ほしのたねm

文芸創作サークル「ほしのたね」のミニブログ。毎月のお題に沿ったメンバーの作品(掌編、イ…

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文芸創作サークル「ほしのたね」のミニブログ。毎月のお題に沿ったメンバーの作品(掌編、イラスト、写真、朗読)を公開します。

マガジン

  • ほしのたねm9月号

    今月のお題は「月」。9月中に投稿された作品を順次アップしていきます!

  • ほしのたねm7月号

    今月のお題は「海」。 7月1日から31日まで、投稿された作品を順次アップしていきます!

  • ほしのたねm6月号

    今月のお題は「虹」。 6月1日から30日まで、投稿された作品を順次アップしていきます!

記事一覧

ほしのたねm9月号

告知が遅くなりましたが、9月号、はじまっております! 今月のテーマは「月」。9月といえば「中秋の名月」。それぞれ個性的な月を空にあげてくださいね! (ほしお)

月竜 橙雫れき

月は苦手で、とつぶやいた鉱石竜に、不死竜の少年は驚いて問いただします。 どうして? 月は何も、こわいことしないよ。 いいえ、別に月が怖いのではないのです。あなた…

月に傷痕

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月に傷痕 この世界は、たまごのようだ。そう、きみは思ったことがあるか。弾けそうな青空という膜を、つまようじでつつけば、世界は壊れる。そんなことを、きみは思ったこ…

海  長谷潤子

寄せては返すまにまに 引いては押したもろもろ 豚は豚でも地を這う豚より あの輝きに埋もれて泳ぐ 海の豚になりたい 何処かの波間を漂う星を そっと慕って幾星霜 海原を往…

虹  長谷潤子

夜が明けて 喪が明けた お空に寝そべるあの蛇は もう長いこと 隠れて生きてきた ただ 居場所が 想いの届く魔法が ほしかっただけなのです すると 蛇の手を掴んだら 奇…

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7月のお題「海」

7月になりました。 ほしのたねm、7月号のテーマは「海」です。夏の思い出話でも、深海に住むイカの話でも、竜宮城の話でも。海にまつわる創作ならなんでもOKです。 (…

泣けてきちゃった

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わたしの中には海があって たぶんわたしは海からやってきた 海を見るたび なつかしさに泣きたくなる この涙だって 海の一部だ 隣では母が眠っている 泣いている…

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プリズム

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少年は虹を見たことがなかった。彼の村では、少年が前世で罪を犯したからだという。彼の村ではみな虹を見たことがあるのに、少年だけ虹を見られなかった。そんなある日、雨…

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透竜 橙雫れき

透竜だと示されたそれを見て、不死竜の少年は怪訝に首を傾げました。 透竜は、透明ではないの? 素朴な疑問に、鉱石竜はおだやかに微笑みます。 いいえ、透竜はその一生を…

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6月のお題「虹」

こんにちは、ほしおです。6月からスタートする「ほしのたねm」。毎月、前月の最後にわたしがお題を出し、メンバーがお題に沿った作品を投稿。ひと月のあいだに順番に掲載…

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アイロン

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彼のぱりっとして糊のきいたワイシャツを見ていると、私はいつも、鼻唄をうたう母の背中を思い出す。真っ白く丹念に洗い上げた父のシャツをアイロン台に乗せたとき、彼女は…

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はじめまして「ほしのたねm」です!

はじめまして。「ほしのたねm」です! 「ほしのたね」はフェリス女学院大学の在校生と卒業生による文芸サークル。小説家ほしおさなえ先生の指導のもと、作品発表のための…

ほしのたねm9月号

告知が遅くなりましたが、9月号、はじまっております!

今月のテーマは「月」。9月といえば「中秋の名月」。それぞれ個性的な月を空にあげてくださいね!

