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就活ガール#235 下級生のうちから就活をしている理由

これはある日のこと、バイト先のコンビニで後輩の日野原さんと就活について語り合っていた時のことだ。

「先輩、就活について質問があります。」
「どうしたの?」
「たまに面接で、どうしてこんなに早くから就職活動をしているのかって聞かれるんです。これってどういう風に返せばいいのかなと思って。」
「なるほど。たしかに下級生のうちから通年採用に応募したりしていると、そういう質問受けそうだよなぁ。」
「はい。実際は面接だけではなくて、インターン先での雑談とかでも聞かれます。とりあえず将来が不安だからとかって答えてごまかしてるんですが、どういう意図があるのかなと思って。」

「将来が不安っていうのが本音だよな。」
「はい。あとはまぁなんていうか、早く始めない理由がないと思うんですよ。」
「どういうこと?」
「これは賛否あるところかもしれないですけど、就活でいい企業に入ったら一生安泰じゃないですか。仮に入社先の経営が傾いたりしたとしても、ネームバリューがある会社でそれなりの働きをしていれば転職も比較的簡単だって聞きますし。」
「そうだな。新卒一社目が大事っていうのは一般によく言われてるし、俺もそうだと思う。安泰かどうかっていう観点もあるけど、自分の仕事観みたいなのに与える影響が大きそうだし。」

「はい。それで、そういう企業に入ると長期休暇も取れるしお金もたまるので、勉強でも趣味でも恋愛でも何でもやりたいことはだいたいなんでもできる気がするんですよね。だから大学生のうちに遊ぶよりも、まずは就活を頑張っておくというのが合理的だと思っています。」
「なるほどね、そりゃあそうだ。実際、ホワイト企業の会社員って卒論やバイトに追われてる学生よりも暇なんじゃないかと思うくらいの人が結構いるよな。」
「そうですよね。そういう理由で今のうちから就活をやってるだけなので、別に就活が好きだからやってるとか、逆に嫌いだから早く終わらせたいとか、早く働きたいとか、社会の役に立ちたいとか、就活を通して成長したいとか、そういう感情があまりないんですよね。」
「わかる。すごく理解できるぞ。それでも俺の場合はそこまで理解したうえでダラダラすごして3年生まで来てしまったわけだから、実際に行動に移せてるのはすごいと思う。」

「ありがとうございます。とはいえ、なぜ今から就活をしてるのかって聞く企業が求めている回答はこういう本音ベースの話ではないと思うんですよね。」
「たしかになぁ。企業としては優秀でやる気がある学生を囲い込みたくてインターンをしたり通年採用をしてるわけだから、『無能すぎて不安なので今のうちからやってます』とか、『大手企業に入ったら将来楽そうなので頑張ってます』みたいなことは言えないよな。」
「そうなんです。かといって、今の段階から『どうしても御社に入りたい』とかっていうとそれはそれで暑苦しすぎるし、最悪の場合、視野狭窄と思われかねないじゃないですか。それで、どういう感じで建前の答えを言えばいいのかがわからなくて相談したという経緯です。」
「なるほど。」
「先輩はどう思いますか?」

「まず、企業側が面接やインターンを通して探りを入れてきている以上は、大筋の方針としては自分の能力と志望度をアピールすることが必要だと思う。ただ、いずれにしても下級生のうちは伸びしろを見せることが必要だろうな。」
「もう少し詳しく教えてください。」

「まず能力の方なんだけど、これはできるだけ高く見せるに越したことはないと思う。ただ、学生がどれだけ背伸びをしても社会人からすると所詮は学生であって、低レベルの争いにしか見えないんだよ。だから、今の能力が重要じゃないとは言わないけど、今後の伸びしろがあるかどうかが重視される。」
「いわゆるポテンシャルってやつですね。」
「うん。ただ、3年生後期以降のいわゆる普通の時期の就活生と違って、下級生の場合は今と1年後ですら比べられるんだよ。特に長期インターンの場合、企業側からすると、『伸びしろがありそう』という初期の判断が正しかったのか答え合わせをしてから本選考に挑めるだろ。」
「ということは、雰囲気を醸し出してるだけで中身が伴っていないとキツいということですね。だんだんメッキがはがれてくるっていうか。」
「うん、そう思う。だから下級生のうちから見栄を張りすぎるのは逆効果じゃないかな。」

