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中国式交渉力を前にして、私は圧倒的無力でした

スマートにメンツを立てる力
何度しつこくされようが断る力
ケンカをコミュニケーションとしてやり抜く力

海外生活ならびに中国生活では、普段まったく必要としない力を求められ、ヘンなところばかりメキメキとたくましくなったりします。
今回は、また新たな能力が私の中で目覚めたというお話です。

それは「交渉力」

私はコミュ力には自信がなくて、むしろ自信がないからこそ「うまくなりたい」と火がついてYouTube見たり本読んだり、そして実践して、失敗して自信がなくなり、を繰り返す毎日。

交渉力=おしゃべり上手な人、話すのが得意な人
だと思っていたので、とにかく効果的な会話術とか、傾聴で相手のニーズを探り当てる、みたいなことばかり考えていました。

コミュ力はいまいちだけど、私はこの交渉力には「案外イケてるかも…」というささやかな根拠がありました。転職です。

うまく会話して、いかに自分に好都合の転職条件を相手から引き出せるか。給料をはじめとする待遇を、いけるところまで引き上げる。そして折り合いがつかなければ断ればいいだけ。

直近ではシンガポール、日本、中国深センと、転職し続けるたびに条件は良くなり、転職における交渉はだいたいうまくいってよかったな、というのが体感です。

でも全然違ったんですよね。転職できる能力と交渉力は。
圧倒的交渉力は特殊スキルだと判明しました。

今回、はじめての店舗契約のために旦那・ヤンくんと大家さんのもとを訪ねました。
新規契約ではなく、引き継ぎの再契約であるため、前の契約主からたくさんアドバイスをもらっていたので、コレならイケるだろう、と甘く考えていました。

この場合の「イケる」とは、自分たちの目標価格(約5%オフ)になるまで交渉して家賃を値下げしてもらうこと。

でも全然ダメだった。ビタ一文まからなかった。

「それはそうでしょうよ。あなたたちに値下げすることで得られる相手方のメリットがひとつもないもの」

とサラッと言われたのが、前の契約主ことXさん。このXさんこそが、圧倒的交渉力のスキルマスターすごい、と内心勝手に師と仰ぐ御方です。

師匠・Xさんによると、中国式交渉術は、よく話す、よく飲む、よく贈る、の順番が大切らしい。
そういえば、中国の贈り物文化は重要だった。経験済みでも頭の中でリンクできなければ意味がない。

「よく話したら仲良くなるし、仲良くなって飲みにいったらみんな楽しい。だんだん仲良くなっていくなかで、《こいつの頼みならしょうがねえな》と思ってもらえたら、メリット・デメリットなんてひとっ飛びできるわけです」
ただし個人差があります、とXさんは笑っていました。

私がこれまで経験してきた転職の交渉とは全く別物だと、Xさんのアドバイスを聞いてやっと気づいたのです。

転職の交渉って、振り返ってみれば「私が有利な上での交渉」ばかりだったんですよね。
希望の条件が合わなければやめればいいだけで、交渉決裂してもいいと思っていたので。

これってつまり、八百屋で大根買うときも電器屋でテレビ買うときも、なんか一緒だったんだなあ、とも感じました。
消費者は買うor買わないの選択をするだけなので、有利な交渉なのは当然。嫌なら買わなければいいだけ。

しかし真の交渉とは、同等の立場もしくは不利な立場から始まって、最終的に自分の希望をどれだけ通せるか、ということだと師匠の言葉を噛みしめながら考えました。
そして「自分が有利じゃないゼロからスタート真の交渉」を前にして私は無力でした。ささやかな自信なんて虚像はチリと化しました。

そのために大事なことは、よく話してよく聞いて、信頼関係を築いて、なによりそのひとつひとつを全部楽しんでやれるかどうかだと。

例えになってないですが、特殊スキルの総合最大出力みたいな、全方向に絶妙な力加減が必要なんだと、師匠のアドバイスを噛みしめるうちに思いました。

いやあ、交渉力すごい! めっちゃ大事!

驚きのあまり語彙消失で、自分の現在地を思い知らされました。ぜんぜん交渉できない。
今回の件をふまえて、ヤンくんとよく話し合いました。「次はもっと交渉上手になろうね」と。


というわけで、交渉失敗しまくりながらも店舗契約を済ませて。
深セン南山区で素人がバー経営をはじめますよ!

2021年の新たな挑戦第一弾は、中国で店舗経営です。
うまくいくのかどうか全然わかりませんが、ワクワクしかありません。

中国式交渉力を体得するためにも、挑戦しつづける日々が楽しみでたまりません。
Noteでも関連企画を準備中なので、こうご期待です!

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