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就活ガール#305 早期選考に応募する人が7割弱

これはある日のこと、ゼミ室でアリス先輩に就職活動の相談をしていた時のことだ。

「アリス先輩って、俺がこのゼミに配属された頃には既に就職活動を始めてましたよね?」
「ええ。あの頃はゼミよりも就職活動を優先していたわ。よくゼミを休んで谷川先生に怒られていたもの。」
「そんなアリス先輩が今一番熱心に卒業論文を書いてるっていうのは先生も驚いたでしょうね。」
「就活って早く始めた人ほど早く終わる傾向にあるから、私もその一般論に当てはまったってだけよ。他の人達は始めるのが遅かった分、今苦労してるっていうだけ。」
「大手企業ほど早くから募集していますし、最悪うまくいかなくても面接スキルが磨かれて就活後半でなんとかなることも多いので、早く始めた方が得っていうのは間違いないと思います。それでも、はじめない人が多いんですよねぇ。」
「まぁ、計画を立てて準備して実行に移せる人ならもっと立派な大学に通ってるから。後になって焦るより比較的暇なうちから始めて負荷分散しておけばいいのにね。」
「はい。Fラン大学ってそういうものですね。」

「それで、今日はどうしたの?」
「本選考を受けるべきか悩んでるので相談に来ました。今の話を聞いてると受けた方が良さそうだとは思うんですが、インターンシップもあるので、別に他にやることがないというわけではないんですよね。あと、まだ自己PRとかが練りこめてない部分もあるので、まだ早い気もします。」
「それでも受けた方がいいわね。通年採用してる企業って結構多いわよ。」
「まずそれを探すのが大変なんですよね。ナビサイトも3月まではインターン向け以外で開いてないことが多いですし。」
「SNSなどで探すといいわ。その辺の検索スキルも必要な能力ってことよ。」

「はい。まぁ実際は早期から本選考を実施している企業の一覧を手に入れるところまではそんなに難しくないです。ただ、自分が志望していない業界とかが多いんですよね。それでも滑り止めとして受けるべきか悩んでいます。」
「ええ、わかるわ。でもやっぱり受けた方がいいわね。本命のインターンを削ってまで受ける必要はないけど、頑張って受けようと思えば時間は見つけられるはずよ。」
「全く死亡していない小売り業とかでもですか?」
「ええ。面接を受けること自体が練習になるから。」
「そんなものですかねぇ。」
「面接で何を聞かれるかなんて選考に参加してみないとわからないんだし、志望動機など一部の質問を除けば勉強になることはあるはずよ。」
「それもそうですね。」

「で、それを示すデータがあるわ。これを見てちょうだい。」
「なになに、2023年卒業予定者の就職活動の開始時期についてですか。」
「ええ。先に言っておくと、ややマイナーな就活サイトに登録している人が対象のアンケートだから、そもそも就活への意欲が高めの回答者が多いって言うのはあると思うわ。」
「モチベーションが高い人ほど多くのサイトを使ってみますもんね。その中で自分に合ったサイトを最終的に絞り込めばいいだけですから。」
「登録して損をすることはほとんどないし、なんでも実践してみるに越したことはないわよね。」
「はい。」
「あと、このサイトの統計は内定が1社以上ある人を対象にしているから、調査をしている7月中旬時点でまだ内定が無い人については母数に含まれてないわ。」
「7月1日時点の内定率が8割くらいですし、これ以降は良い企業があまり残ってないだろうから、分母から除外されててもあまり関係なさそうですね。」
「そうね。内定がある人の行動パターンを抽出してもらえてるって考えると、むしろ良いデータじゃないかしら。」
「なるほど。」

