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アジア現地採用インタビュー 【シンガポール→EU編】

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ししもん紹介

今回のアジア現地採用は特別編!

シンガポール現地採用からEU市民権の取得を目指してオランダ移住生活をはじめたししもんです。

ししもんのメイン発信はブログ。日本での社畜時代の経験や、シンガポール現地採用で感じたこと、アジア旅行記なんかを綴っています。

さらに最近YouTuberデビューしました。


YouTubeではオランダに移住についてや日々の暮らしの中で思うことを、オランダの風景とともに好評発信中。

日本で5年働く。そしてうつ病→退職

 日本は何を成し遂げたかだけじゃなく、どうやって成し遂げたかを重要視する社会だ。例えば客先や先輩に業務説明を受けている時に、メモを取らないのは話を聴いていないのと同義で扱われる。マルチタスクが出来ず、メモを取ると理解力がほとんど枯渇するとしても「ちゃんと聴いてるアピール」が必要なのだ。
 ガラケーで録音してるので大丈夫ですとか言った日には、一瞬で職場から疎外されてしまうだろう。
 僕が社会から落ちこぼれたのは新卒で就職してからだ。学校では、授業に集中できなくても、ノート取れなくても、教室にいるのがつらくて授業サボっても、試験前に教科書を丸暗記すればなんとかなった。これが仕事となると全く成り立たない。
 上司やお客さんに複数の指示を受けると最後しか覚えられない。話を聞きながらメモを取れない。マルチタスクが出来ないから作業中に受けた指示が頭に残らない。過集中を駆使して重めの作業を終わらせるとしばらくボーっとしてしまう。ボーっとなっている時に急ぎの作業をすると同じミスを繰り返す。繁忙期で忙しい同僚・先輩に気が回らず、自分の仕事が終わったらさっさと帰ってしまう。雑音から必要な声を拾えず飲み会で会話ができない。それに加え空気も読めないから上司にビール注ぐタイミングもわからない。
 その後5年間で不安神経症→過敏性腸症→不眠症→うつ病と順調にコマを進め、僕は日本社会から脱落した。

集団における同調圧力や、画一的で生産性より協調性を重視する社会生活から脱落したししもん。

退職後はFXと株式投資で臨時収入を得ながら、アジア諸国を放浪。たどり着いたシンガポールで当時のワーキングホリデービザを取得し、ししもんはゲストハウスでアルバイトを開始します。現地で就職活動をして、現地採用として5年ほど働きました。

シンガポールで5年暮らす。そしてレイオフに

私はTwitterでししもんのつぶやきを見て即DMしました。当時、インターネットで海外転職情報を集めまくっていた私は、現地採用の情報発信しているSNSやブログにかたっぱしかた問い合わせ。そして「あなたの能力を評価してくれる企業なんてない」とバッサリ断られまくって落ち込む日々を過ごしていたところ、「現地採用で内定もらえるよう、できることがあれば手伝うよ」と手を差し伸べてくれたのがししもんで。

彼の転職サポートに恵まれて、今の私があります。あのとき、勇気を出してししもんにDMを送っていなければ、日本を出られず底辺フリーターからも抜け出せられないままだったかもしれません。

シンガポールで暮らしていた頃のししもんは「自称ダラリーマン」。
いかに仕事を効率よく進めて、空き時間をつくるかとか、平日夜や休日は趣味にあけくれるとか。
日本での働き方とは全く異なる、ストレスを最低限に、そして幸福度を最大限にするQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を体現していました。

 シンガポール移住のメリットを一言で表すならゆとりをもって働ける環境だ。「英語が通じる」「安全」「契約社会」「タックスヘイブン」みたいなありきたりなメリットも、全ては働きやすさにつながってくる。
 確かに10世帯に1世帯が億万長者で、その割合は世界随一だ。でも僕からすれば、じゃあ残りの9世帯はどうなのよってわけ。
 実際はシンガポールにも東南アジア的なのんびりした暮らしを守っている人がたくさんいる。日本の労働市場で「熱意ある社員」は6%しかいないらしいけど、実はシンガポールにも9%しかいない。シンガポール人も大部分は仕事にやる気なんて無いんだな。
 日本に足りないのは時間と心のゆとりだと思う。長時間労働はもちろんだけど、何かにつけミスを許さない締め付けが息苦しい。
 例えば、日本だと時給制のコンビニバイトでさえ「完璧な接客」を求められる。ところがシンガポールのコンビニ店員はケータイいじりながらレジカウンターで飯食ったりしてる。それでもレジ打ちに支障ないので誰も文句を言わないし、自分が働く立場になった時もそのレベルで適当にやってれば良いのだ。 清々しいことこの上ない。
 もちろん、シンガポール政府が求めているのはハイスペックで高給取りの外国人だ。だけど、そこまで優秀じゃない僕のようなグダグダ人材も、こういうゆとりを持って生きている現地の人とデスクを並べて働けている。
 この余裕のある労働環境に関しては、シンガポールに移住して本当に良かったと思う。 そして一緒に働いてくれるシンガポールの人たちに心の底から感謝している。

