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就活ガール#234  実は気を付けた方がいい性格検査

これはある日のこと、学食で同級生の美春と食事をしていた時のことだ。白雪学園では珍しく3年生のうちから就活をしている仲間であり、日常的に就活の進捗を共有できるのはとてもありがたい。

「最近どう?」
「そうねぇ。マイページを大量に作って、エントリーシートを出して、適性検査を受けまくってるって感じかしら。」
「ああ、適性検査って大変だよな。」
「そうね。テストセンターだとまだいいんだけど、いちいち似たような問題を解かされるのは面倒だわ。」
「性格検査とか、何度やっても同じ全く問題だしなぁ。」
「おとっぴって、回答を企業によって変えてる?」
「覚えてるわけじゃないから回答するたびに微妙に違うってことはあると思うけど、基本的には素直に答えてるからだいたい同じ内容で提出してるな。企業によって変えた方がいいのか?」
「うーん。そこまでは言い切れないけど、やっぱり企業とか職種によって求めてる人物像は違うと思うのよね。」
「営業だと明るくて人気者がいいとか?」
「意味としてはそんな感じだけど、具体例は微妙ね。営業って別に人気者じゃなくてもよくて、どちらかというとむしろ聞き上手な方が好まれたりするらしいから。」
「あ、なるほどな。体育会系のお兄さんにガツガツ来られてもびっくりしてしまうことあるもんな。」
「ええ。もちろん何を営業するかとかにもよると思うけど、例えば購入側に大人しそうな人が多い商品の場合、売る側に求められるのは熱意よりも知的差とかじゃないかしら。」

「そう考えると、同じ営業職でも結構いろんな性格の人に活躍の場があるんだな。」
「そうね。同じ会社でも社内に法人営業と個人営業が混在してたりとか、電話メインとか訪問メインとか、いろいろ事情が異なることもあるんじゃないかしら。」
「ってことは、性格検査でどういう性格を答えるかってあまり関係ないのかな?」
「いいえ、そうじゃないと思う。」
「どうしてだ?」
「その企業の社風とかも関係あるからよ。そして何より、多くの企業、多くの職種で敬遠されがちな性格っていうのは存在するわ。」
「ああ、なるほど……。ブラック企業に合う人材がいないっていうのと同じで、ブラック人材に合う企業はないっていうことだな。」
「そうそう。」

「具体的にはどういう性格だと落とされやすいと思う?」
「まずはストレス耐性。」
「ああ、それはダメだな。ストレス耐性がない人が向いている職業っていうのは流石にない気がする。」
「そうよね。具体的な設問で言うと、『落ち込むことがあってもすぐに忘れられる』みたいなやつかしら。必ずしも『はい』にする必要はないけど、せめて『いいえ』は選ばないようにしたいわね。」
「もちろん本心で『はい』の人は『はい』でいいと思うけど、そうじゃない人は『どちらかといえばはい』くらいにしておくのが無難かな。」
「私はそう思うわ。落ち込むことがあるっていうこと自体は仕方ないし、むしろ全くないというほうが嘘っぽくなる。問題は立ち直りの速さなのよ。」
「うん。嫌なことをいつまでも引きずられると周りも困るよな。トラブルを忘れずにしっかり事後検証等をして再発を防ぐっていうのは大事だけど、それって落ち込んだ気分からすぐに回復するタイプの人でも普通にできるし。」
「そうそう。とにかく寝たら忘れる、食べたら忘れる、週末遊んだら忘れるみたいなタイプが有利だと思うのよね。」
「それは面接でも使えそうだな。」
「そうね。エントリーシートや面接でもストレスをどういう風に発散するかという質問はそれなりにあるわ。こういう時はストレスが全くないというと甘えた生活をしていたのかと思われるし、逆に長期間落ち込んだというとそれはもうストレスというよりも挫折経験の質問への答えになってしまうわよね。」
「うん。だから、『週末友達と遊んだらリフレッシュできます。』みたいな回答が望まれるわけだな。」
「うん。」

「他には落とされやすい性格ってあるかな?」
感情のコントロールができていないパターンもヤバいでしょうね。」
「そりゃあそうだ。情緒不安定な人が向いている職業ってのも全く思いつかないぞ。」
「そうよね。具体的な質問でいうと、『すぐにカッとなってしまうことがある』とかかしら。」
「これもさっきと同じで、無理して『全くない』とかを選ぶと嘘っぽくなる人は、『あまりない』とか『どちらかといえばあてはまらない』くらいを選んでおくのが無難かな。」
「ええ。少なくとも『どちらかといえばそうだ』とか『あてはまる』を選ぶと危険じゃないかしら。」