「で、このサイトによると、3年生の6月以前に本選考を受けたことがある人は3パーセントくらいね。」
「そんな時期から募集してる会社ってほとんどないですよねぇ。」
「そうね。このレベルの早期選考となると、3年生を対象としているというよりは、通年採用で誰でも受けられる企業が多いんじゃないかしら。」
「3年生や4年生だけでなく、1年生や2年生で儲けられるってことですね。」
「ええ。あとは既卒フリーターの人や他の会社で働いている人のうち、一定の年齢以下の等の条件を満たす人なども受けられることが多いわね。」
「1年生から本選考受ける人がいるんですか……。」
「高校時代までによほど良い経験をしてるって人もいるでしょうけど、おそらくは練習として受ける人が大半じゃないかしら。たいていの場合は卒業までなら翌年以降にまた受けられたりするから、狙ってる企業に早期選考があるなら、何度も挑戦しながら試行錯誤していくのはアリだと思うわ。」
「でも、同じ企業に複数回応募しても望み薄だという話を聞いたことがあります。」
「それは留年の場合でしょう?」
「早期選考は違うんですか?」
「ええ、違うわ。早期選考はあくまでもオプションでやるものなのよ。企業側もそれをわかってるから、一度ダメになったからって厳しい目で見たりはしない。特に大学生のうちは1年で成長することも多いしね。」
「たしかに留年の場合は、『自社の他からもいい内定を得られなかった人』という印象がついて回りますけど、早期選考だと『ずっと前から自社に興味を持ってくれている人』という印象が強そうですね。」
「そうなのよね。まぁもっとシンプルに、留年と違って歳を余分に取っていないとかっていうメリットもあると思うわ。」

「でもなんというか、下級生のうちから就職活動で手一杯ってのはいかがなものかっていう気もしますね。」
「別に下級生のうちから就職活動に全振りする必要はなくて、余裕があればやっておけばいいってことよ。もちろん、3年生で早期から始めるのも同じ。人生がかかってるんだし早く始めることは当然で、外野から文句を言われる筋合いはないわ。」
「はい。あ、関係ない話ばかりしてすみません。アンケートの話でしたね。」

「ええ。話を戻して、3年生の9月までに本選考に応募する人は20パーセント、11月までが30パーセント、4年生の1月までが50パーセント、2月で65パーセントよ。」
「3年生の3月からって世間では言われてますけど、実際は3人中2人くらいがそれ以前に本選考を受けてるんですね。」
「ええ、そういうこと。しかもこれは2023年卒の人の話なのよ。今はもっと早期化が進んでいるから、軽く7割は超えるんじゃないかしら。」
「ってことは、むしろ受けてないとヤバいと言っていいレベルですね。」
「私はそう思うわね。ちなみに3月にも本選考を受けないまま4月を迎えた人は10パーセント未満よ。ちなみにこのうちの半分くらいは最後まで受けてないわ。」
「このアンケートって内定を持ってる人のみが対象なんですよね? 選考を受けてないのに内定がある5パーセントっていうのはどういう人達なんですか?」
「コネ採用とか家業の手伝いをするとかがメインじゃないかしら。起業したり個人事業主として生きていくことを『内定がある』とは通常言わないから、含まれていないでしょうね。」
「なるほど。コネがある人が5パーセントもいるのか……。」
「正確に言うと内定を取った人のうち5パーセントだから、就職を希望している学生の全体でみると4パーセントくらいってところね。」
「羨ましいです。」
「どうでしょうね。大企業のコネ採用とは限らないわよ。」
「あ、それもそうですね。逆に大手企業だと、自社に親族がいる人は入社できなかったりすることもある気がします。」
「そうそう。まぁコネについては気にしても仕方ないわ。」

「はい。要するに、早めに本選考を受けた方が良いって話ですよね。」
「そうね。受けた方が良いどころか、少なくともこの調査上では受けるのが当たり前くらいになってると思ったほうがいいわね。」
「わかりました。今日もありがとうございました。」

そこまで話して会話を終えた。今日は、早期選考に応募した方が良いかについて、アンケートデータをもとに話を聞くことができた。その結果、3月から解禁という経団連ルールの形骸化は、予想以上に進んでいるということがわかった。そもそもこのルールは今後完全消滅するかもいしれないという話もあるし、それ以前の話として、応募して損をすることは基本的に何もないはずだ。
早くから選考をしている企業は、早くに内定を出しても辞退されるリスクが少ない企業であることが多い。つまり、優良企業ほど早くに内定を出す傾向があると言える。今は第一志望だと思っている企業でも、不合格になればまたすぐに別の第一志望が見つかるというのもよく聞く話だ。準備を万全にするのを待つよりも、まずは行動してみるのがいいと思う。そんなことを考えながら、一日を終えるのだった。

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