就活ガール#306 インターンでの自己紹介
これはある日のこと、バイト先のコンビニで店長の薫子さんと雑談をしていた時のことだ。会社員経験を経てフランチャイズでコンビニオーナーになった薫子さんには、社会人としての立ち回り方などについて聞くことが多い。今日もそんな感じの話の流れでの一幕だ。
「すみません。中長期のインターンについて相談いいですか?」
「どうしたの?」
「インターンに限らずグループディスカッションとかもそうなんですけど、いわゆるアイスブレイクとか自己紹介の時に何を話せばいいのか分からなくって。」
「な、なるほど……。」
「え、俺なにか変なこと言ってますか?」
「いえ、変ではないんだけど、正直その辺って感覚というか、なんとなくで乗り切るものだと思ってたから、改めて言われるとちょっと驚いてしまったわ。そんなに難しく考えるようなことかしら?」
「うーん。俺の基礎的なコミュニケーション能力が欠落しているってことですかね。」
「そこまでハッキリは言ってないわ。それに、言われてみればある程度かしこまった場で自己紹介をするのって今までにほとんど経験がないだろうから、悩むのも当然よね。」
「あ、気を遣わせてしまってすみません。フォローありがとうございます。たしかに大学の友人とかってなんとなくいつの間にか仲良くなってたことが多くて、改めて自己紹介って言われると困るんですよね。」
「そうねぇ。ふざけすぎるのも良くないし、かといって面接ではないからあまり堅苦しくてもよくないわよね。」
「はい。」
「じゃあ具体的にどうやって自己紹介をするかだけど、まず必ず必要なのは、意気込みの表明よ。」
「やっぱりそういうの要りますよね。」
「ええ。ちょっと恥ずかしいくらいのものが良いわ。つまり、面接で言うようなことね。このインターンで何を学びたいとか、どういう想いがあって参加したいとか、あるいは就活の軸みたいなのを話してもいいと思うわ。」
「これもあまり堅くなりすぎない方がいいですよね。面接の回答みたいにするとアイスブレイクにならない気がします。」
「もちろんよ。その回答で選考をするのではなくて、これから一緒にワークをしていく人たちに対して自分を知ってもらうっていう目的だからね。」
「堅いテーマを緩く語るってのが難しいんですよねぇ。」
「緩く語るっていうか、爽やかにすればいいだけだと思うけど、そんなに難しいことかしら。」
「俺のコミュ力では……。」
「まぁいいわ。あとは、雑談のネタになりそうなくだらないこともいくつかねじ込んだ方がいいわね。これも面接との違いね。」
「雑談のネタってどういうことですか?」
「出身地とか趣味とか。好きな芸能人とかでもいいわね。」
「ああなるほど。たしかにその辺の話は無難ですね。趣味はゲームですけど……。」
「最近はゲームが趣味でもそこまで印象悪くないからいいんじゃないかしら。とはいえスマートフォンのアプリでガチャを中心としたゲームとかはあまり印象良くない気はするけど。」
「俺がやってるのは専用のゲーム機でやるやつなので、よかったです。」
「他にも、血液型とか学生時代の部活動とか、あるいは自分のニックネームとかも定番ね。」
「その辺は面接では絶対に言わないですけど、インターンやグループディスカッションのアイスブレイクとしてはよさそうですね。特にニックネームは良い感じに仲良くなれそうな気がします。」
「ええ。ポイントは、誰でも口を出しやすい話題がよいってことね。難しい話題や一部の人にしか通じないような話題だと会話に入って来られる人が限られてしまうから、そういうのは避けた方がいいわ。」
「その辺ってバランスが難しいですよね。」
「そうねぇ。たしかに、逆に当たり障りのないことを言いすぎても盛り上がらないってのもあるわ。コツとしては、カテゴリとしては無難なものを選びつつ、具体的な商品名を出した方がいいわね。例えば音楽が好きっていうよりも、〇〇というアーティストが好きとかね。」
「マニアックな趣味の場合でもですか?」
「誰でも知ってそうなものと、マニアックなものと両方言えればベストだけど、そうでないならマニアックなものだけでもいいわよ。抽象的すぎると人間味が出てこないから。」
「なるほど……。言われてみれば、趣味は読書ですとか映画鑑賞ですとかいう人たまにいて、話繋げにくいなと感じることはありました。」
