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世の中には、悪なんて存在しません。全部が正義と言ってもいいくらいで。


こんにちは、
いきなり寒くなった外の世界は
なんだかいつもよりも冷たい気がして

大急ぎで飲んだ味噌汁は
いつもより温かいような

最近はそんな朝を迎えています。


今回、ご紹介するのは
伊坂幸太郎の「火星に住むつもりかい?」です

BOOK OFFで
多くの本が背表紙を向けている中、
正面を向いていたこの本

「連れてって」
そんな声は聞こえませんでしたが
連れてかえることにしました


タイトル : 火星に住むつもりかい?
著者 : 伊坂 幸太郎 (いさか こうたろう)
出版社 : 光文社
価格 : 定価780円 (+税)
ページ数 : 501ページ


舞台は「安全地区」に指定された仙台市

そこでは「平和警察」と呼ばれる
警察組織が取り締まっている

「平和警察」は
市民からの密告や街中に取り付けられた
防犯カメラを頼りに
「危険人物」を炙り出していく

「危険人物」を発見し
取り締まることで安全を守るのが仕事だ

一見、正義の味方のように見える彼らだが
そのやり方は不条理極まりないものだった

一度「危険人物」と見なされれば最後
自分が「危険人物」であると認めるまで
聞くに耐えない拷問が続く

事実無根であっても
拷問に耐えかねた者たちは
自分が「危険人物」であると認めざるを得ない

そして
公衆の面前で公開処刑されるのだ

こんな不条理なやり方に
反旗を翻す者が1人いた

全身黒ずくめで
謎の武器を使う「正義の味方」

無実の罪で捕まる「危険人物」を
救い出していく謎の人物

彼は「危険人物」を救うためなら何でもする
そう、殺人さえも

「平和警察」vs「正義の味方」

何が正しくて
何が間違いなんだろうか

互いの正義がぶつかる
ジャンルを超えた物語りです


「仮に九十九パーセントの精度だったとしても、十万人を捜査すれば、千人です。十万のうち千人は、間違ってテロリストと判定されてしまうんですよ。仮に、国内全部で適用すると、成人一億人のうち、百万人です。」(27-28ページ)

「世の中には、悪なんて存在しません。全部が正義と言ってもいいくらいで。」(166ページ)

(すぐに手を出す少年に暴力を止めるよう諭している場面で)
「君よりもっと強い相手が出てきた時に問題が解決できないからだよ。」(232ページ)

「『君が、いいことだと思ってやっていることは、全部無駄だ』と無神経に言えちゃう人は、自分の面倒臭さを正当化する理由を考えたいだけに思えちゃうんですよ。」(272-273ページ)

「人はいつか死ぬ。それは穏やかなものとは限らず、苦しみの中で消えていかなくてはならないことも多い。」(443ページ)


右にも左にも行けません
前にも後ろにも行けません
そんな感覚でした

私は世間知らずなので
警察=絶対正義(安全を守る最終組織)という印象があって

家庭で解決できなければ警察
学校で解決できなければ警察
職場で解決できなければ警察

とにかく最後は警察行けば守ってもらえるなんて考えの人間なので

その警察が「敵」となった
この物語を読んでいて
右も左も前も後ろも危険が迫ってる
そんな閉塞感を味わいました

無実であっても
それを証明する手段を奪われている

こんな設定が私をガチガチに固めたのかもしれません

事実=真実ではなく

都合の良い真実を作り上げて
それを力で事実にしていく

そんな世界でした

こわい
素直にそう思ったのだけれど

あれ

途中から思った
これ「ネットの世界に似ている」って

事実に関係なく
あることないこと書き込んで
それを真実にしちゃう

そして
それを公衆の面前に晒し公開処刑

「平和警察」も「公開処刑を楽しむ公衆」も実在してるんじゃん

なんだかそう思った

こわいと思っていた物語の世界を
もっと近くに感じた

さらにこわい

でも
伊坂さんは心地いい答えをくれてる気がする

誰もが自分を白だと思い込み
黒をたたく
みんなが自分を白だと思ってるから
誰を否定することもできない

だったらグレーでいいじゃない
白も黒も否定しないグレーの立場

何が正しくて何が正しくないか
そんな問いかけの答えはこうなんじゃないかと考えました


いろんな正義に
ぐちゃぐちゃにされている人に
読んで欲しいなと
星に願って今日はこの辺で失礼します

最後まで読んでくれてとても嬉しいです
ありがとうございました


ばいばい。
















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