(ほしお)

月竜 橙雫れき

月は苦手で、とつぶやいた鉱石竜に、不死竜の少年は驚いて問いただします。

どうして? 月は何も、こわいことしないよ。
いいえ、別に月が怖いのではないのです。あなたが生まれる前でしょうから、きっと知らないでしょうけど。

そうして鉱石竜は、ため息をついて語ります。
昔、人食いの月竜がいたのです。同じ竜族にはさすがに手を出すやつではありませんでしたが、他の竜の主だろうと構わず手を出す節操のないやつで。

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月に傷痕

長尾早苗

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月に傷痕

この世界は、たまごのようだ。そう、きみは思ったことがあるか。弾けそうな青空という膜を、つまようじでつつけば、世界は壊れる。そんなことを、きみは思ったことはないだろうか。赤信号はすてきだ。青空を見上げることをゆるしてくれている。そんなとき、月と目が合った。真昼の月は、白く満ちていた。こっちを見ている。わたしはバッグの中から、先のとがったボールペンを取り出し、真昼の月を刺した。世界は壊れな

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海  長谷潤子

海  長谷潤子

寄せては返すまにまに
引いては押したもろもろ
豚は豚でも地を這う豚より
あの輝きに埋もれて泳ぐ
海の豚になりたい
何処かの波間を漂う星を
そっと慕って幾星霜
海原を往く
青へかえるな

虹  長谷潤子

夜が明けて 喪が明けた
お空に寝そべるあの蛇は
もう長いこと 隠れて生きてきた
ただ 居場所が
想いの届く魔法が
ほしかっただけなのです
すると 蛇の手を掴んだら
奇跡は放物線を描いて
あの子とあの子にキスをした
同じものでも 愛し合えるよ

7月のお題「海」

7月になりました。

ほしのたねm、7月号のテーマは「海」です。夏の思い出話でも、深海に住むイカの話でも、竜宮城の話でも。海にまつわる創作ならなんでもOKです。

(ほしお)

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わたしの中には海があって

たぶんわたしは海からやってきた

海を見るたび

なつかしさに泣きたくなる

この涙だって

海の一部だ



隣では母が眠っている

泣いているように見えた

母も海を見ているのだろうか

わたしの知らない視点で

わたしの知らない少女として

彼女とわたしは手をつなぐ

ふたりで泣き笑いして

砂浜を

蹴った

プリズム

長尾早苗

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少年は虹を見たことがなかった。彼の村では、少年が前世で罪を犯したからだという。彼の村ではみな虹を見たことがあるのに、少年だけ虹を見られなかった。そんなある日、雨が降り続けたある日、少年は踊り始めた。泣きながら踊った。舞うということ、それ自体が少年にとって必要なものだった。そう気づいたのだ。かくして、少年は雨を上がらせ、みなの崇める対象となった。ひとびとは少年を神と呼んだ。神殿に昇ったとき、少年には

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透竜 橙雫れき

透竜だと示されたそれを見て、不死竜の少年は怪訝に首を傾げました。
透竜は、透明ではないの? 素朴な疑問に、鉱石竜はおだやかに微笑みます。
いいえ、透竜はその一生をかけて色を飲み、その身を色付け、自らを失くして逝くのです。だから最期に、ああして鮮やかな色を出す。

鉱石竜の言葉に、光の帯を見つめていた不死竜の少年は目を輝かせました。
納得したように、そうか、だから虹は消えるんだ。
飲んだ色を吐き出し

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6月のお題「虹」

こんにちは、ほしおです。6月からスタートする「ほしのたねm」。毎月、前月の最後にわたしがお題を出し、メンバーがお題に沿った作品を投稿。ひと月のあいだに順番に掲載されていきます。

さて、6月のお題は、「虹」。

雨のあと空にかかる虹。その不思議な姿や美しさ、儚さから、古来より神話にもよく登場する存在です。形から「弓」「橋」「アーチ」にたとえられることが多いですが、中国では蛇や龍の仲間とみなされ、凶

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彼のぱりっとして糊のきいたワイシャツを見ていると、私はいつも、鼻唄をうたう母の背中を思い出す。真っ白く丹念に洗い上げた父のシャツをアイロン台に乗せたとき、彼女は決まって、私が生まれるずっと前に流行ったアイドルの曲にのせながら、熱い鉄を滑らせた。袖も襟も、広い背中も、一本一本、丁寧に皺を伸ばす。あの人の身に着けるものは、私が完璧にしてあげるの。そんな声が聞こえる。記憶の中で微笑む母は、まるで思春期の

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はじめまして「ほしのたねm」です!

はじめまして。「ほしのたねm」です!

「ほしのたね」はフェリス女学院大学の在校生と卒業生による文芸サークル。小説家ほしおさなえ先生の指導のもと、作品発表のための雑誌「文芸創作ほしのたね」を発行しています。所属メンバーは現在38名。活動全体はこちらのサイトをご覧ください。

http://hoshino-tane.jimdo.com

「ほしのたねm」では、毎月ほしお先生からいただいたお題に沿って

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