シンガポール撤退後、オランダ移住を決意

私がシンガポールを離れたのは2017年。それからも、ししもんとはメッセージのやりとりをしたり、旅先で再会したりと、ぽつぽつ交友関係は続いていました。

シンガポールでレイオフ(一時解雇)されたとか、貯金もできたし思いきって会社勤めからフリーランスに転向するとか、アジア諸国をぶらぶらしながらノマドワークもいいかなとか。

あとはシンガポール時代に一緒にビールを飲みながら話していたのは、老後の話。シンガポールの保険は条件がよさそう、今は自分で稼いで生活できてるからいいけど将来もしも体が動かなくなったときは誰になにを頼めばいいのかとか。

独身アラサー世代のよくある悩みなんですが、私とししもんの場合は日本の国民保険や年金を頼れないので、とにかく自力で考えていくしかない。

あれこれと悩んだ結果、私は日本へ戻って転職したけどやっぱり日本社会ムリ! と結論を出して、またしてもアジア現地採用へ。
そしてししもんはフリーランスの仕事が順調で、そのままアジア放浪のノマドワーカーへ。だけどそれもなんだか違うと感じた様子。

 シンガポールの米系企業をクビになり、住所不定の放浪生活を始めてから1年が経とうとしている。情報の整理が苦手すぎて、名古屋に行きたいのに東京着の飛行機を買ってしまうようなミスは日常茶飯事ながら、まぁそういうのが旅の醍醐味でもあるわけで、それなりに楽しい毎日だ。
 でも、このままずっと、どこにも住まず、固定の人間関係を一切築かず、一生根無し草を続けるのか。健康保険や年金制度みたいな国家サービスに頼れない状態で、このまま歳をとったらどうなってしまうのか。
 最近そういう不安がふと頭をもたげる。思えばシンガポールはとても居心地の良い国だった。そこで出会った人たちも、僕の至らぬ点を込み込みで親しくしてくれた。
 ビザが厳しいシンガポールにフリーランスじゃ住めないけど、地球のどこかに安住の地を探す努力をすべきなんじゃないか。
 オランダだな(=^・・^=)♬
(中略)
 僕が生きにくさを感じる日本は、この広い世界で最も「曖昧で間接的な」言語文化を持つ国なのだ。
 と、なると。日本で生き難い僕にとって安住の地たり得るのは、このグラフで日本から一番離れた国の可能性が高い。それは前提からハッキリと説明する言語文化を持つ、オランダやドイツなのでは。そしてここ数年、ドイツよりフリーランスでビザが取りやすいと言われているのが、オランダなのである。

いきなりのEU移住計画。
ゆるっとアジア放浪生活が気に入っていると思っていたのに、ししもんのこの決断には驚きました。

さらに驚いたのが、生活準備にかかった初期費用。最初の3ヶ月でおよそ200万円!
ビザ手続きの費用、現地までの航空券、家を借りる敷金礼金、物価が高い毎日の食事など。高い!

アジア諸国みたいにシェアハウスで家賃を抑えればいいんじゃない? とチャットで聞いたところ、オランダのフリーランスビザの要件に「自分の名義で部屋を借りること」とあるので、いつもの手段は使えないらしいです。むむむ。

アジアでノマドワークをするなら月10万円も稼げば十分なのに、 EU市民権つまりオランダで永住権を取得するために、最低でも毎月30万円は収入を確保しないと生活できないそうです。

フリーランスビザ取得そのものは簡単。だけどそこから稼ぎ続けて5年間生活を継続することがめちゃくちゃ大変そうなんだと、ししもんがチャットで教えてくれました。
快適で大好きなアジア諸国からなんでいきなりヨーロッパ?

シンガポール現地採用も、アジアノマドワーカーの十分魅力的なのに。
なんでいきなりヨーロッパなの? チャットでそう質問したら、YouTubeに動画アップしたから詳しく知りたければそっちをみてみて、とのこと。はい、ポチっとな。

 アジア諸国で毎日だらだらビール飲みながら暮らしているとここの人たちはだらだらでいいな、毎日楽しそう、って思うんですけど、実は彼らも安い賃金で働いて生活を維持するのはそれなりに大変なはず。
 でもそれって日本人であるという、ある種のアジアにおける特権階級みたいな感覚で、新興国の人たちを無意識に下に見てしまうというか。
 日本人だというだけで「日本ていい国だよね、日本人てすごいよね」と称賛される。
 そして現地の人々を、気楽でいいな、何の悩みもないんだろうな、なんて目で見てしまう。この感覚に慣れてしまっている自分に気づいてしまったんです。
 それならいっそ、日本人だからと賞賛されることもない、だらだら暮らすこともリラックスもできない白人社会で生活してみようかと。
 世界中の人を見る感覚が一段間深くなるんじゃないかと思ってます。

