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3施設同時開業!でも開発期間は3ヶ月。内製化の底力で爆速開発をしたお話

コロナ禍においても星野リゾートは積極展開を繰り広げ、2021年4-5月に、「OMO3京都東寺」「OMO5京都三条」「OMO5沖縄那覇」の3施設同時開業に踏み切った。そして感染対策の一環として、密を避けるために、煩雑なチェックイン業務を無人で行う自動チェックインシステムの導入を情報システムグループは担った。3施設同時導入というハードルは高いプロジェクトではあったが、星野リゾート情報システムグループは、この難解プロジェクトを、独自の内製化体制で乗り越えていった。

本プロジェクトの、プロダクトオーナー(以下、「PO」)米田さん、スクラムマスター兼コーダーを担った本多さんにインタビューを行った。

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米田真優
情報システムグループ プロジェクト推進チーム プロダクトオーナー
2016年新卒で星野リゾートに入社。星のや京都でサービスチームスタッフとして勤務し、フロント業務から客室清掃、夕食サービスなどマルチタスクで業務を行う。2018年に情報システムグループへ異動。現地で利用するゲスト/スタッフ向けシステムのプロダクトオーナーを担当。

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本多陽平
情報システムグループ エンジニアチーム エンジニア
開発会社、スタートアップを渡り歩き、スタッフの笑顔がとっても印象に残っていた星野リゾートへ、2019年8月に縁あって入社。宿泊予約システムをしばらく担当した後、自動チェックイン機を担当。

ー自動チェックインシステムプロジェクトの概要を教えて頂けますか

米田:星野リゾートが展開している都市型観光ホテルブランドのOMOへの自動チェックイン機の導入プロジェクトです。実はこの3施設よりも前に運営を始めているOMO5大塚で既に既製品の自動チェックイン機の導入は行っていましたが、理想とする顧客体験を実現するために内製化して自前プロダクトとして作り直すことにしました。

会社全体はコロナ禍をチャンスととらえ事業拡大をしている中でのプロジェクトでしたのでとにかくスピードを求められるプロジェクトでした。

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ープロジェクトを受け持った際の最初の印象はどうでした

米田:自動チェックイン機自体は他社のプロダクトを導入した実績もあるので、特に不安はなかった気がします。スケジュールが3ヶ月とタイトなだけで、始まる前は見通しやすいプロジェクトだと思っていました。

いざはじめて見ると、これが意外と難解で・・・。

チェックイン処理自体は難しくないのですが、その裏では自社の予約システム、会計システム、ホテルシステムと、様々なシステムと連携しているので、設計段階で考えることが多かったですね。

そして一番頭を悩ましたのが、非接触方式で部屋のドアを開閉できるスマートキーとの連携です。ハード(扉の鍵)との連携ということでIoTプロジェクトの側面もありますし、3施設ともスマートキーの種類が違う・・・。

納期も考えて、とにかく優先順位付けで苦労したのを覚えています。

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ーではプロジェクトの立ち上げはどのようにされましたか

米田:当初はプロダクトオーナー(以下、「PO」)に私がついて、あとは外部の開発会社とゆるいスクラムのような体制を考えていました。ただ先程言ったスマートキーの整理にかなりの労力がかかったので、開発会社との連携がややおろそかになり、動きが悪くなった時期がありましたね。

また私自身はエンジニアではないので、開発会社から提案していただく「納期」「予算」「技術的な要望」の妥当性に自信がもてませんでした。

そこで「社内からもエンジニアを出そうという」話になり、以前から「ゲストに近い部分を作り込んでみたい」と言っていた本多さんにジョインしていただきました。

ー本多さんがジョインしたときエンジニアから見てどういう状況でしたか

本多:要件などは整理されていましたが、そこまでの道筋が不透明でしたね。

私はプレイヤー兼スクラムマスターのような立ち位置で入り、タスクの細分化と進捗の視える化をしました。毎日朝会で進捗の確認をしながら、優先順位の入れ替えをメンバーと話し合いました。

