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就活ガール#241  GDでの役割の決め方

これはある日のこと、ゼミでアリス先輩とグループディスカッションについて話をしていた時のことだ。俺が最近はよくファシリテーターをやっているという話をすると、アリス先輩が食いついてきた。

「なるほどね。それでいつもファシリテーターをやってるんだ。」
「はい。普通にやってたらスペックの人たちに負けると思うので、勝負に出てるって感じですね。ハイリスクハイリターンだとは思うんですけど、周りが強い人達であればあるほど、逆に助けられてなんとなくうまく仕切れる気がします。」
「その通りね。周りがグループディスカッションに慣れていると、ファシリテーターは楽だと思うわ。逆にダメダメな人達を引率させられる時ほどきついものはない。」
「はい。本当にそう思います。」

「それで通過率はどう?」
「悪くないです。全部合格とまではいかないですけど、ほぼほぼグループディスカッションでは落ちなくなってきました。」
「よかったじゃない。でも、実はその理由はファシリテーターをやったからっていうだけではないと思うわよ。」
「もちろんそうです。役職についたからOKみたいな単純な話ではないですよね。でもやっぱりファシリテーターになると議論全体に影響を及ぼしやすいので、間接的には役職が関係してるかなって思います。役割がないとどういうタイミングでどういう風に口をはさんでいいか考えるのがかなり難しいので。」
「たしかに、役割のない人がいきなり仕切り出すと出しゃばってるんじゃないかとか、他人の役割を奪ってないかとか気になってしまうわよね。」
「はい。その役割を持ってる人にも申し訳ないし、自分の評価が落ちないかなっていう気もするんですよね。実際はほとんど関係なくて助け合いの範疇というか、むしろ役割に関係なく議論全体を俯瞰してみてるっていう高評価になりやすいと思うんですけど。」
「そうね。言い方には気を付けた方がいいけど、基本的にはどんな役割であっても互いに助け合うのが基本だわ。役割っていうのはあくまでも主担当であって、独占権を有してるわけではないからね。」
「はい。」

「でも、私が言いたかったのはそういう話じゃないわ。採点は役職を決めるところから始まってるのよ。」
「どういうことですか?」
「どの役職をやるのかも重要だけど、役職への選ばれ方も重要なのよね。」
「うーん。決め方って言ってもだいたいは先着順じゃないですか? 実際、『あまり自信はないんですけど、俺にファシリテーターやらせてもらえませんか。挑戦してみたいんです。』って言うとほぼ全ての場合で拒否されないんですよ。内心では自分がやりたかった人とかFランにファシリテーターをやらせることを不安に思っている人もいるかもしれないですけど、ここで対抗馬として立候補されたことは過去に一度しかないですね。他の役職についても、基本的には先着で決まる気がします。」
「そうよね。で、最初に誰かが言い出すと、他の人たちが慌てて『じゃあタイムキーパーやります』みたいな感じで手を上げて、最後に発表係あたりが余ったところで、『誰もやらないなら私が発表します』みたいに言って役職決めが終わる。」
「はい、そんな感じです。最後まで黙ってた人は役職無しですね。この時点で役職にありつけた人達から見ると、内心ニヤッとしてしまうと思います。」
「フフ、そういう探り合いもグループディスカッションの醍醐味よね。」
「実際、誰かが受かると誰かが落ちると思うんですよね。理論上は全員合格とか全員不合格もあるとは思うんですけど、合格者数があらかじめ決まってる以上、どこかのグループで合格者を多く出すと、別のグループで減らすしかないじゃないですか。でも、複数のグループを一人の選考官が並行してみてるパターンって多くないし、グループを超えての比較は難しいと思います。」
「そうね。そもそも5,6人もいたらだいたいの場合は優劣が付くわ。本当に皆揃って皆いいみたいなグループにあたることは稀よ。」
「はい。」

