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許してはいないわよ。受け入れただけ

大学4年の夏休み
もはや土日という概念はないのですが

いや
コロナでオンライン授業になってから
曜日という概念は
どこかに吹っ飛びましたが

先日
大学から後期の授業案内がきまして

金曜日から始まるということに
妙な違和感を感じました

やっぱり
始まりは月曜日であってほしいと
そう思うのです

ついさっきまで
曜日なんてものを忘れていたのに

人間は
都合のいい生き物ですね


今回ご紹介するのは
小野寺史宜さんの「近いはずの人」です

表紙にうつる
なんだか冴えない男の目が
とても寂しそうで

優しくカゴに入れました



タイトル : 近いはずの人
著者 : 小野寺史宜 (おのでら ふみのり)
出版社 : 講談社
ページ数 : 322ページ
価格 : 定価700円(+税)



突然の事故で妻を亡くし
取り残された夫・俊英の物語

残された妻の携帯電話

しかし
その携帯電話にはロックがかかっており

俊英は「0000」から
ロックを解除しようと試みる

ついに
ロックが解け俊英が目にしたのは

謎の男「8」とのメール

しかも
事故が起こった当日のもの

友達と旅行に行くと言った妻と
「8」との親しげなやりとり

妻の足取りを追い
「8」にたどり着いた俊英の

悲しみや怒りには当てはまらない
複雑な感情を描いた小説です



「身近にいた人が亡くなった瞬間を感じられなかったことで、残された者の痛みは増す。何も知らずにその瞬間をのうのうと生きていた自分の姿を想像せずにはいられなくなる。」(28ページ)

「人は自ら変わろうとしても変われない。だが環境が変わればあっけなく変わってしまう。」(41ページ)

「もしかすると、過去は過去、歴史は歴史、と割り切らせるために、暦や年号といったものは存在するのかもしれない。」(135ページ)

「許してはいないわよ。受け入れただけ」(243ページ)



起こった出来事
俊英の心情が
ぶつ切りの文章で淡々と語られていく

それが
妻を失い無機質なものとなった
俊英の生活とマッチしていて

とても暗く
重たい雰囲気を醸し出す

読んでいて
ずっしり重いものを抱えている感覚になりました

とにかくやるせない

聞くことができない
責めることもできない
許すこともできない

だって
死んでしまっているから

だからこそ
「許してはいないわよ。受け入れただけ」が
身に染みた

俊英は
こうやって消化していくのかと

わからない
ということすら受け入れる

受け入れる

辛いけど
自分を守る重要な手段だと思いました

でも
ほんとに
ほんとうに
最後までやるせない小説です



今の自分が受け入れられない人や
すんごい後悔を抱えている人が読めば

スプーンいっぱい分
楽になれると思います



最後まで読んでくれて
本当にありがとうございます


ばいばい。








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