【ライブレポート】2020/6/20 CLUB CRAWL pre.「HAISHIN-LIVE Vol.1」

無料配信から徐々に有料配信の流れができつつあるライブシーン。今回はRhythmic Toy Worldのボーカルである内田直孝のワンマンライブがbitfanPASSというプラットフォームを使って有料配信ライブされるということで、アーカイブ期限ギリギリになんとか間に合い、観賞いたしました。


内田直孝(以下うっちー)の弾き語りライブではお馴染みともいえる「音物語のテーマ」で幕を開けたCLUB CRAWL pre.「HAISHIN-LIVE Vol.1」。ギターの音とうっちーの声だけという、最小限の編成で奏でられたオープニングに早くも気持ちが持っていかれる。久々に味わうこの歌声。どこか懐かしい感じすらします。

「やばいね、123日ぶりのライブ」

うっちーも久々のライブに感慨深げです。もともと予定を入れてなかったわけではなく、予定していたライブが延期・中止になった結果の123日ぶりのライブですからね。単なる「久しぶり」とはわけが違います。


続く曲は「さなぎ」。ライブハウスにいて、その場で聴いていたらきっと耳の関心のほとんどを歌声に持っていかれる気がしますが、配信だと少し客観視できる部分があって、ギターの音もひとつひとつがしっかりと耳に飛び込んでくる。弾き語りならではのアレンジやブレイクも刺激的で面白い。

普段の弾き語りではあまりやらないような曲も入れ込んでいる(と思う)ので、曲が始まった直後だと「これ、なんだっけ?」と一瞬なんの曲かわからない、そんな体験も。

うっちーの伸びやかな高音、そしてセクシーなファルセットが観客のいないフロアに響き渡ります。ミニマルな設定の中で、世界観を表現する優しい照明もまた印象的。


「インスタントラヴァー」を歌い終えると「ありがとう」の一言。これに会場となったCRAWLにいるスタッフたちから拍手が。これはライブ感が増すとても良い演出になるなと感じました。もちろん演出のつもりで拍手しているわけではないことは百も承知ですが。

「はじめてチケットが必要な配信ライブ。第1回に呼んでいただいてありがとうございます小池店長!」とうっちーが言えば、その場にいる小池店長も「出演していただいてありがとうございます」と応じる。※小池店長は、配信画面では声のみでの出演

他にもPAのケンタさんやマネージャーのりゅーじくん、Rhythmic Toy Worldメンバーのきっちゃん、すーさんもCRAWLにてうっちーのライブを見守ります。ちなみにいそくんは別の重大なミッションがあるようで、不在とのこと。


電車移動は避けた方がいいのでは、という気遣いから、今日のライブのためにうっちーを車で送迎するというメンバー思いなすーさんエピソードなども披露しつつ、「歌えることの楽しみをみんなで分かち合おうぜ!…歌ってるのは俺だけか」と告げて4曲目、「絶対領域」へ。ギター一本でもその豊かな曲構成を表現していて、引き込まれる演奏。弾き語りと言うとどうしても歌がフィーチャーされますが、伴奏となるギタープレイも見逃せない、聞き逃せないなと改めて思う、そんな1曲です。

「人と付き合うことの難しさ」
「距離を取りたいと思う瞬間もあったと思う」

「いざ、会えませんよ、となったとき」
「そういう気持ちはどっかに行って」
「会いたいなあってそういう気持ち」
「いつもないものをねだってしまう感じ」
「俺が持ってないスキル」
「そういうのを持ってる人を見ると羨ましく思うし」
「そういうのをひとりもんもんと考えながら過ごす午前3時の歌を」

こんなコメントから「27時」。夜、ひとりでこのライブを観ている、そんな人に寄り添うような歌。後ろから照らされる照明でうっちーの顔には影が生まれる。光と影のコントラストが美しい。

続いて「ユメイロ」も披露。バンドでのライブとは異なるテイストのセットリストを堪能できるのも弾き語りライブの魅力です。


曲が終わって「ありがとう」とうっちー。CRAWLスタッフと同じタイミングで、画面に向かって思わず拍手してしまう。配信という形式でも、自分の気持ちがCRAWLにあるんだということを実感する瞬間でもありました。ホントに自然と拍手してましたからね。

MCではこんな話が。このライブを控えていたタイミングできっちゃんから「『パドル』を歌ってくれないか?」とLINEがきたそうで、わざわざリクエストするなんてきっちゃんに何かあったのかと思ったうっちーと、ファンクラブ用に「パドル」をピアノで弾いたから、それに合わせて歌ってほしいというファンクラブコンテンツ用の依頼だったというきっちゃんとの心のすれ違いエピソードも飛び出します。「パドル」の出だしだけアカペラで披露するという嬉しいおまけもありました。