「でしょう。仮に知らない作家や監督の名前をあげられたとしても、それはそれで誰も知らないということが話のネタになるしね。」
「はい。」
「自己紹介といえば、プレゼンをさせられる場合もありますよね。スライド1枚から2枚くらいにまとめて、1分から3分くらいで話すことがある気がします。」
「あるある。結構いろんな企業で行われてるから、一度スライドを作っておくと楽よ。企業によってフォーマットが決まってることもあるけど、たいていの場合は経歴と趣味と意気込みと写真って感じでしょう?」
「俺、あまり写真が好きじゃないので持ってなくて、探すのに苦労しました。証明写真じゃダメですよね。」
「たしかに写真を数枚貼り付けることが多いわね。エントリーシートの『あなたらしい写真』に似てるかもしれないわ。そう考えると、証明写真は微妙でしょうね。」
「ああ、エントリーシートのその質問、苦手なんですよねぇ。そもそも俺らしいって何なのかよくわかりませんし。」
「写真撮影や編集のスキルを問うても意味ないのにあんな質問をいつまでもしてる企業はいかがなものかとは私も思うわ。まぁガクチカで嘘をついてないかの証明っていうのが主な目的じゃないかしら。だから、深く考えなくていいのよ。」
「なるほど。じゃあガクチカと関連づいてる写真が良さそうですね。」
「特に主張したいことがなければそうした方がいいと思うわ。力を入れた時と自分らしい時って、まぁ概ね一致してることが多いでしょうから。」
「ってことは、話を戻して、自己紹介プレゼンの時も同じですよね?」
「そうね。基本的には話の内容と合致した写真の方がいいと思うわ。まぁ当然よね。突然関係のない写真を貼られても見ている側は混乱するだけだもの。」
「はい。」
「ただ、選考の場ではないんだから、別に自分の写真じゃなくても大丈夫よ。例えば出身地の風景の写真とか、趣味で使う自慢の道具の写真とか。家族がいる人は家族写真を載せる人も多いわね。」
「えっ、親との写真を見せるっていうことですか?」
「違う違う。自分の配偶者や子供のことよ。まぁ別に親でもいいんだけど、そういう自己紹介をする人はあまり見たことないわね。」
「驚きました。就活生で自分の子供がいる人は少なそうですね。」
「そうね。まぁこの手の自己紹介は会社員をやっていれば永遠にやることになるから、参考までに話しただけよ。」
「自己紹介プレゼンは会社員にはつきものなんですね……。」
「ええ。だから今のうちから慣れておくと楽だと思うわ。」
「わかりました。」
「他に自己紹介関係で気になることはある?」
「大学名を名乗るかです。」
「それはどうでもいいわね。」
「かなり悩んでる人が多いと思いますけど……。」
「正直、大学名でマウントを取ったり、逆に取られた気になって委縮したりって、社会人から見てると相当しょうもない話なのよ。別に名乗りたければ名乗ればいいし、そうじゃなければ隠せばいいんじゃないかしら。」
「は、はい。」
「面接の場合は言われなくても面接官は履歴書を見て学歴は知ってるし、グループディスカッションやインターンの場合は他の人と仲良くなるために必要そうなら言えばいいって感じじゃないかしら。」
「例えば他の人が大学の話や出身地の話をしていて、自分と共通点があるなら話すっていう感じですかね。」
「ええ、そんな感じで十分よ。」
「わかりました。今日もありがとうございました。」
薫子さんに礼を言って話を終えた。今日はインターンシップやグループディスカッションでのアイスブレイクについて話を聞くことができた。あまり深く考えずに自己紹介ができる人も多いと思うけれど、そうではない人も世の中には少なくないはずだ。特に、インターンシップにおいては、最初のアイサツで先輩社員に良い印象を植え付けることができるといろいろと業務を教えてもらうこともしやすくなると思うし、一緒にワークを進めるメンバーの中でも存在感を発揮することができるだろう。
それから、資料を用いた自己紹介プレゼンについては、入社後も末永く必要とされるスキルであることがわかった。あまり自分のことを話すのが得意でない人も、早いうちに慣れておくと得だと思う。そんなことを思いながら、一日を終えるのだった。
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