見出し画像

就活ガール#313 志望動機を過去の経験と繋げる

これはある日のこと、アルバイト先のコンビニでのできごとだ。客足が少ない時間を見計らって、今日も後輩の日野原さんと就活談義が始まる。

「突然ですけど、志望動機って難しいですよね。」
「難しいな。ガクチカと1、2を争う王道の質問だけど、一番難しいと思う。」
「はい。しかもガクチカと違って企業によって全く違うことを答えないといけないので、使いまわしが難しいと思います。使いまわしができるような答えをすると、じゃあ競合の〇〇社でもいいじゃんという話になってしまいます。」
「で、最終的に御社の社員の人柄に惹かれたとかって答えると、残念そうな顔をされるんだよな。」
「そうなんですよ。それで、今日は志望動機の書き方について知りたかったんです。すごくざっくりした質問なんですけど。」

「うーん。志望動機って会社のことを褒めるような内容ばかりを書く人が珍しくないけど、それだけじゃなくて、自分の過去の経験や成果と連動させて答えると説得力が増すと思うな。」
「どういうことですか?」
「例えば企業理念に共感したって言っても、なぜ共感したのかがわかりづらいだろ。」
「そうですね。適当に採用ホームページ等からコピペすれば誰でも言えることですし。」
「うん。だから、『自分の過去の経験から顧客満足度を上げることが重要だと感じていた。そこに御社の企業理念がぴったり当てはまった。』みたいな感じのストーリー作りが必要になる。」
「なるほど。アルバイトを通してお客様に喜んでもらえて嬉しかったとかですかね。」
「その辺が難しいんだよなぁ。」
「違いますか?」
「違うとまでは言えないんだけど、なんか薄っぺらいというか、安直というか……。」
「まぁ確かに、誰でも言えるし、実際言ってる人が多そうな予感はします。」

「そうだよな。で、この場合に周りと差別化するための方法は大きく分けて2パターンあると思う。」
「教えてください。」
「まずは、深掘りをしてなぜを突き詰めていくパターンだな。つまり、なぜお客様に喜んでもらえて嬉しいと感じたのかを考えて、語る。」
「うーん。シンプルに考えて他人に喜ばれたり感謝されると嬉しいと感じる人が多数派だとは思いますけど、それだと理由として弱いってことですよね。要するに深い理由はないっていうのと同じですし。」
「うん。例えば子供の頃のとある経験を通して他人に喜んでもらうことの重要さを人一倍実感していたとか、自分が工夫をすることでお客様の反応が大きく変わるということを知って成長意欲につながるとか、まぁなんでもいいとは思うんだけど、ただ『嬉しかった』だけでなくもう一段回、二段階の深掘りがあると周りに差をつけられるんじゃないかな。」
「たしかに、どのみち面接でもそういう深掘り質問されますもんね。」
「うん。その時にその場で適当にごまかすような回答をしてしまうと、志望動機が薄いなと思われてしまうだろうな。」

「深掘りに備える以外の方法で対策することはできますか?」
「うん。シンプルに、別の志望動機を答えることだな。お客様に喜んでもらえて嬉しかった経験があるから顧客満足度を重視する企業を選んだというのはあまりにも単純でありきたりだから、その土俵では戦わないようにする。」
「企業理念に共感系の志望動機は避けるってことですね。」
「いや、違う。もちろん避けてもいいんだけど、そこは別にそのままでもいける。」
「えっ、どういうことですか。」
「顧客満足度を重視するという企業理念に共感する理由は、必ずしも過去にそういう経験をして嬉しかったからだけではないだろ?」
「そうですかね……。ちょっと他に思いつかないです。」

「例えば、お客様の満足度を上げることが企業の成長につながると思ったとかっていう話をする。具体的なエピソードとしては、アルバイト先でお客様の満足度を上げるために頑張ったら、リピーターになってくれたとかだな。」
「あ、そっか。個人的に嬉しかったとかっていう話ではなくて、企業の利益とつなげて語るわけですね。」
「うん。企業は慈善活動をやってるわけじゃないから、利益の話をするのは基本的に喜ばれやすいと思う。特に文系の人は面接官が現役の営業職や過去に営業職を経験したことのある人であることが多いから、その辺に敏感じゃないかな。」
「理系だとしても面接官は基本的に管理職で、平社員に比べると数値目標等への意識が高い人が多いと思うので、有効そうですね。」
「そうだな。就活生どころか社会人であっても、若者は売り上げとか利益とかへの意識が希薄な人が多いから、その辺に触れるだけで企業側に好印象を与えることはできると思う。」

