見出し画像

就活ガール#311 OB訪問の日程変更

これはある日のこと、バイト先のコンビニで店長の薫子さんとシフトに入っていた時のことだ。

「就活について相談があります。」
「どうしたの?」
「OB訪問を体調不良で急遽欠席してしまったんです。こういう時にどうすればいいのかなって……。」
「なるほどね。怒られたんだ。」
「いえ、少なくとも直接は怒られてはいないです。謝ったら許してくれたんですけど、代わりの日にやろうっていう流れにはならなかったので、内心では怒ってるのかなとも思って。」
「どういうやり取りをしたの?」
「まず、謝ったんです。そしたら『仕方ないです。お大事にしてください。』みたいな感じの返信が来て終わりです。」
「ふーん。まぁそんなものよね。別にいちいちこの程度のことで怒る理由がないし。」
「でも、もうこのOBに遭うのは無理ですよね……。」
「いやいや、諦めるのが早すぎるわ。」
「リスケジュールをお願いしてもいいのでしょうか?」
「ええ、もちろん構わないわ。むしろこちらからお願いするのが通常の流れなのよ。相手が誘ってくれるのを待ってたらダメね。」
「いきなりリスケジュールを頼むのは失礼かなと思って相手の出方を伺っていたら、会話を終わらされてしまいました。」

「たぶん相手は全然気にしていないと思うわよ。体調管理も業務のうちとかって建前としては言うけど、実際は体調不良は仕方ないもの。昨今の情勢的にはさらにそうよね。」
「そんなものですかね。」
「ええ。体調不良を口実に頻繁に休むことを繰り返す人をやんわりと注意するために『体調管理も業務のうち』とか言われてるだけよ。ある程度まともな会社なら、体調が悪い人に対しては普通に優しく接してくれるわ。」
「よかったです。まぁ冷静に考えれば体調不良ってお互い様ですもんね。俺が言うのもアレですけど、どんなに気を付けていても失敗することってありますし。」
「そうね。あと、他人に厳しくしていると自分にも厳しく当たられて損だってことくらい、ある程度賢い人たちはわかってるのよ。そもそも会社っていつ退職してもいいわけだから、急に人がいなくなって困るっていうような組織体制を放置してるほうが悪いともいえるわ。」
「なるほど。たしかに、本人は何も悪くないのに不慮の事故にあって長期離脱することだってありますもんね。それに、転職だって、転職先が決まってから今の会社には報告するから、わりとギリギリに知らせることになると思いますし。」
「そうそう。そういう事態に備えて、いつ誰が居なくなってもうまくいくような仕組みを作ってるのが良い会社よ。」
「なんかちょっと寂しい気もします。別に俺がいなくなっても誰も困らないってことですよね。」
「そうねぇ。まぁ会社員ってそんなものだと思うしかないわ。個人的には寂しい、でも業務上は問題ない。そんな関係が理想じゃないかしら。」
「わかりました。言われてみるとこのバイトもそんな感じですね。俺が居なくなっても誰も困らないと思うけど、寂しいと思ってもらえるように頑張ろうと思います。」

「フフ、そうね。それで、話を戻すけど、OB側からすると学生が頼んできたから会ってやるっていう感覚なのよ。だから、別に頼まれなければそのままフェードアウトでも構わないわけ。」
「たしかにOB訪問ってOB側のメリットがほとんどないですよね。だから不純な目的を持った人が受けたがったりするのかもしれません。」
「そうね。それ以外の動機でいうと、一生懸命な若者を応援したいとか、若者と話して新鮮な情報を得たいとか、なんとなくの好奇心や暇つぶしとか、自分の人事評価や社内評判がもしかしたらよくなるかもしれないとか、経費で食事できてラッキーとか、まぁそんな感じよ。いずれにしても大した理由は無いの。」
「ってことは、もし別の日程での開催を希望をするなら学生側からしっかりと頼み込まないとダメってことですよね?」
「そういうこと。会ってほしい側が繰り返し頼むことは普通だから、ぜんぜん臆する必要はないわ。」

「わかりました。ありがとうございます。ちなみにこれって、面接でも同じですよね?」
「ええ。面接だって頼まれたら別日程を調整するし、頼まれなければしないって感じじゃないかしら。まぁこれは学生側も同じで、わざわざ頼み込んでまで別日程で参加させてもらうかっていうと、検討の余地がある場合は珍しくないと思うけど。」

