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「最軽量のマネジメント」は、お花畑のユートピアじゃないのよ | きのう、なに読んだ?

『最軽量のマネジメント』を読んだ。著者は、サイボウズ副社長の山田理さん。サイボウズはグループウェアを開発・提供する会社で、2019年「Asia's Best Workplacesベストカンパニー」に選出された。その組織や制度を作ってきたのが、山田さんだ。

山田さんとはこれまで何度かおしゃべりする機会を頂いてきた。例えばこちら。

他にも「長時間労働の原因は、日本独特の「助け合いの職場文化」にあるのか?」、「チーム経営を考えるシンポジウム」などご一緒させていただいた。毎回、「組織やマネジメントってふつう、こうでしょ」と思ってしまう既成概念を一つずつ、山田さんが丁寧に解きほぐして、ご自分の見解、言葉、行動で検証してるのを教えてもらう。私はすごいなあって感心してばっかり。それが1冊にまとまり、さらに、山田さんがここに至るまでのプロセスが書かれているのが『最軽量のマネジメント』だ。

本書によると、サイボウズでは「『マネージャー』という役割を、より希少価値が高い重要なもの、ではなく、もっと『大衆化』することに挑んで」きたという。一般的に、マネージャーの仕事は多い。山田さんは次の4つを挙げている。
1) プロジェクトマネジメント(目標決定、意思決定、進捗管理、予算管理など)
2) 人材マネジメント(人材育成、採用、モチベーション管理、評価など)
3) 中間管理職としての報告や調整業務
4) プレイイングマネージャーの場合は、担当者としての実務

一人のマネージャーがこれを全部やろうというのは、無理がある。山田さんは、現実を直視した。ザ・リアリズム。そして、「意思決定」に着目する。

会社に成果をもたらすために、マネージャーが持つ最大の役割は『意思決定』。(略)
上層部からの指示と、部下からの情報を踏まえて、何をすべきかを決定する。そして、メンバーに主体的に動いてもらう。そのためには、意思決定の背景やその決断に至った理由をわかりやすく説明して、部下を説得できる能力が必要です。

マネージャーの存在意義である「意思決定」をしやすくし、それ以外の仕事を減らせるよう、山田さんは試行錯誤した。人が人を評価するなんて、おこがましいんじゃないか。インターネット時代のいまの組織で、マネージャーが情報を囲い込むのは、まったく理にかなってないんじゃないか…。その結果、「100人100通りの働き方」「情報の徹底公開」「説明責任と質問責任」といったコンセプトに至り、それに沿った制度を実現していく。

こういう本を読むと「いいなあ!サイボウズで働きたい!」「山田さん、理想の上司や」「うちの会社も、こういうのがあったらいいのに…」という感想になったりしがちじゃありませんか。やる気ある人事部の人だったら「この制度、うちにも入れようって提案しようかな」とか思うかもしれない。

でもね。

私は、この本からは、実際にやった打ち手や制度ではなくて、そこに至った考え方を読み取ることをお勧めしたい。理由は、そのほうが、自分のおかれた状況に応用しやすいから。私が身につけたいなあと思った山田さんの考え方は、例えば次のようなものだ。

⚫︎無理がある、と感じるところには必ず問題がある。それを明らかにせず根性論で頑張るのはおかしい。
⚫︎「みんな」が誰か分からないと、「みんな」が働きたい会社がどんなものかも分からない。
⚫︎必要なのは「清水の舞台から飛び降りる勇気」ではなく、「清水の舞台から飛び降りるのは怖いと言える」勇気。

…「最軽量」というけれど、まったくヘニャヘニャしてない。徹底したリアリズムだ。

もうひとつ、この本から読み取りたいのは「最軽量のマネジメント」とは言うけれど、山田さんの提唱するマネージャーの仕事は、まったく楽じゃないってことだ。「マネージャーの仕事は意思決定」。「マネージャーが持つべきは、地位でも権威でもなく、『責任』」。
⚫︎ファクトとロジックで意思決定する思考力と意志
⚫︎自分の弱さを認める勇気
⚫︎自分を正しく見せたいという欲求を超える謙虚さ(ムキにならない)
などがないと、山田さんの定義するマネージャーは務まらない。人間的な成熟を求めているわけだ。けっこうハードル高い。これなら、ピラミッド型組織の権力構造に守られてた方がラクだ、と感じる人はたくさんいるのではないか。権限をかざして「いいから言うことに従って」と言えば済むのだから。

一般的なマネジメントは、組織のヒエラルキーと権限という「鎧」をマネージャーに着せていた。今の時代、その「鎧」は邪魔なわりに威力が落ちてきた。山田さんの「最軽量のマネジメント」は、その「鎧」を脱ごうという提案だ。鎧を脱いだマネージャーは、「素顔」で意思決定という責任を果たそうよ、と言っている。サイボウズでは、マネージャーが「素顔」で責任を果たせるような環境を整えたとは言え、意外に厳しい提案なのだ。

「厳しい?そんなん、当然ですよ。お花畑やないねんから」って言われそう。

今日は、以上です。ごきげんよう。

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2019年12月17日 追記

この note を日経新聞掲載の広告に使って頂きました。 note としても、サイボウズブックスとしても、はじめての試みだそうです。

この広告が企画された詳しい経緯をライツ社さんが書かれています。私も詳しい背景をはじめて知りました。「最軽量のマネジメント」には多くの書評が寄せられている中、私のつたない感想を選んでいただき、光栄です。

サイボウズブックス編集長の大槻さんから、この note を使いたいとご連絡いただいた時、面白いこと考えるなあ!と、思わず笑っちゃいました。面白い試みに使って頂き、ありがとうございました。

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