「この作戦は企業理念以外のところでも使えそうですね。例えば人がいいから企業を選んだっていう志望動機があるとするじゃないですか。」
「よくある悪い志望動機だな。」
「はい。たしかにそれだけだとなんか適当に誰がどこの企業に対してでも言えるようなことを並べてるだけっていう感じがして、悪い印象を与えがちだとは思うんです。ただ、例えば自分が過去に経験したアルバイトやサークル活動で、周囲の人が良い人だった時にどういう風に助け合ってパフォーマンスを発揮したかを語って、そのうえで、自分は周囲の人が良い人であるときに高いパフォーマンスを発揮できる人間だっていう風なストーリーを作ると、ある程度説得力が生まれるんじゃないでしょうか。」

「なるほどたしかに。ただ人がいいから選んだというよりはだいぶ説得力が増してる気がする。良い人に囲まれていると成果を残しやすいっていうのも、単なる想像上の話ではなくて実体験をふまえてると強いよな。」
「そう思います。さっきの顧客満足度の話で『普通は感謝されたら嬉しいでしょ』だと雑過ぎると感じたのと同じで、『普通は良い人に囲まれたら嬉しいでしょ』では通用しないんですよね。なぜそう思うのかをちゃんと説明すると、説得力が大きく上がると思います。あと、今さっき先輩が仰ったように、利益につながるという話に持って行きやすいのもよいと思います。」

「とはいえ、利益に貢献しますって学生が言うと、生意気だと思われる可能性もあるから難しいんだよな。」
「たしかにそうですね。新入社員が簡単に利益に貢献できるほどビジネスって簡単ではないと思いますし、企業のダメ出しとかもし過ぎない方がいいって話はよく聞きます。」
「うん。だから俺は会社の利益っていうよりも、自分がパフォーマンスを発揮できるっていう風なアピールをしてる。些末な話かもしれないけど、それだとそこまで生意気感が出ないんじゃないかと思って……。」
「あ、いいですね、それ。利益につながるかどうかはともかく、自分が最も力を出せるっていう意味ですよね。会社が求めてる水準が100だとしたときにいきなり120を出せるっていうと胡散臭いですけど、自分はこういう状況で自己ベストを出せますと主張すると、あとは徐々にそれを伸ばして100を超えていけばいいだけですもんね。」
「うん。それがいわゆるポテンシャルを見せるっていうことの一つだと思うんだよな。」

「しっくりきました。自分がどういう時に力を出せるのかをアピールするのは重要そうですね。で、もちろんそれも過去のエピソードと繋がるものがいい、と。」
「そうそう。人がいいからとか企業理念に共感したからとか、あるいは会社規模が大きくて幅広く活躍できそうとか、その会社の作っている製品が好きとか、そういうありきたりな志望動機だから即ダメっていうわけではないんだ。でもそれだけだと企業側にとって、俺を採用する理由がない。今言ったような条件たちと、自分がパフォーマンスを発揮できる環境をリンクさせて語ることが重要なんだと思う。」
「わかりました。これで志望動機を考えるのがはかどりそうです。今日もありがとうございました。」

そこまで話して会話を終えた。今日は志望動機の答え方について考えることができた。ガクチカと双璧をなす鉄板質問の一つであるが、就活生が最も苦労する質問だとも言えるだろう。薄っぺらい回答をしていては深掘りされて回答に詰まってしまうということも珍しくない。
そこで考えられる対策としては、ただ企業を褒めたたえるだけでなく、自分の経験と繋げて答えることが挙げられると思う。その時に、単なる感情の動き等を話すのではなく、自分がどういう条件下でパフォーマンスを発揮できるかという点について述べ、その条件と御社が当てはまるという風なストーリーにすると綺麗だと思った。これはあくまでも一例にすぎないけれど、わりと汎用性が広い答え方だろう。そんなことを振り返りながら、一日を終えるのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?