また、今回ステージ後方に張られていた新バックドロップの話も。A4の紙に手書きで書いた初号機、そしてラミネート加工を施した2号機を経て、誕生日プレゼントとしてファンから送られたというのが今回の新バックドロップ。

これらバックドロップについて「一生もんですわ」という言葉を放つと、さらに続けて「という流れで、一生大切にしたい、そういう人を思いながら聴いてもらいたい曲があります」とコメントして「犀日」を披露。音源化はされていないものの、ライブに通うファンにはすでに浸透している、マネージャーりゅーじくんの結婚式用に書き下ろした名曲です。沁みる。歌詞もメロディも沁みる。間奏直前にすっとマイクスタンドからピックを取るうっちー。それまでの指弾きならではの繊細な音から、ピックによる力強いストロークへと変化する様は、これから幸せな道を進んでいくふたりを盛大に祝福するかのよう。

Rhythmic Toy Worldにおける数少ない恋の歌である「8535」は、うっちー曰く「ラブソングのシグネイチャー」。出ました本日のパワーワード。もちろんみんな「8535」が恋の歌としてRhythmic Toy Worldの代表曲であることは認識しています。それゆえファンからは「結婚式で流せる歌を作ってください」という声があったそうで「犀日」はまさにピッタリな1曲と言えるでしょう。


実はうっちー、あまり地方で弾き語りライブができていない現状があるので、地方の人々にとって今回の配信ライブはとてもありがたかったんじゃないでしょうか。小池店長も「地方の人が多いのでは?」と視聴者層に触れますが、すかさずうっちーが

「みんなの家がCRAWLだから」

と本日2個目のパワーワードを放つ。会場も、そしておそらく自宅でライブを観ていたファンも盛り上がったであろう瞬間を経て、「みんなの心に歌のミサイルを」の言葉とともに「少年とミサイル」。これはRhythmic Toy Worldではなく内田直孝のソロ曲です。これこそバンドでのライブでは聴けない、ある意味貴重な1曲。インパクトのあるタイトル、そして噛み締めたくなる歌詞…。

「3次元の世界のはずが2次元の世界のように様変わりしちゃって」
「そういうつもりで作ったわけじゃないけど」
「歌ってときおり時代に呼応して、時代にリンクして」
「時を刻んでいく感じがすげえなて思いました」

そんなメッセージから「電影少女」へ。2次元キャラへの愛を綴った、全ヲタク必聴の名曲ですが、うっちーの言う通り今の情勢を考えると、2次元と3次元の壁を取っ払って人の心に刺さる曲になっています。

“会いたいよ でも会えないよ”と切なさを滲ませながら歌う姿にグッとくるな。

配信ライブも気づけばあと2曲。

「細かいことはなし。俺たちからの、音に乗せた手紙だと思って受け取ってください」

そう告げて6月1日配信解禁となった新曲「VITE」を披露します。

最初のサビ後に間違えてしまったうっちーですが、「巻き戻し!」と歌いながら宣言して再びサビから歌いなおし。弾き語りだからこそできる柔軟なアクション。こういうハプニングとリカバリーを楽しめるのもまたライブの醍醐味です。

“どちらが凄いか そんな話に興味はない”
“「敵」も「味方」も「自分」だ”
“「今日」も「明日」も「最低最悪な日々」すら越えた「未来」だ”

つい最近見たドラマでの「マウントの取り合いは悲劇しか生まない」という名セリフがオーバーラップする歌詞。そしてコロナ禍を連想させるメッセージが詰まった、今この瞬間を切り取ったかのような歌。これもまた心に響く1曲です。


歌い終えると「ありがとうございました!」の挨拶から間髪入れずに「僕の声」へと続き、記念すべきCLUB CRAWL pre.「HAISHIN-LIVE Vol.1」は終幕を迎えました。


最後のメッセージは「どうもありがとう、Rhythmic Toy Worldボーカル内田直孝でした!また観てくれよな!」

ミュージシャン内田直孝というより、Rhythmic Toy Worldのボーカルである、そのことに誇りを持っていることが伝わってくるような挨拶。

首筋に汗を光らせながら、情熱をもってパフォーマンスしてくれたうっちー。そんな彼を照明や音響、カメラで支えたスタッフたち。CRAWLの力を結集した第1回配信ライブ、存分に楽しませていただきました。

まだまだコロナ以前のような稼働というのは難しい情勢下、これからのCRAWLの、そして内田直孝、Rhythmic Toy Worldの活動も随時追いかけていきたいと思います。

セットリスト
01.音物語のテーマ
02.さなぎ
03.インスタントラヴァー
04.絶対領域
05.27時
06.ユメイロ
07.犀日
08.少年とミサイル
09.電影少女
10.VITE
11.僕の声


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