「むしろやや能力を低めに見せておいて、そこから一気に挽回したほうが成長力があるというアピールになりますか?」
「うーん。わざわざ低めに見せるまではしなくていいかもしれないけど、方向性としては概ね正しいと思う。例えば、既に8割くらい達成してることを今後の目標として挙げておいて、実際にインターン中に達成した姿を見せるとかな。」
「あ、すごい。頭いいですね。少なくとも今後頑張ってもできそうにないことは言わない方がいいと思いました。」
「うん。バレる嘘をついたり無理な目標を掲げるとキツいと思う。数十分程度の面接ならごまかせても、今後長く選考やインターンでかかわる企業であればその分だけバレやすくなるし、隠していたことがバレると致命傷になりかねないと思う。」
「そうですね。なんでも正直に言う必要もないですが、少なくとも意図的に隠していたりウソをついていたとは思われないようにしたいです。」

「うん。それから志望動機についてだけど、今から『御社しかいない!』と熱く語っても、もう少しいろんな企業を見てねって優しく諭されてしまうと思う。」
「はい、実際そういう経験をしたことあります。」
「だよな。三年生の秋の説明会ですら、そういう対応で受け流してくる人事は結構いる。とはいえ、『全くよくわからないんですけどとりあえず募集してたので来ました。この業界もなんかいい感じですね。』みたいなノリだと流石に志望度が低いとも思われる。」
「そうそう、そうなんです。バランスが難しいと感じます。」
「だから俺は、業界を志望する理由や就活の軸みたいなのを語るようにしてる。そして、もちろんその企業に合わせた内容をチラつかせる。」
「難しそうです。」
「そうでもないよ。例えば企業理念のところにお客様第一みたいなことが書いてある金融企業だとしたら、『金融に興味があって、中でも特に顧客に寄り添える仕事を探しています』みたいなことを言うんだよ。そうすると、勝手に人事の側で『お、この人はうちの会社に興味持ってくれそうだな』と思い込んでくれる。」
「潜在的に御社に興味を持ちそうな人間ですよってことを匂わせるんですね。」

「うん。これに加えてさっき言った能力面でのアピールもうまくできていると、企業側から今後のイベント等を誘ってきてくれると思う。」
「なんか面倒くさい駆け引きって感じですね。就活と恋愛が似てるって言われるのがわかる気がします。」
「そうなんだよな。就活序盤では企業側に追いかけてもらうことも重要だと思う。もちろん、企業のスペックにもよるけどな。」
「採用数がそこまで多くない、かつ大人気の企業であれば最初から全力で自分をアピールしていったほうが良いってことですね。」
「そうそう。その辺の日系大企業であればそこまでしなくていいと思うけど、あんまり小物感は出し過ぎない方がいい。」
「イメージだけじゃなくて実際問題としても、下級生の段階で特定の企業に入れ込み過ぎてる人を見るとなんだか微妙だなぁと思うことが多いですもんね。」
「うん。俺が今日話したことは所詮は一般論だから、明確な理由があっていきたい業界や企業が絞れてる場合は、全力でアピールしに行ってもいいと思う。ただ、客観的に見て視野が狭くなりすぎてないかよく考えた方がいいと思うし、あまり早い段階からアピールされても企業側としても困ることも多いだろうから、その辺は相手の温度感を見て空気を読む必要があると思うな。」
「そうですね。熱しやすいタイプは冷めやすいとも言いますし、企業からすると最終的に長期的に勤めてくれるかっていうのが最重要なわけですから、その観点でアピールになってるか考えることが必要だと思います。」
「うん。」
「今日もありがとうございました。」

そこまで話したところで会話を終えた。今日は、下級生のうちから就活をしている理由について聞かれた時の回答について考えることができた。どんな場面であっても、就活をしていて企業と接触している以上は、自己PRと志望動機を伝えるのが鉄則だ。しかし、就活の初期段階からあまりにも熱くなりすぎると、企業側に警戒される恐れが高まる。将来の伸びしろを見せつつ、企業の側から興味を持ってもらえるような人材であることを匂わせ、実際に魅力的な人になるというのがよいだろう。そんなことを思いながら、一日を終えるのだった。

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