開発ポジションとしては主にフロントを担当しました。ジョインする前はサーバー寄りのプロジェクトが多かったのですが、メンバーの技術的な強さや、私自身が「ユーザーに触れる部分を作りたい」というのもあり志願しました。

チームで合意すればやりたいポジションができる雰囲気も良かったですね。とてもモチベーションが上がったのを覚えています。

ー社内エンジニアが参画し、半内製化チーム体制で良かったことは何ですか

米田:社内メンバーできちんと技術担保ができるようになったのがとてもよかったです。社外の方だけだと「技術の部分は丸投げ」になりがちです。ガチガチに管理する方法もありますが、チームのモチベーション的にイマイチですよね。

あと運用時のトラブル対応でも、社内にコードレベルで分かる人がいないと大変だったと思います。

技術分野について時間的にも予算的にも測る「ものさし」に本多さんがなってくださったので、自信をもってプロジェクトをすすめられました。

本多:エンジニア側から見ても社内POがいると助かります。何事もすぐ相談できますし、お互いにきちんと役割分担ができていたので開発に集中できました。米田さんが言ってくださった、「スマートキーの難題」「短納期」もこの体制じゃないと多分乗り切れなかった。この体制でも最後はギリギリでしたからね。

あと話し合いを重ねながらプロダクトを開発していくので、「自分たちでつくっている」感がとても心地よかったですね。私は、SIer、スタートアップも経験しましたが、事業会社にいながら本プロジェクトはスタートアップのような熱量がありましたね。

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ー技術的な部分ではどういった部分が大変でしたか

本多:スマートキーの種類の幅広さには面食らいましたね。クラウド型のスマートキーもあれば、現場のWindows PCで動いているスマートキーもあります。どちらもAPIは提供されていますが、実行するAPIだけではなくキー発行・キー削除の処理フローも違うため、UI/UXはできるだけ揃えつつAPIの差分をいかに吸収するかという点で、苦心しました。

今後は、WindowsのDLLで提供されているAPIを利用しなければならない施設も出てくるため、Windowsのネイティブアプリを書かねばなりません。スマートキーとはいえ、キー情報の読み取り・キー情報の書き込みをするのはリーダー(物理装置)で、このリーダーとの連動もあります。何がベストプラクティスなのかは分からず、まだまだ学ぶ必要があると思っています。

あと大変だったとは少し違うのですが、社内のエンジニアが関わることで「リファクタリングの必要性」に気づくことができ、目の前の開発を単に進めるだけでなく、開発の効率化を考えながら進められたのは良かったです。

ー新規プロジェクトですが、リファクタリングですか?

本多:本プロダクトという枠ではなく、連携システムを含めたアーキテクチャレベルでのリファクタリングです。

社内エンジニアだと今後の開発案件も頭に入っているので、「ここは将来的に技術負債かも」というのがわかるんですよね。

プロジェクトを進めながら、裏では「自動チェックイン機2.0、3.0 はこうやって発展させよう。そのためにはここを置き換えておこう」って感じで話し合っていました。

これも社外エンジニアに丸投げしていたら、気付けないポイントだったと思います。

ー2.0 3.0 も見えていたらプロダクトに愛着が湧きそうですね

本多:そうですね。継続的に発展させられる、それがゲストのベネフィットにつながる、というのは事業会社ならではですね。SIerだとここまでの関わり方はどうしてもできないですし、非テック系事業会社にありがちな要件だけ伝えてあとは外部におまかせではなく、「自分たちのチームで作るんだ」というのが一層プロダクト愛につながりますね。

米田:VUCAの時代、ゲストのニーズは目まぐるしく変わります。社内で開発していれば細かい仕様変更への迅速な対応が可能です。

エンジニアと現場スタッフが話し合って
「ゲストのベネフィットを達成するためにプロダクトはどうあるべきか」
を考えるのはとてもやりがいがあって楽しいです。

この先、どのようなプロダクトに進化するのかわかりませんが、星野リゾートならではの発想で、新しい顧客体験を生み出すプロダクトに成長させ続けていきたいです。

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