「で、話を戻すと、さっきの役割決めの流れだけを聞いていても、既に夏厩くんが一歩抜き出てることがわかるのよね。」
一番最初に自ら立候補してるのが印象いいってことですか?」
「そうね、それも一つよ。誰かが言い出したから焦って役職を奪い合ったりとか、誰もやらないなら仕方なくやるかっていう感じの人よりも、自分でやりますと言って立候補した方が積極性がある人だなって思われやすいわよね。」
「なるほど……。」
「しかも、『自信はないけどやってみたい。挑戦したい。』っていう謙虚な姿勢もいいわね。もっというと、『困ったことがあれば助けてもらうこともあるかもしれない』とかって言ってもいいと思うわ。」
「この辺は普通に本音を話してるだけなんですよね。ほとんどの場合は開始前の雑談タイムなどで自分より優秀な人ばかりだなっていうことに気付いてるので、まさに挑戦っていう感じなんですよ。何度やっても慣れないですしね。」
「嘘っぽくないのが余計に選考官に好印象を与えてるのかもしれないわね。言い方が下手だとわざとらしさが残ってしまうから。」
「ちなみに、最初の頃は『ファシリテーターをやったことがないのでやらせてもらえませんか?』っていうのも使ってました。最近は流石に初経験のフリはできなくなってきたので言ってませんけど。」
「うん。それもいいと思うわ。」

「当たり前ですけど、これって他の役職が決まった後でも使えますよね。」
「そうね。最初に何かの役職をやるって言いだせるのは一人だけ。それを奪い合っても不毛だわ。だけど、2番目以降に立候補する人も『じゃあ私はこれやります』みたいな感じだと味気なさすぎるわよね。」
「別にそれで減点とかはなさそうですけど、できればプラス点を狙いたいですもんね。」
「そうそう。『あまりやったことがない役職なのでやってみたい』っていうのは本当に使える言い回しだと思うわ。」
「逆に、慣れてるからやるっていうのはどうですか? あるいはタイピングが早いから書記をやるみたいな感じで得意を活かすっていう方法です。」
「それもいいわね。ただ、あまり慢心してる感じは出さない方がいいわ。グループディスカッションはとにかく低姿勢で取り組むのが重要なのよ。」
「たしかに、高圧的な人は鼻につきますもんね。」

「ええ。本人にそのつもりがなくてもね。慣れてない人とかもいるからやむを得ず自分がリードしていたら暴走してると思われたりもする。その辺の匙加減がとにかく難しいのよ。」
「はい。体感的にもすごくわかります。なんていうか、他人の領域にどこまで口を出していいのか分からないんですよね。」
「例えば、書記の人にメモってほしいことを指示してもよいのかとか、タイムキーパーが議論に夢中になって忘れちゃってる場合とか?」
「そうです。あとはファシリテーターがうまく仕切れていない場合とかですね。余り口うるさくすると越権行為じゃないかっていう気もして悩みます。」
「基本的には言っていいと思うわよ。できれば1対1でこっそり指摘してあげるのがいいんだけど、オンラインだとそれが難しいからね。まぁ裏でチャットするというのもありだけど、それだと選考官には見えないわ。リアルで行う場合だと第三者視点で俯瞰してる選考官には気づいてもらえたんだけどね。」
「最後に感想を言い合う場などでチャットのことを全体に公開してくれれば俺の印象もよくなるんですけどね。その辺はどこまで意識して点数を取りに行くか次第って感じでしょうか。」
「そうね。少しでも点数を稼がないとヤバイってときはリスクを負って全員の前で指摘するのがよくて、もし後で発覚して加点されればラッキーくらいの感じであればこっそりチャットするのがいいと思うわ。基本的に、褒めるときは皆の前で褒めて、叱るときは個別に叱るっていうのがマネジメントの基本なのよ。」
「なるほど。わかりました。ありがとうございます。」

ここまで話したところで会話を終えた。今日は、グループディスカッションにおける役割の決め方について話を聞くことができた。何事もそうであるが、結果ばかりにして過程に注目することがおろそかになりがちである。役割分担においては、誰が何をやるかという結果も重要だけれど、それと同等以上に、どういう流れでその役職についたのかも重要だろう。どのみち何らかの役割を担うのであれば、前向きな理由で立候補して就任したと思われた方が得をすることが多い。
役割を決めた後にどういう風に役割分担を超えた立ち振る舞いをするのかという点においても同じことが言えると思うけれど、些細なことでも印象はかわるんだということを改めて肝に銘じ、一日を終えるのだった。

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