「『どちらもともいえない』って選択肢はどうだ?」
「そもそもだけど、性格診断では中央寄りの選択は良い結果があまり出にくいとは言われてるわね。とはいえ両サイドの極端な答えが多すぎるとムラのある人材と思われがちだから、『どちらかといえば~』系の回答を多めにして、たまに中央とか両サイドを選ぶくらいがちょうどいいっていう話は聞いたことがあるわ。」
「たしかにある程度バランスの取れた人が素直に回答するとそんな感じの答えになりそうだな。」
「そうよね。まぁこれは伝聞で情報のソースも曖昧だから、話半分くらいに聞き流して欲しいけど。」

「おう、わかった。でも、性格検査って嘘がバレるともいうよな?」
「そういう言説もあるけど、実際はほとんどバレないはずよ。製作者側の企業がうまく商品を宣伝するために言ってるだけじゃないかしら。」
「そうなんだ?」
「『嘘をついたことは一度もない』みたいな質問に引っかからなければ十分よ。」
「ああ、そういうのは大丈夫だ。『一度もない』とか『絶対にない』みたいな強すぎる否定文は罠って話だよな?」
「そうそう。本当に一度も嘘をついたことがない人なんていないと思うし、万が一いたとしても企業が採用したい人材ではないでしょうね。」
「そりゃあそうだ。逆に性格的に問題がありそうだもんな。」

「回答信頼度の判定にはこんな感じの罠質問のほかに、回答の矛盾っていうのも考慮されると言われてるわ。でも、普通に直感で選んでいたら矛盾する回答をしてしまうことって誰でもあるでしょう?」
「たしかに、どちらかきわどい質問が結構あって、似たような質問でも回答するたびに違う答えになってしまいそうで怖いんだよな。」
「そういうのは心配しすぎなくて大丈夫なのよ。人間ってそういう物だし、問題文の微妙な書き方でも印象が全然違って、別の回答を選んでしまうこともあるから。」
「どういうことだ?」
「例えば、『なんでも計画してから進めるのが好きだ』と、『あらかじめ念入りに準備をする方だ』は似てるようで違うでしょう?」
「好きなのか、そういう特徴なのかって話?」
「そうそう。こういうのは似たようなことをいろんな聞き方で試しているだけで、回答信頼度の判定にはほぼ影響しないと思っていいのよ。」
「なるほど……。そう考えると、明らかな罠質問だけを警戒してればいいんだな。」
「ええ、私はそう思うわね。あと、これはウェブテストの種類にはよるんだけど、解答信頼度って5段階評価くらいになってることが多いのよ。つまり、必ずしも完璧に罠を回避して5を取らなくても、4くらいならまぁ許されるっていうことが結構ある。」
「なるほど。2とか1とかを取らなければ大丈夫ってことか。」

「ええ、そうね。それに、この診断を作ってる側の企業の立場としても、信頼度が低いという結果ばかり出すわけにはいかないでしょう?」
「あ、そうか。その発想はなかった。たしかに回答信頼度が低いという結果を出し過ぎると、自分たちの作ってる性格診断システムが嘘発券機以上の役割を果たしていないって自分で証明してるようなものだもんな。」
「そうそう。1人5000円近くの受験料を取ってるのは性格を調べるためであって、嘘つきをあぶり出すためではないのよ。」
「なるほどなぁ。そう考えると、ビジネス戦略としても嘘つきという判定結果は一定割合で紛れ込ませる必要はあるけど、多すぎても少なすぎてもダメって感じなのか。」
「うん。数パーセントか、多くても10パーセント程度でしょうね。」
「わかった。あまり矛盾とかに敏感にならずに、少し自分を盛りつつ答えることにしてみるよ。」
「ええ、お互い頑張りましょう。」

そこまで話したところで、解散となった。今日は性格診断での罠質問や嘘判定について考えることができた。性格診断は多くの企業が重視しているし、企業によっては性格診断の結果だけで不合格が確定するところもあるらしい。どちらを回答しても良い面と悪い面がある質問は深く気にしなくてもいいかもしれないけれど、少なくとも明らかに正解が決まっている質問では間違えない方がいいだろう。そんなことを思いながら、一日を超えるのだった。

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