「日程を変えてもらったことが不利になることはありますか?」
「基本的にはないと思っていいわね。」
「例外もあるんですかね。」
「ええ。面接の日程を変えたということ自体が不利に働くことはないけど、全員終わってから合格者を抽出するタイプの選考ではなく、早い日程から随時合否を決めて埋まったらおしまいとするタイプの選考かにもよるわね。まぁ外からはどちらのパターンなのかわからないけど。」
「後者の可能性もあるから、日程変更するにしてもあまり未来過ぎない方がよさそうですね。」
「ええ。前提として、相手は別に日程変更に応じる義務はないわけだから、できる限りこちらが合わせますよというスタンスで挑むことが必要でしょうね。ある程度やむを得ない理由があるとはいえ、相手方にとって迷惑だったという事実は変わらないし。」

「はい。そうすると、こちらから複数の候補日を提示した方が良いでしょうか?」
「うーん。そこまでしなくてもいいと思うわよ。せいぜい相手側に候補日をくださいとお願いするくらいじゃないかしら。それもしなくて大丈夫なケースが多いと思うけど。」
「そうなんですね……。」
「例えば説明会とか面接だと、そもそも開催している日程が前もって決まってるのよ。それ以外の選択肢を候補日として出されても全く意味がないでしょう?」
「そりゃあそうです。」
「そんな感じでスケジュール決定の主導権が相手側にあるから、こちらから候補日を出すことにあまり意味がないのよね。」
「たしかに……。」
「だから素直に謝って、どうしても参加したいから別の日程を準備してくれないかとお願いするといいと思うわ。そうすると相手から候補日を伝えてくれるはずよ。」
「はい。わかりました。」

「あと、せっかくだから参加したい理由も簡単に書くと得よ。」
「例えばどんな感じですか?」
「御社の〇〇事業に興味を持っているのでどうしても参加したいとか、将来のキャリアプランについて相談したいとか、まぁなんでもいいけど。ある程度具体的に聞きたい内容とか志望動機、自己PRみたいなものを添えるといいんじゃないかしら。」
「なんかエントリーシートみたいですね。」
「メールの趣旨は謝罪と日程変更のお願いだから、あくまでも少し書くだけよ。ただ、せっかくメールを送るんだから少しでもアピールしておくに越したことはないわ。」
「まさにピンチはチャンスっていうやつですね。」
「そうね。企業の人とテンプレ以外のメールのやり取りができる機会って多くないから、活かすといいわ。まぁこれだけで選考で有利になったりすることはないと思うけど、もしかしたら逆にいい印象を持ってもらえるかもしれないわよ。」
「はい。がんばります。そこまでやると、だいたいは許される気がしてきました。」
「そうね。例外は制度として一律で日程変更を認めていない場合とか、全体としての選考スケジュールがギリギリでこれ以上遅らせることができない場合とか、他の日程で空いている時間がない場合くらいかしら。」
「いずれにしても、担当者が怒っているから日程変更に応じないという訳ではないんですね。」
「相手も仕事でやってるんだもの。いちいち感情的にはならないように気を付けてると思うわ。まぁそれ以前に、別にこの程度のトラブルはよくある話しだから、いちいちなんとも思わないっていう方が大きいだろうけど。」
「わかりました。」今日もありがとうございました。」

そこまで話して会話を終えた。今日は、OB訪問や選考を体調不良で休まないといけなくなってしまった場合について話を聞くことができた。体調不良以外でも、大学の講義と重なった等の場合も同様だろう。また、本当は単に忘れていただけとか、他のより志望度の高い企業の選考と重なったという理由で、欠席する場合もあるだろう。そのような時にやんわりとキャンセルをするためのウソとしても、体調不良や大学の授業は便利なはずだ。

そして、これらの事情がやむを得ないものであることや、怒っても意味がないということは、ある程度まともな大人であれば理解していると思う。もちろん日程変更に応じるか否かは相手方の自由であるけれど、もし志望度の高い企業である場合は、とりあえずお願いをしてみて損はないだろう。そんなことを思いながら、一日を終えるのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?