正直、私にはピンとこない感覚なのでよくわからない。だけどダラリーマンからひとり起業家へ転身をはかったのは、出会った頃のししもんとは別人みたいに聞こえます。

自分の話をすると、私は香港、シンガポール、カナダ、そして中国での海外就労経験があるけど、今のところ中国が好きで。
もし中国を離れなければいけなくなったら、次はどこのアジアに住もうかとワクワクするくらい。

なぜかというと、私はししもん式ダラリーマンスタイルが最適だと思うからなんです。仕事は就労ビザを発行してもらうための手段と最低限の生活費、あとはワクワクする副業や投資でまかなえるのが理想。

そんな私と対照的にししもんは、会社勤めを離脱してフリーランスとして自分の技術と裁量で仕事をすることに楽しさややりがいを見つけたのかな、と感じました。だから節約第一でコスパ重視だったししもんが、オランダ移住なんて大きな決断をしたんじゃないかと。
オランダに移住を決めてよかったこと

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 各国の人々が、どうやって自分の考えを表現するかを示したこのグラフ。縦軸はコンテクストの濃淡。上に行くほど共通前提に頼らず、相手が何も知らない体で話す文化。それに対して下に行くと、相手が自分と同じ常識や基本的な知識を持っていることを前提に、情報や感情の伝達を端折る文化。「それヤバい」と言えば「ヒドい」意味なのか「スゴい」意味なのか、その場の雰囲気で判断しなくてはいけない。日本はダントツで下に位置する。
 横軸は、相手を否定する内容を、どうやって伝えるか。左に行くほど「お前はここが全然ダメ!」と直接的に指摘して良い文化。右に行くほど「それってチョイ微妙じゃね?」みたいしか言ってくれないのに、陰で悪口言われたりあからさまに不機嫌な態度で示される日本的な文化。

このデータによると、日本語とオランダ語は見事に対極!

私とししもんは意見が合わないこともよくあるんですが、この「空気読めてなんぼ」の日本社会の習慣にウンザリしたことだけはとても共感していました。

言ってくれればわかるのにね、なんで言ってくれないうえに怒られないといけないんだろう。聞き返しでもしたらもっと怒られるし。
オランダ語やオランダ社会では、ダメなところとか改善点とかをはっきり言っても人間関係には影響しないという文化らしい。
いいな、オランダ! 私もダメだしされて改善したいところだらけなものでして。

さらに、ししもんに教えてもらったオランダ移住を決めた理由。
それは老後に安楽死を選択できる国だから。

 もうひとつ、オランダが魅力的な理由が、医療安楽死だ。
 オランダでは回復の見込みがない病気にかかったり、痛みなど耐え難い苦痛を緩和できない状態になった場合、医師による安楽死が合法化されている。
 大麻も売春も安楽死も合法! どうせ直感的、刹那的、衝動的に決めてるんじゃないかと思うけど、そこはハッキリと前提から説明する言語文化を持つ国、オランダ。徹底的な議論の末にこうなっているっぽい。
 老後の心配のほとんどは「なかなか死ねない」ってヤツだ。自活できない健康状態に陥ったら、予め示しておいた意向に基づき、それ以上苦しまず誰にも迷惑かけずにこの世を去れる。2000万円の老後費用を貯める必要もない。
 これは結婚も子育てもする気がない僕みたいなグータリストにとって、老後の不安に対する完全かつ最終的な解決策なのではないだろうか。

シンガポールでビールを飲みながらぐだぐだと話していた、老後問題のファイナルアンサーがここに! 驚きです。
住みたい国とか次はどこのアジアにしようとか、私がぼんやり空想にふけっているうちに、ししもんは将来設計を考えはじめたんだな。

オランダの安楽死に関するドキュメンタリーを見たことも安楽死を考えるきっかけになったとか。
認知症だと診断された女性が、自分の意志があるうちに人生の終着点を決めたいと安楽死を選ぶ。女性は家族と最後の夕食をとって、そのまま自宅のソファで医師の処置を受けて最期をとげるというストーリーだそう。

おわりに

「今の生活を5年続けて、オランダ永住権とEU市民権の取得を目指す」チャットでそう話すししもんは、私が知っているシンガポールのダラリーマン時代の面影はありません。

アジア現地採用は比較的簡単な海外転職の手段ではあるけど、じゃあその後はどうするの? というキャリアパスが見えてこないです。今回のししもんのお話は、アジア現地採用からどうやって変化や成長を遂げていくか、そのひとつの見本として素晴らしいものだと思っています。

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