかった。

何も悪いことはしていないのに
私は緊張していた。

お疲れ様ー!!何飲む?
と彼女さんが
私に聞いてくれた。

びっくりした。
きっと色んな場面で
私のこと見ないようにしていたのに。

あなたの彼氏のこと
好きな私に
自ら声をかけてくれた。

これって余裕っていうのかな。
なんだか虚しくなってきた。

今日はどこに座っても
悲しくて虚しい気持ちに
なるかもしれない。

色んなことを考えすぎて
なんだかヤケになってきた。

私は
なんの勝負かわからないけど
勝負に出た。

テキーラショットで!

全員がこっちをみて笑った。
そのおかげで
少しだけ気分が良くなった。

よっ!エンターテイナー!!!
チェイサーいる?
とマスターが聞いてきたので

テキーラサンライズで!
と答えたら
またみんなが注目して笑った。

クラブでいつも飲んでいるから
別に大したことはない。
私を持ち帰りたい野獣達がよく奢ってくれる。

気分が上がった私は
席に座らずに
色んな人の前に行って

明るくて話しやすい私で
たくさんの人と
話をしていた。

いつの間にか座った席は
年配の先輩が多い席で
私は大御所のおじさま方に
チヤホヤされていた。

お前のLiveは
本当に楽しそうだ!!
見ているだけで笑顔になる。

お前はさ
笑顔が本当にかわいい!

笑顔がさ癒しだっきゃ!
10年若ければ狙ったのに!

なんて言われながら嬉しくって
だんだん顔も態度も溶けていった。

いつまでこんなふうに
していられるかわからないけど

この年配の先輩たちみたいに
仕事して家庭を持って
そして趣味を最大限楽しむ

こんな大人のなり方も
悪くないなと
思い始めていた。

先輩達のおかげで
プロにならなかったこと
目指そうとしなかった自分を

かわいそうに思う気持ちが
少しずつ薄くなってきていた。

うん、ほんとさ!
こんなに楽しそうに
Liveする人初めてみた。

うれしい!ありがとうございます!
と態度も顔も溶けた私が振り返ると
なんと彼だった。

やばい。いつの間にきたのだろう。
こんな顔見られちゃった。
恥ずかしくなって
お酒で赤い顔が更に赤くなった。

空いていなかった席は
おじさん達が勝手に席を空けた。
やっぱりおじさん達も
彼と話したいのだろう。

そして彼はおじさん達を
かき分けて
私の隣に座った。

はい!乾杯!!と
2つ持っていたテキーラを
1つ渡してきた。

言われるがままに
5杯目のテキーラを
流し込んだ。

ドキドキを抑えるために
ちょっと周りを見渡したら
やっぱり彼女さんが
こっちをみていた。

私は余裕が無いのを隠して
座ったのは私じゃなく彼だと
余裕な顔をして
目を合わせないようにした。

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